三月も終わり、昨日から四月。
この節目を早いと感じる方、遅く感じる方、
それぞれが様々な思いで感じておられているのだと思います。
この四月は、少しずつでも多くの方が
春の到来を喜べる事を願っています。
私はここしばらく、会社の展示会の準備で慌ただしい日を過ごしていました。
今日でようやく設営も終わり、月曜日の予備日に最終チェックを残すばかり。
来週からはこれまでとはまた違う忙しい日々が始まります。
こんな時期に、のんきに展示会でもないだろう、という意見も
もしかしたらあるかもしれませんね。
また実際に会を催した所で、現実的に商品が動く可能性もかなり低いでしょう。
けれど、私たちのように被害を受けていないモノづくりの現場では
真摯に前向きに精進する事しかありません。
少しでも経済を回し続ける事でささやかながら何らかの貢献ができれば…。
そして、やはりこうした状況下、仕事ができる事をまずは感謝しなくては!
そう思います。
私の携わっている和装業界でも、この震災で被害を受けられた
方は大勢いらっしゃるのだと思います。
繊維の材料となる麻や、からむし織を生産する福島県、
秋田八丈を生産する秋田市や北秋田市、
結城紬の茨城県や栃木県などなど
被災地の中には多くの和装関係の産地があります。
そしてそれらの製品の陰には、そこに携わる方々の生活があるのです。
生活必需品と違い、きものは一種の贅沢品です。
でも、そうしたきものを生産されている方々の全てが
贅沢な暮らし向きをされている訳ではありません。
昔ながらの工程や伝統を守り、細々ながらも続く生産家もあります。
そして私たちの和装小物業界も、その一部です。
呉服業界は現在、伝統工芸という名の斜陽産業であり、
いま私たちが頑張らなければ、その灯りはすぐに消えてしまいます。
だからこそ今回の展示会は、震災に遭わずにいた私たちにとっても
ある意味では正念場なのです。
もちろんどんな業界でも、同じ事が言えるのでしょう。
仕事が出来る状況に感謝すると共に、各業界の灯りを守る。
それがいま仕事が出来る者の使命なのかもしれません。
さて。本日はもうひとつ灯りのお話があります。
ごく個人的な事なのですが、私は子供の頃から
甲状腺に疾患を持っています。
心臓や肝臓といった臓器と違い、甲状腺はあまり耳慣れないものですから、
もしかしたら今回の原発事故で、初めてその名前を耳にされた方もあるかもしれませんね。
甲状腺はちょうど喉仏のすぐ下辺りにある、ごく小さな器官なのですが
この小さな器官は、人が生きるための身体の代謝や成長のホルモンを分泌する、
とても大切なものなのです。
その甲状腺の疾患の一つに使われる薬を生産している、
日本でほぼ唯一の製薬会社が福島県いわき市にあるのですが、
その工場が今回の地震で被災し、震災直後から生産がストップしていました。
日本全国ではおよそ数十万人の人がこの薬を処方されており、
生産再開が解らないまま、国内の供給に不安を感じていましたが
先日の4/1にいわき工場の生産が段階的に再開された事、
また、あるジェネリック医薬品のドイツの本社から、
国内への輸入が開始され、4月上旬を目途に販売されるとの発表がありました。
ごく狭義的な事ではありますが、これも震災の中の小さな灯りなのかな…
そんな風に感じた宗流です。
あすか製薬株式会社
この震災で、さまざまな持病を持つ方にお薬が満足に手元に届かなかったり
必要な治療や看護が充分でない事が未だ多いのだと思います。
普段から滞りなく健康な日々を送れる私たちが想像するそうした不便は、
たとえ病の種類は違えど、健康に不安を抱える方々にとってみれば
離れた地のお話であっても、我が事のように心を痛められておられるのでしょう。
何かの痛みを知る人は、きっと人の痛みにも敏感ですもの。
そうした全ての方に、一日も早く灯りが訪れる事を、心から願っています。
宗流