改変歴史小説、舞台は、近未来のパラレルワールド、朝鮮半島に高麗連邦という国が出来、日本国は分断され国民融和政府と国連平和維持軍が統治する国と敵対する盛岡政府側との内戦にあって、福島の二本松で隠居生活を送る元公務員の沖本信也が主人公。盛岡政府側の地上軍、民兵部隊、平和維持軍、入り乱れる戦闘のさなか、東北民間防衛隊に追われる避難民の酒井真智とその娘・由奈が沖本の下へと救済を求めてきます。酒井真智は、大学時代の旧友たちの娘であり、断ることができず、役所勤めの経験をいかし逃亡することになった三人は、二本松から原発の高濃度汚染地域を通過し、軍事境界線を越えて、迫りくる危機をかい潜りながら、東京へ向けて南下していきます。スリリングな逃避行と、創造力を駆使して構築された背景と巧緻な街の描写を俯瞰的に描写されていく中で物語の背景が、小出しに現れてきます。理解しがたい事態、明確に示されない何故の曖昧さが実はこれからの日本の未来だと著者は言いたかったのか不確かで決して独立した国家としての体をなしていない「日本」という国を憂えているようで共感出来ます。何故そこまで2人に身を懸けるのか?後半明らかになります。 緊迫の頂点で、秘めた言葉が血と嗚咽とともに迸る展開ですが、特異な環境設定で最後まで感情移入で出来ず読了。
2022年8月新潮社刊
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