逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

最低輸入米が食管圧迫

2008年10月27日 | 社会

『在庫膨らみ赤字1374億円』


日本共産党の紙智子議員は十六日、参院農林水産委員会でコメのミニマムアクセス(最低輸入機会)について、「現在、在庫が百七十万トンにもなり、それにかかわる食管会計の累積赤字が千三百七十四億円にものぼる。
国民の重い負担になっている」という実情を示し、ミニマムアクセスに対する対応の抜本的見直しを求めました。

国別では二〇〇四年にオーストラリア産米が不作のため十万トンから二万トンに輸入が落ち込んだにもかかわらず、ミニマムアクセス米の輸入総量は七十七万トンで変わっていません。

紙氏は「本来なら八万トン輸入が減っても問題ないのに、何としても総量を守ろうとしている」と追及。
「ミニマムアクセス米の在庫は圧倒的に米国産が占めている。
ところが、米国産米は毎年三十万トン以上輸入され全体の輸入量の約半分にのぼる」と、その異常ぶりを明らかにし、輸入量の削減を求めました。

中川昭一農水相は「(輸入量を)減らすことはきわめて厳しい」としつつ、「全力をあげてギリギリで自分の立場を守る交渉をしていきたい」と答えました。

紙氏は、香港で特定危険部位のついた米国産牛肉が見つかって輸入停止になった問題もとりあげ、政府に調査を求めました。

中川農水相は「香港とアメリカの輸出プログラムは日本とは違う」と、対応する考えのないことを明らかにしました。(2006年3月18日(土)「しんぶん赤旗」)





『ミニマムアクセス(最低輸入機会)』

WTO(世界貿易機関)農業協定で過去の輸入量が極端に少ない農産品について求めている最低輸入枠のことです。
日本のコメがこれに該当します。輸入義務ではありませんが、日本政府は国内で減反しながらコメの輸入を年々拡大し、今では消費量の一割近い七十七万トンに達しています。




『輸入米 在庫2/3が米国産 食管会計赤字』

MA米は、主に加工用(二十五万トン)や食料援助用(二十万トン)、主食用(十万トン)に使われています。
いずれも輸入米が押しつけられる前は国産米で対応していたものです。

外国産輸入米の在庫量は、二〇〇五年十月の統計では百七十万トンとなっています。
ここ数年、二十万トン程度が在庫として積み増しされています。

国産米の在庫量(毎年十月末に計算)は、水田の減反(生産調整)が強化され〇五年十月末には、古米在庫は食べ尽くして、新米二十四万トンを食べた状態にまでなりました。




『外国産米の在庫のうち三分の二にあたる百八万トンがアメリカ産』

『市場評価低い』

これら外国産米の保管経費などで食管会計の赤字は、累計で千三百七十四億円にのぼっています。
アメリカの米が国民への重い負担となっています。

アメリカ産米は、市場評価は中国産に比べて低いのに大量に輸入されています。

二〇〇四年度実績では、全体のMA米(精米)の五割近くの三十二万トンが同国産となっています。
二番は中国で十七万トン、タイ九万トンなどとなっています。

一方、商社と米穀卸売り会社が同時に入札する方式をとり市場の動向を比較的反映するとされるSBS米では、中国産米のシェアが圧倒的に多く、アメリカ産米は一割程度でしかありません。

市場の評価が低いのに輸入する実態は、アメリカへの奉仕ぶりを示しています。



『無理やり総量確保』
 
ミニマム・アクセスの考えはWTO協定にもとづくもので、輸入量が少ない農産物は低関税にして輸入の機会を保証するというものです。

政府は、日本の米輸入は、国家貿易だからWTOに約束した輸入量を確保しなければならない、と説明します。

これにたいし紙氏は農水委の質問で、台湾はMA米の約束量を十四万トン以上としながら国家貿易によって十万トン程度しか輸入していない、韓国のトウガラシも約束量を守っていないなど具体例を紹介。
一方日本は、二〇〇四年は豪州産米が不作のため十万トンから二万トンに輸入が落ち込んだにもかかわらず、他国からわざわざ輸入して総量を確保しています。

紙氏は「輸出国の事情なら、〇四年は八万トンの外国産米輸入量が減っても問題ないはずだ」と指摘し、MA米の削減を主張せよと求めました。

MA米の問題では、高橋衆院議員も一日の衆院予算委員会分科会で、最近のWTO農業交渉では米国が日本のMA米輸入を六百万トン程度まで大幅に増やす内容の提案をしていることを批判し、日本農業に悪影響となるMA米を削減するように求めています。(2006年3月20日(月)「しんぶん赤旗」)




『農業を潰している農水省』

国内の流通するコメのうち、最大の産地は、新潟でも北海道でもなく今や海外になっている。
量的にミニマムアクセスとして年間77万トン輸入されている主食用にはほとんど回らない外国米が北海道産や新潟産秋田産を遥かに凌ぐ。

主食用に全く人気が無いので需要が元々無い輸入米は大量に売れ残る。
売れ残った輸入米は倉庫で保管した後に、最後には援助用として輸出する。




『意味不明の農水省の税金の無駄使い』

輸入米の費用は食糧管理特別会計から出す。買い入れ額は350億円(2002年度)
無駄な輸入米の在庫管理だけでトン当たり一万円程必要で年間150億円程度かかる。
輸出にかかる経費も最近6年間で514億円の税金を投入している。
何とか有効に輸入米を使えないか加工用に検討されているが、一番の需要家清酒メーカーは「輸入米でも良い酒が出来ることは承知しているが、消費者イメージが大切」と慎重。
また清酒メーカーの社長は「外国産米を使って目立った動きをすると地元の反発が怖い」と漏らす。実際、外国産米を使ったメーカーの酒が農家や酒販店の反発を買い、不買運動に発展した例があるという。
こうして各地の倉庫は輸入米で埋め尽くされて行く。









