突発的に発生する地震や津波等の自然災害、あるいは温暖化による高温化や温暖化により頻度がますと考えられる集中豪雨等、自然災害や気候変動のリスクへの対応は避けては通れないものとなっている。
こうした自然災害への対応は、既に水害・渇水対策、熱中症対策等として既に実施されている。しかし、東北大震災の経験により、大規模地震や津波への対応をこれまで以上に強化する方向にある。また、地球温暖化の将来予測に関する研究成果も出てきており、長期的な影響を踏まえた対策が求められている。
東北震災の後、「レジリエンス」という言葉をよく耳にするようになった。レジリエンスは「脆弱性」の反対語で、災害等の影響を回避したり、最小化する能力のことを言う。このレジリエンスを備えた都市デザインがこれからの都市づくりに求められている。
レジリエンスが高い都市は、津波を防ぐ防波堤が高い都市、あるいは建築物が堅牢な都市ということではない。自然を技術で制するような方法ではなく、むしろ自然の力の大きさを認め、常に人間の想定外があることを前提に、自然の力を受け入れつつ、被害を最小にするようにデザインされた都市が求められる。
そのための対応として一つは、津波等の被害想定や気候変動の将来影響の予測結果をもとに、土地利用を再構築することが求められる。東北の震災復興では、高台移転を計画しているところが多いが、被災地でもなくとも、これからの被災のことを考えると土地利用の再編を考えることも必要である。居住者の意識差や合意形成、再編後の移転先の確保、移転資金等、解決すべき課題は多いが、未来に向けた重要な検討課題になる。
レジリエンスが高い都市でもう一つ重要なことは、モニタリングと予想・警報のシステムを整備することである。このモニタリング等には2つの意味がある。1つは災害が起こる前に、災害の予兆をモニタリングし、シミュレーション等の方法で将来を予測し、未然防止行動に役立てることである。もう1つは災害発生時に正確な情報を迅速にモニタリングし、避難・誘導等に役立てることである。
モニタリングは地域毎にきめ細かく実施する必要がある。また、地域行政や地域住民、地域事業者等がいつでも、どこからでもアクセスしやすいように情報が提供されていることが必要になる。センサーによる自動観測、様々な観測データを統合するプラットフォーム、情報機器が苦手な住民等にも使いやすいインターフェイス等の整備が進むことになる。
また、突発的な自然災害だけでなく、地球温暖化のようにじわじわと進行する現象もある。こうした地球温暖化の進行についても観測し、影響の進行状況に応じて対策を見直していくような「順応的な管理」を行うことが必要になる。
以上のように、自然災害や気候変動へのレジリエンスを高めるためには、地域を見直し「住むところを変える」、防ぎきれない災害から「早く逃げる」という対応を都市デザインに組み込むことが必要となる。この2つの対応の重要性は、九州大学の小松利光先生から教えてもらったことである。