読書備忘録

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佐々木譲著「婢伝五稜郭」

2012-07-01 | 佐々木譲
「勝者が歴史をつくり、敗者が物語をつくる。彼らの物語は、実に魅力的で心を打つエピソードが数多くある。」(著者談)
明治維新が薩摩長州の視点でしか書かれていないのに疑問があったという著者が、「官軍」による箱館病院分院での虐殺(史実)を官製の歴史観をぬりかえるべく、登場人物たちひとりひとりの夢を描いた、熱くすがすがしいそして、豊かな物語に書き上げた。『五稜郭残党伝』『北辰群盗録』に続く3部作。
主人公は、医師・高松凌雲のもとで看護婦として働いていた朝倉志乃という若い女性。明治2年(1869)、箱館戦争の最終局面、志乃の働く箱館病院分院では傷病兵にすら官軍によって凄惨な殺戮が行なわれていた。
志乃はこころを寄せていた青年医師・井上青雲が眼前で惨殺されを見て「私の戦」を決意する。
宿敵を衝撃的な方法で殺し、ついに追われる身となる。
女であり敗者である志乃がみた、すがすがしく豊かな箱館戦争後日談小説
榎本武揚は、箱館統治時、プロシア人R・ガルトネルに土地一千町歩の貸与を認め、西洋式農場の建設にあたらせました。
官製史観では「国土を外国人に切り売りした」と否定的に評される事実ですが、これが日本の農業近代化の最初の一歩でした。この物語では、このガルトネル農場も主要な舞台となり、戦う女へと変身していく志乃に医学以外にも、射撃、馬術、西洋式料理を身に着けさせ戦士になっていく様子が描かれています。
やがて追われる身となった志乃が出会うのが榎本軍の残党、三枝弁次郎。
共和国建設の夢を捨てきれない三枝と居場所を失った志乃は、迫る官軍と激しく戦いながら、北海道の奥へ奥へと逃げ続ける。
途中、迫害されるアイヌの人たちの厳しい現状を知る場面など、歴史も学べるサスペンスに満ちた面白い小説でした。

2011年1月朝日新聞出版刊

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