地域における適応策の実施事例は、まだ少ない。海外のWEBサイトをみると、とても体系的に緻密に適応策が検討されているように見えるが、見せ方が上手いだけで、実態はそうでもない場合も多いらしい。国内では、研究や計画段階のものが動き出しているが、実施成果をあげているものや従来の施策にない工夫がみられるものは少ない。
とはいっても、事例がないわけではない。まったくの私見から、国内の事例リストを作ってみた。もちろん、農業分野の事例は枚挙に暇がないが、その中で他事例にない注目ポイントがあるものに限定している。全国各地で実施されているような事例は、それらの評価を行い、実態として推奨できるものを抽出してみたい。
また、4に示す「気候変動適応策と明示していないが、感受性改善や長期的対応等の観点で注目される適応策」は、まだまだ他にあるはずである。さらに検討していきたい。
【日本国内における適応策に先進事例】
1.地域全体で気候変動の影響評価や適応策の検討に取り組んでいる事例
1.1 『長野県環境エネルギー戦略~第三次長野県地球温暖化防止県民計画~』(2013)における、適応策の位置づけ
1.2 「ストップ温暖化・埼玉ナビゲーション2050」に適応策を盛り込み、温暖化条例に適応策を明示(2008)。現在、温暖化計画の改定を検討中。
1.3 九州地方環境事務所による気候変動適応策の研修会等、熊本県、鹿児島県、長崎県でのワーキンググループ開催
*その他、東京都や三重県での関連調査委託、京都府・滋賀県・長崎県等での温暖化実行計画での適応策の位置づけ等。
2.気候変動の地域への影響や適応策検討への市民参加や学習に取り組んでいる事例
2.1 長野県環境保全研究所による市民参加型モニタリング
2.2 法政大学・長野県環境保全研究所の連携によるリンゴ農家等のステークホルダー調査等
2.3 高知工科大学による香川県での渇水に係る気候変動の影響予測と市民検討会
2.4 長野県飯田市での気候変動影響の地元学と公民館での気候変動学習の立ち上げ検討
3.気候変動の影響分野毎の適応策の検討・実施事例
3.1 (自然生態系分野)白神山地あるいは筑波山でのブナ林に係る地域協議会
3.2 (水産業分野)長崎県における磯焼け対策ガイドラインの作成と地域協議会(磯焼け対策については全国各地で検討例あり)
3.3 (農業分野)埼玉県環境科学国際センターと水田農業研究所の連携による気候変動ケース毎の適応策の整理
3.4 (伝統文化分野)長野県環境保全研究所と法政大学連携による諏訪地域の寒天への影響調査
4.気候変動適応策と明示していないが、感受性改善や長期的対応等の観点で注目される適応策
4.1 (農業分野)秋田県鹿角市での北限のモモ
4.2 (熱中症分野)クールスポット、クールシェア、街中避暑地、高齢者安否確認 等
4.3 (熱中症分野)大阪市立大学医学部発ベンチャーによる快眠健康ナビ
4.4 (水災害分野)兵庫県豊岡のエコハウスでの洪水対策配慮(床下排水、コンセント位置等)
以上