梅雨は一休み?、晴天の奈良の朝、気温は23.0℃から午後3時過ぎには
34.9℃迄上がり、本当に猛暑日一歩手間でした。
14時、33.2℃、42%
NHKラジオ深夜便・今日の誕生日の花はユリ科「ノカンゾウ・野萱草」
また園芸種では「へメロカリス」と呼ばれ、学名ギリシャ語のHemerocallis
からhemera(1日)・ callos(美)が語源で「一日で美しい花がしぼむ」意味に。
中国渡来の多年草、和名の由来は、中国のホンカンゾウに似てよく野原にみら
れるという意味で、漢文には「忘憂草」とあることから、日本では古くから
「忘れ草」とよばれ、万葉集では「和須礼久佐・わすれぐさ」として詠まれる
万葉集 巻3-0334 大伴旅人
原)『萱草 吾紐二付 香具山乃 故去之里乎 忘之為』
詠)『忘れ草 我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため』
意)忘れ草を私の紐(ひも)に付けている。
香具山(かぐやま)のあるあの懐かしい古里を忘れられるように。
萓(くわん)がクワン→クワンザウ→カンゾウ と読み替えられたという説も
花言葉は「苦しみからの解放」
写真は利尻島でのエゾカンゾウです。
2004.7.2利尻島で
先日、生涯学習センターの「古典文学講座」、講師は「中川明日佳」さん。
万葉集の冒頭歌群、冒頭十一首は悲別贈答歌で、遣新羅使歌群の巻頭言です。
①3578武庫能浦乃 伊里江能渚鳥 羽具久毛流 伎美乎波奈礼弖 古非尓之奴倍之
詠)武庫の浦の入江の洲鳥羽ぐくもる君を離れて恋に死ぬべし
②3579大船尓 伊母能流母能尓 安良麻勢<婆> 羽具久美母知弖 由可麻之母能乎
詠)大船に妹乗るものにあらませば羽ぐくみ持ちて行かましものを
③3580君之由久 海邊乃夜杼尓 奇里多々婆 安我多知奈氣久 伊伎等之理麻勢
詠)君が行く海辺の宿に霧立たば我が立ち嘆く息と知りませ
④3581秋佐良婆 安比見牟毛能乎 奈尓之可母 奇里尓多都倍久 奈氣伎之麻佐牟
詠)秋さらば相見むものを何しかも霧に立つべく嘆きしまさむ
⑤3582大船乎 安流美尓伊太之 伊麻須君 都追牟許等奈久 波也可敝里麻勢
読)大船を荒海に出だしいます君障むことなく早帰りませ
⑥3583真幸而 伊毛我伊波伴伐 於伎都奈美 知敝尓多都等母 佐波里安良米也母
読)ま幸くて妹が斎はば沖つ波千重に立つとも障りあらめやも
⑦3584和可礼奈波 宇良我奈之家武 安我許呂母 之多尓乎伎麻勢 多太尓安布麻弖尓
読)別れなばうら悲しけむ我が衣下にを着ませ直に逢ふまでに
⑧3585和伎母故我 之多尓毛伎余等 於久理多流 許呂母能比毛乎 安礼等可米也母
読)我妹子が下にも着よと贈りたる衣の紐を我れ解かめやも
⑨3586和我由恵尓 於毛比奈夜勢曽 秋風能 布可武曽能都奇 安波牟母能由恵
読)我がゆゑに思ひな痩せそ秋風の吹かむその月逢はむものゆゑ
⑩3587多久夫須麻 新羅邊伊麻須 伎美我目乎 家布可安須可登 伊波比弖麻多牟
読)栲衾新羅へいます君が目を今日か明日かと斎ひて待たむ
⑪3588波呂波呂尓 於<毛>保由流可母 之可礼杼毛 異情乎 安我毛波奈久尓
読)はろはろに思ほゆるかもしかれども異しき心を我が思はなくに
問題点
ア)男女の「贈答」であるのに数が奇数で変な点
イ)①~⑧は女歌→男歌の順、⑨は不明、⑩は女歌、⑪は不明と不規則
大濱真幸説 「萬葉」97号 1978年では構成を考察されている。
①-②、③-④、⑤-⑥、⑦-⑧、⑨-⑩、⑪
①②:”起”、不可避な別離の大前提を呈示する
③④・⑤⑥・⑦⑧:”承”、別離の諸相を歌う
⑨⑩:”転”、対応軸の転換で質及び形式の転換が
⑪:”結”、歌群の歌い納めで身の慎みを守るという両性相互の再確認
大浦誠示説 「當所誦詠古歌の位相」「万葉集の様式と表現」2008年
①-②、③-④、⑤-⑥、⑦-⑧⑨、⑩-⑪
・歌の表現の詳細な検討がなされたが、⑪を男女両性の歌とするには無理
・⑦は別離の情、衣、再会を願って歌う
⑧は衣についての歌
⑨は別離の相手への思いと秋での再会を願う思いが表され
⑧⑨は両者相俟って⑦の女歌に答える歌
⑦⑧⑨は一首対二首の贈答とみられる
伊藤博説「万葉の歌物語」『万葉集の構造と成立 下』塙書房1974年
表現の呼答について考察された。
*大伴旅人巻3-0334、我が紐から衣についてのみ記す。
忘れ草 我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため
・武庫の浦 3578 3595
・霧 3580 3615 3616
・秋の再会 3581 3586 3619 3655 3659 3663 3666 3685
3701 3713 3714
・衣 3584別れなばうら悲しけむ我が衣下にを着ませ直に逢ふまでに
3585我妹子が下にも着よと贈りたる衣の紐を我れ解かめやも
3667我が旅は久しくあらしこの我が着る妹が衣の垢つく見れば
3708物思ふと人には見えじ下紐の下ゆ恋ふるに月ぞ経にける
3715ひとりのみ着寝る衣の紐解かば誰れかも結はむ家遠くして
・齊いわひ待つ 3583 3587 3688
冒頭歌群としてもありかた
この11首は、出発時の歌という機械的な意味だけではなく、歌群の構造と
主題を規定するために冒頭に飾られ、名実ともに遣新羅使歌群の巻頭言で
遣新羅使人たちの共有財産としての性格を現している。