サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

気候変動適応のためには現場科学を大切に。

2015年02月28日 | 気候変動適応

 気候変動の適応策は、気候変動の地域への影響の将来予測を行い、それに対応する施策課題を抽出し、追加的に実施すべく施策を具体化するという、トップダウン(将来影響の予測科学アプローチ)の流れで検討される。

 

 このアプローチは、将来予測という科学の成果を基にする。地域の外にいる研究者が国レベルの研究の成果として、提供する情報に依存する方法である。気候変動の将来予測は、地球全体のシミュレーションを行い、その空間精度を細かくする(ダウンスケーリング)という手順で行う。将来予測を地域独自で行うことは困難である。

 

 一方、地域では、地域の外にいる研究者では把握できない情報がある。気候変動が地域にどのような影響を与えているかという現場情報である。この情報は地域住民等において知覚されているが、知覚情報の客観的データ化や体系化はまだまだ、不十分である。地域の外にいる研究者は、この現場情報を持っていない。

 

 この現場情報が科学的に整備されれば、現在影響を出発点にして、地域住民が気候変動のことを学習し、適応策を検討するというボトムアップ(現在影響の現場科学アプローチ)が可能となる。

 

 このトップダウンとボトムアップの検討は両方が必要である。この際、両方を平行して行い、相互作用を持たせていこうというのではなく、手順を決めた方が効率的である。例えば、(1)トップダウン情報をもとに将来影響の深刻さを共有する、(2)気候変動の深刻さの共有を基盤として、ボトムアップ情報の収集を図る、(3)ボトムアップ情報を整理したうえで、特に重要な側面を抽出し、トップダウンの情報作成を依頼する、(4)地域要望に応じて作成されたトップダウン情報をもとに、係る課題についての適応策の実施状況を踏まえて、追加的に実施すべき適応策を具体的に検討する、という手順が考えられる。

 

 このように考えると、今日の気候変動の影響評価と適応策の検討は、(1)と(2)がばらばらと実施されている段階である。今後、重要なことは、「(3)を見据えて、(2)を体系的に実施する」ことである。そのうえで、(4)の本格的な実施が可能となる。

 

 この際、(2)で整備するボトムアップ情報は、行政内部で収集した資料や統計的に把握できるデータだけでは不十分である。地域住民が知覚している情報の方が科学的根拠にはかけるが、より広範囲であり、より緻密である。

 

 気候変動のボトムアップ情報(とりわけ住民が持つ情報)の整備を行う現場科学は、予測科学と比較して、あまりに地味だが、適応策の検討につなげる科学としてはそれに劣らず重要である。

 

 

 

 

 

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