白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

目にはさやかに見えねども

2013-08-26 | 画廊の様子
夏から秋へと移ろう様を古の歌人達はほんの小さな音や色の変化にも
聴覚や視覚を効かせて逃さず、耐え難い暑さの中にも涼やかな秋の
気配をキャッチしてすっきりと何気ない言葉で歌に詠んでいます。

  秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
                     藤原敏行 

  夏と秋と行きかふ空の通い路はかたへ涼しき風や吹くらむ
                     凡河内躬恒


今日の一枚の絵  「風俗三段娘 上品の図」 喜多川歌麿
                 手刷り木版
喜多川歌麿  1753~1806年 (宝暦3年~文化3年)
       狩野派の町絵師で浮世絵美人画家
評判の吉原遊女、茶屋娘、町家の母子の情景など彼らの生身の
暮らし、肉体、心の中を見事に描き人気を博した。

品(ぼん)とは西方浄土で生活する者をその生き方に応じて
三段に分けて上品(じょうぼん)、中品、下品とした仏教の
言葉です。
歌麿はこれをシリーズ物として描きました。

この上品の図は深窓の令嬢を取り巻く豊かな暮らしぶりをその
大振袖や仕草、部屋の調度品、様々な小物などを配して表現して
います。
団扇は型押し(エンボス加工)で美しく浮き上がらせ、
手前には小さな虫かごを置いて季節の移りゆく様を繊細に
描いています。
此処からは静かな夜に夏の終わりを楽しみながら秋の訪れを待つ
二人の娘の幸せな姿を垣間見ることができます。


蒸し暑かった一日が終わって、よく冷えた桃の実をするりと
喉に滑らせ邪気を払うと少々気がかりなことも夜の底に沈んで
しまい、今日はこれで良しといつの間にか眠ってしまいます。
               

散歩の途中、野の花がさやさやとさざなみをたてて頬を優しく
撫でてくれました。       s・y




   

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