サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境情報戦略の策定

2009年04月06日 | 環境と情報
写真:チューリップ満開


●情報爆発と情報の質の低下
 
 インターネットの普及は、情報の受発信を容易にし、情報の流通量を比較的に増大させた。

 総務省の「情報流通センサス」では、あらゆるメディアの情報量をワードの単位で表現している。2005年度の情報流通センサス調査結果では、10 年前(1995年度)と比較し、原発信情報量は27 倍、発信情報量は21 倍、選択可能情報量は410 倍、消費可能情報量は15 倍、消費情報量は13 倍に拡大しているとしている。まさに「情報爆発」である。

 しかし、量と質は比例せず、量の増大は一方で質の悪い情報の増大を招いてきた。情報の質の定義にはいろいろあるが、例えば、情報の属性(5W1H)がはっきりしていることが大事であろう。
 ・著者・出典・出所が明確であること
 ・情報の前提条件等が確認できること
 ・最新の情報であること(情報の作成時点が明確であること)
 ・情報の記載にミスがないこと(ミスがないことが確認されていること)・・・


●情報の質の保証

 情報の質を一般利用者がいちいち確認することは困難であるため、情報の質に対する保証が必要となる。この場合の保証は、自己保証、第三者認証、情報開示等である。
 
 自己保証をされた情報とは、情報の発信主体の自己基準に基づきその基準に該当すると宣言されるもので、発信主体への信頼が前提となる。

 第三者認証は、発信者(第一者)と受信者(第二者)以外の第三者が一定の基準に該当すると保証するもので、自己保証より信頼性が高い。ただし、第三者機関への信頼性の問題は残るし、第三者の認証を得る手続きが面倒である。

 情報開示は、情報の属性等を開示するもので、その信頼性の判断は受信者に任されるが、膨大な属性情報の確認は実際、困難である。

 高度情報化社会といわれて久しいが、量的爆発という意味での情報化は進んだが、情報の質の確保という観点では、「情報困難化時代」である。高度情報化社会の実現は、未だ途上段階にあるといえよう。


●環境情報の流通支援

 さて、環境情報について、情報の信頼性と円滑な流通の状況を確認してみよう。

 環境情報は、研究等のための一次情報、一般国民等の関心・知識の向上のための情報、環境に配慮した消費や行動選択・投資等に必要される情報など、様々である。このうち、環境配慮製品・サービスの選択に資する情報に焦点を当ててみる。

 環境配慮製品・サービス等に係る情報は1990年代から着実に整備されたきた。例えば、エコマーク(第三者認証)、グリーン購入ネットワークによるガイドライン(評価項目の共有)、環境技術実証(環境対策装置の性能の試験とそれに基づく信頼できる情報の作成)等は、信頼できる環境情報の流通と活用を促す。

 今年度から環境省がスタートする「エコテスト」は、いわゆる「エコ偽装」により消費者が騙されないように、一般向け環境配慮商品の性能試験を行うというものである。

 昨年度から検討されている「見える化」も、環境配慮商品の地球温暖化への影響(効果)を、消費者向けにわかりやすく表示していくものである。

 地球温暖化防止のための国民運動の一環として製作された省エネ家電製品等への買換え効果の診断システム(しんきゅうさん)も、環境情報へのアクセシビリティや活用を円滑化するものである。

 環境製品等の環境影響に関する情報は、物のライフサイクル(製造から流通、使用、廃棄まで)全体で捉える必要があるため、そもそも見えにくい・わかりにくいものである。比較評価も、比較条件を揃えるなど、専門性を有する。

 まだまだ時間はかかりそうだが、携帯電話やICチップなどを利用し、リアルタイムでオンサイトの情報提供も可能となっており、環境情報に基づく商品・サービス選択はますます浸透していくだろう。


●環境情報の流通で足りないもの

 環境情報の利用場面(利用目的)をみると、購入段階の選択支援、使用段階の行動誘導に係る情報提供(システム)は整備されてきている。しかし、維持・修理段階、廃棄段階の選択肢に対する情報の整備・提供が不十分であるだろう。グリーン購入のみならず、使い方や廃棄等のグリーン化を促す情報整備が必要である。

 例えば、物が壊れたとき、修理した場合と廃棄して買い換えた場合、どちらが環境負荷が少ないのか。家電製品やパソコンの場合のデータはあるが、衣料や家具等ではどうなのか。また、ごみの減量化や分別の徹底は、どれだけ廃棄物問題や資源・エネルギー問題に貢献するのか。今日の廃棄物処理は無駄が多いように見えるが、どうなのか。そもそも、廃棄したゴミはどのように処理・処分されているのか。一般生活者にはわからないことが多い。

 また、かねてから主張しているところであるが、環境配慮の事前情報はあっても事後情報の共有がなされていない。環境配慮製品の性能データではあっても、実際に使ってみて、どのように性能が発揮され、どのように環境改善効果があったのか。

 環境施策の事後評価についてもそうだ。各地域で多彩な施策が導入されているが、各地域の施策の実施内容と効果を、地域条件の違いを加味して分析する作業は大変だ。事後評価情報を収集・共有する仕組みが必要である。


●環境情報戦略の策定

 平成21年3月23日、中央環境審議会総合政策部会(第49回)で、環境情報専門委員会で2年間にわたり検討されてきた環境情報戦略(案)が報告された。

 環境情報の多くは、マスメディアやインターネットで自由にやりとりされている。これに対して、行政が関与できる範囲は一部である。しかし、その一部であるとしても、信頼できる環境情報の流通において、行政関与は不可欠である。

 また、環境情報戦略では、省庁横断的に環境情報を整理し、利用しやすさを高めていく方策を示している。大きな進展である。

 私は、第三次環境基本計画において、環境情報戦略の策定が記述されたとき、基本計画の委託先であった。そして、環境情報戦略の策定を支援する調査を、2年間受注させていただいた。今後は、「環境情報学」という体系と実践の知見の整理ができないだろうかと、ひそかに大それたことを考えている。


参考:中央環境審議会総合政策部会(第49回)議事次第・配付資料
     http://www.env.go.jp/council/02policy/y020-49b.html

   




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