醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  387号  白井一道

2017-05-02 14:31:12 | 日記

 地図を読むのは得意ですか。

 地図を読むのはと得意ではないですが、地図を眺めるのは好きです。地図を描くのが得意でした。イタリア半島を描く。ギリシアが位置するバルカン半島、エーゲ海の島々、アナトリア半島の西海岸を眺め、描くのが楽しみであった。オリンピアがここにある。スパルタがここ、アテネがここだ。クレタ島は海の怪獣の恰好の島だ。レスヴォス島はここか、ここがレスビィアン発祥の島なのか。眺めていると時間を忘れる。ミレトス、ここで科学が生まれたのか。ギリシアではなく、今ではトルコ領内になっているんだな。ダーダネルス海峡は狭いな。トロイの遺跡はここか。クリミア戦争で巨万の富を得た語学の天才シュリーマンが17歳のギリシア人少女と結婚し、トロイの遺跡を発掘のはここなんだと、地図を眺め、想像する。岩山にブドウとオリーブが茂り、青い空の下には澄んだエーゲ海が静かに波打っている風景を思う。シュリーマンは『イーリアス』をギリシア語で朗読する。17歳のギリシア人妻が耳を傾けている。『古代への情熱』が二人の間にふつふつと湧いてくる。エーゲ海の地図を眺め、ロマンに生きたシュリーマンを思う。高校生の頃、世界史の授業で聞いた話を思い出す。地図は想像力を刺激する。
 ダーダネルス海峡、ボスポラス海峡。ここはロシアとトルコが戦った所だな。ビザンチウムはコンスタンチウムと名を変え、今はイスタンブール、文明の十字路と言われている所だな。ギリシア人の都市国家、東ローマ帝国の首都、オスマン帝国の首都になったところだな。バルカン半島にもトルコの領土はあるんだ。ダーダネルス海峡・ボスポラス海峡を通ると黒海に出る。ここにはチョウザメがいるんだな。キャビアの味を思い出すな。黒海に突き出た半島がクリミア半島だ。セバストポリ、ここがクリミア戦争の激戦地なのか。白衣の天使、ナイチンゲールが活躍した所だ。ロシアがウクライナから割譲したとアメリカが言ったところでもあるな。オデッサ、ここが映画『戦艦ポチョムキンの反乱』の舞台になったところだな。エイゼンシュタイン監督もここで映画を撮影したのかな。想像が次々と湧いてくる。映画『戦艦ポチョムキンの反乱』が小林多喜二の小説『蟹工船』に影響を与えたのではないかと言う文章を思い出す。オデッサという地名を眺め、想像が湧く。そう言えば、ロシア革命の指導者の一人であったトロツキーはオデッサで活躍していたようなことを彼の自伝で読んだ記憶が蘇ってきた。そうだトロツキーの『わが生涯』だ。冒頭の文章が思い出される。涙がとめどなく出てきたような記憶が残っている。トロツキーは優しい男だったのだ。徒然なるままに地図を眺めているといろいろな想念が浮かんでは消えていく。そんなだらだらした文章を書いてしまった。

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