あっという間に5月も終わりで、昨夕はいつもの中央大通りで「9の日」スタンディングです。工夫されたプラカードの中でも「共謀罪NO!」の赤色が目立って、行き交う人たちも注目のようです。
都内でも「共謀罪NO!」の若者らのデモでは「憲法変えるな 政治を変えろ」と叫ばれています。森友学園問題や加計(かけ)学園問題を見聞きするにつけ、いま変えるべきことは国民主権の政治のあり方ではないのかと痛感です。
去る25日の文科省前川喜平前事務次官の記者会見で、ついに霞が関から反乱の“火の手”が上がり、安倍官邸の行き過ぎた官僚支配に対して異議の矢が放たれた思いです。
アベ政権が戦略特区という政策の名を借りて、その裏で首相の腹心の友のビジネスに便宜供与していたのではないのかという疑惑がますます大きくなってきました。それにしても菅官房長官の“前川叩き”に、政治家の底なしの醜聞さが伝わってきます。
その前川氏が事務次官として退任時に職員に送った「挨拶メール」が、漱石研究第一人者の片岡豊氏から情報提供として届きました。挨拶の中で初代文部大臣の森有礼(ありもり)の「自警」にふれているので、先日の熟慮塾講座を重ねながら、前川氏の人柄と真摯さを熟読です。
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文部科学省の皆さんが元気いっぱい仕事に打ち込めるようリードすべき立場の私が、このような形で退職することは、誠に残念であり申し訳なく思っています。
国家公務員法が定める再就職規制を遵守(じゅんしゅ)できなかったことは事実であり、文部科学省として深く反省し、しっかりと再発防止措置をとる必要があります。
私を反面教師として、二度とこのようなことが起こらないよう、職員の皆さんは遵法意識を徹底し国民の信頼回復に努めてください。
しかし皆さん、動揺したり意気消沈したりしている暇はありません。
一日たりともおろそかにできない大事な仕事があるからです。
文部科学省の任務は極めて重要です。私が考える文部科学省の任務とは、教育・文化・スポーツ・科学技術・学術の振興を通じて、誰もが明るく楽しくしあわせに人生を全うできる社会をつくること、未知なるものに挑戦し限界を克服し輝く未来へと前進すること、さらには自由で平等で平和で民主的で文化的な国をつくり世界の平和と人類の福祉に貢献することです。
そして、私が考える文部科学省職員の仕事は、子どもたち、教師、研究者、技術者、芸術家、アスリートなど、それぞれの現場でがんばっている人たちを助け、励まし、支えていくことです。
特に、弱い立場、つらい境遇にある人たちに手を差し伸べることは、行政官の第一の使命だと思います。
その意味でも、文部科学省での最後の日々において、給付型奨学金制度の実現の見通しがついたこと、発達障害や外国人の児童生徒のための教職員定数改善に道筋がついたこと、教育機会確保法が成立し不登校児童生徒の学校外での学習の支援や義務教育未修了者・中学校形式卒業者などのための就学機会の整備が本格的に始まることは、私にとって大きな喜びです。
一方で、もんじゅの廃炉と今後の高速炉開発に向けた取り組み、文化庁の機能強化と京都への移転、高大接続改革の円滑な実施など、数々の困難な課題を残して去ることはとても心残りです。
あとは皆さんで力を合わせてがんばってください。
そして皆さん、仕事を通じて自分自身を生かしてください。職場を自己実現の場としてください。初代文部大臣森有礼の「自警」の表現を借りて言うなら「いよいよ謀りいよいよ進めついにもってその職に生きるの精神覚悟あるを要す」です。
森有礼は「その職に死するの精神覚悟」と言ったのですが、死んでしまってはいけません。人を生かし、自分を生かし、みんなが生き生きと働く職場をつくっていってください。
ひとつお願いがあります。私たちの職場にも少なからずいるであろうLGBTの当事者、セクシュアル・マイノリティの人たちへの理解と支援です。無理解や偏見にさらされているLGBT当事者の方々の息苦しさを、少しでも和らげられるよう願っています。
そして、セクシュアル・マイノリティに限らず、様々なタイプの少数者の尊厳が重んじられ、多様性が尊重される社会を目指してほしいと思います。
気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください。
いろいろ書いているうちに長くなってしまいました。最後まで読んでくれてありがとう。
それでは皆さんさようなら。
2017年1月20日 前川喜平