集改センター恒例の第152回 スキルアップセミナー報告をいたします。
開催日:2017年(平成29年)9月6日(水)
テーマ:「鉄筋コンクリート造の構造としくみを学ぶ」
講 師:新保 勝浩(本会・正会員/1級構造建築士)
<セミナー概要>
■鉄筋コンクリート造(RC造)とは
柱や梁などの主要構造部に鉄筋の入ったコンクリートを用いたものをいい、圧縮力に強いコンクリートと引張力に強い鉄筋を組み合わせているため、耐久性、耐震性、耐火性、遮音性に優れておりマンションによく用いられています。一方、居住用ではない高層建築物においては鉄骨造(S造)のものが多くなっています。
■RC造のマンションの構成部材
RC造を構成するものとしては柱、梁、壁、床、基礎それに階段、手すり、パラペット等があります。壁には地震などへの抵抗力を持つ耐震壁や耐力壁と住戸内の間仕切りの雑壁があります。雑壁には耐震スリットという隙間や目地が設けられています。床は180mm~200mmのスラブ厚となっているのが多数ですが、小梁を用いない厚さ250mm~300mmのボイド床を利用するケースも増えてきています。ボイド床は自重を減らすためにコンクリートの中に楕円型の空洞が発砲スチロール等で作られています。また、マンション等の建築物を建てる際にはボーリング調査を実施して地盤を確認します。調査の結果、地盤に問題が無ければ独立基礎や布基礎といった直接基礎とし、問題がある場合には杭基礎(場所打ちコンクリート杭、鋼管杭等)の工法を用います。
■構造設計
構造物にはどういった力が加わるのか。垂直方向に加わる荷重として建物自体の重さや家具などの居室の重さを組み合わせた長期荷重と積雪荷重があります。水平方向に働く荷重としては地震荷重、風荷重、土圧荷重・水圧荷重があります。地震荷重については耐用年数期間内に1度遭遇する地震に対して無被害とする1次設計と震度6強の大地震でも人命を損なわないとする二次設計があります。次に構成部材は荷重に対してどのような挙動、反応をするのか。柱、梁、床については圧縮、引張、曲げ、せん断、たわみ、ねじれ、振動等が生じ、基礎については引抜き、転倒等が起こる。こういった考えられる事柄について、意匠性、経済性、安全性、耐久性、品質性能を考えて構造形式を選択していくことになります。
■タワーマンションと免震装置について
免震設備のないタワーマンションでは、上層階では揺れにより室内の物はほとんど倒れてしまいます。またエレベーターはまず動かなくなります。免震設備がある場合はエレベーターの問題は生じないと考えられています。免震装置は取り替えることを前提に設計されており、ジャッキアップ等で交換できます。また免震装置に使用されているゴムは、50~60年は持つと言われております。
~次回開催予告~
■第153回スキルアップセミナー 2017年10月4日(水)午後3時から
テーマ:「理事会のあり方と昨今のトラブル事例について」
講 師:九鬼 正光(本会・正会員/弁護士・管理運営事業部)
<理事会の設立根拠を考えてみる。理事・理事長の役割と権限・責任範囲とは。基本を理解しないで独断専行する理事会や理事長のトラブルが発生しています。事例を交えてマンション紛争に詳しい弁護士が解説します。>