
唐黍畑の向うから香ばしい匂いがふわりと漂ってきます。
クローバの原っぱはそよそよと波を立てて行ったり来り。
それから子供達の丸い頬をちょんと突っついて行くのは誰かしら。
姿は見えないけれど耳を澄ますとトントン、ぴゆうぴゆう
カタカタ、ふうふうと不思議な音が聴こえてきます。
誰かいたずらっこがいるみたい。

繋いだりするのがアイオロス、ギリシャ神話の風の神さまです。
髭のない男が頬をぷうっと膨らませラッパを吹いている姿で
描かれています。顔だけで体は持っていません。
アイオロスは人々の耳元でさまざまな言葉を囁きます。
何をですって?
それは貴方だけの


今日の一枚 「風ことば」 木版 中島 潔
私はこの絵を眺めていると次の歌を思い出します。
s・y

誰が風を見たでしょう
僕もあなたも見やしない
けれど木の葉をふるわせて
風はとおりぬけてゆく
誰が風を見たでしょう
あなたも僕も見やしない
けれど樹立が頭を下げて
風は通り過ぎてゆく

Christina Rossetti (1830~96)