時とたたかい、時に翻弄される者たちを描いたSFのような短編六編。とある北の国。猛吹雪の夜、図書館に母親の迎えを待ちながら手違いで一人の少年が取り残された。暖房もない極寒の館内。そこに突然現れた謎の男は少年を救い、やがて大切なことを伝え始めた。・・・表題作「図書館の子」。1937年の東京で照明弾のような光源が見えた日。隅田川で拾われた男が病院に運ばれてくる。その身元不明の男は記憶を失っていたが、なぜかこれからやってくる戦禍の時代を知っているかのようだった。・・・「遭難者」。戦災を免れた谷中。二人の少年の冒険は、防空壕の奥深くの廃駅へ。・・・「地下廃駅」。フィレンツェの伝説。天体図。カララの石切場で助けられた錬金術師が予言した500年後。・・・「錬金術師の卵」。満州・大連、クラシック・ホテルで行われたユダヤ人ピアニストの演奏会で・・・「追秦ホテル」。満州の大連からハルピンまでの女一人の傷心の列車旅。・・・・「傷心列車」。どれもタイムスリップをテーマにした短編集ですが、短編ゆえの物足りない中途半端感は否めない。
2020年7月光文社刊
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