アメリカ発の自作自演の『世界的な穀物価格の高騰による食糧危機』

『日本の輸入米輸出を容認』
2008.5.17 01:34

米政府は16日までに、日本が海外から輸入したコメを途上国への食糧援助として輸出することを特例として容認する考えを決めた。
米通商代表部(USTR)は近く日本政府に、この方針を正式に伝える。
 
USTRは一部メディアに対し、世界貿易機関(WTO)が義務付けた最低輸入量(ミニマムアクセス)に基づく日本の輸入米について「日本国内での消費が基本だが、途上国でコメの価格が上昇しており、特例が必要だ」との考えを示した(共同)

(注”)『界貿易機関(WTO)が義務付けた最低輸入量』とあたかも日本の義務で有るかのように意識的に誤表記している。
また代金を払い既に日本の所有物である日本国の『輸入米』に対して、あたかも今でもアメリカの判断で如何様にも出来るアメリカ自身の管理物(所有物)で有るかのごとき発言、態度である。




『義務的輸入米を途上国へ、食糧危機対策で政府検討』
2008年5月17日03時07分 読売新聞

発展途上国の食糧危機の広がりを受け、政府が義務的に輸入しているコメを途上国支援に回す検討に入ったことが16日、明らかになった。
こうしたコメの約半分を日本へ輸出している米国も、途上国支援に使うことを日本政府に促しており、来週にも日米両政府の高官が具体策を協議する予定だ。
支援の時期や量、無償援助なのか輸出なのかなどの詳細は、この協議で詰める。
 
日本はコメ輸入について、1993年の関税・貿易一般協定(ガット)多角的交渉(ウルグアイ・ラウンド)合意にもとづき、毎年、一定の量を外国から輸入する義務(ミニマム・アクセス)が課せられている。
現在は年間約77万トン規模で、原則として国内で消費するよう求められている。主に焼酎やせんべいなどの加工用に使われているが、2007年10月末現在で152万トンの在庫がある。
 
米国はもともと、日本に対して輸入米の国内消費を強く求めていた。
しかし、穀物価格の高騰が世界的に深刻化し、途上国の政権基盤を危うくする事態に発展しているため、方針を転換した。


(注”)米通商代表部(USTR)と全く同じ様に『界貿易機関(WTO)が義務付けた最低輸入量』とあたかも義務で有るかのように意識的に誤表記して一般読者に対して間違った情報で間違った方向に誘導し様としている。
日本のマスコミ各社が、全て米通商代表部(USTR)と全く同じ間違いを犯している事実は、これがマスコミ各社の単なる勘違いや誤報ではなく日本の報道機関がアメリカ政府指示に忠実にしたがっている事実を雄弁に物語っている。

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4 コメント

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日本人とは ( 農婦)
2008-10-28 19:51:50
私は日本人です。(笑)私は、農家の出ですが,昭和30年代の、自分が幼少期を過ごした時代に戻れたらなーといつも思ってます。貧しくても本当に豊かで(精神的)、楽しい暮らしでした。眠りに入るときには明日の朝が早く来ることを思い、毎日が楽しい日々、夢のようです。とにかく、涙あり、笑いあり、いざこざあり、面白い時代でしたねー。日本人は、日本人らしく生きてゆければ幸せなのに、いつから)こんな風になってしまったのやら。未開の人々の思いがわかります。(てメーラ、文明人とやら、醜いから寄ってくるな」
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コメント有難うございます (ブログ主)
2008-10-29 09:49:14
昭和30年代と言えば日本人の飢餓が無くなり日本の食料が日本国内でほぼ100%自給出来ていた時代ですね。
当時は農林水産業が十分自立出来る産業だったし、農家の所得も都会のサラリーマンに決して劣っていなかった。

ところが今では自民党元幹事長の武部氏は1ヘクタール未満の日本の農家を揶揄して農業ではなくガーデニングなどと酷評している。
しかし現在でも日本の農業生産高は欧米に比べても決して劣ってはいない。
同じ農地の単位面積あたりの扶養人口の数は、ヨーロッパの3~4倍、アメリカの13倍もの効率の良さで、外国に比べて格段に優れた農業技術と豊かな農地が日本には有る。
日本の農産物が高いのは農家の努力とは関係なく、
為替の関係で円が高いからで購買力平価なら決して高くない。
工業製品と違い気候に影響される農産物は自国生産が基本で、自国で余ったものだけが輸出に回されるので、ミニマム・アクセスで大量輸入して国内を減産するなどは政治としては愚の骨頂。正気の沙汰ではない。
工業品と同じように、安いものを外国から買うなどの発想自体が狂っている。
この考え方が正しいなら、国際価格の平均より高い地域での農業は基本的に成り立たないが、それでは今の世界の農業の半分は高いので全てなくなる方向になる。
これでは今の世界人口の半分しか養えませんよ。
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農林水産業を捨てるのか? (もえおじ)
2008-10-29 21:22:26
全く仰るとおりなのですが、

食料は安全保障上の基礎である、という議論をすると、必ず「石油がないと、今や農林水産業自体が成り立たないのだから、食料自給率の事だけを問題にしても駄目なんだ」という屁理屈を言う人が出てきて、食料安全保障の議論は難航するのです。

さらに問題になるのは、海外から「安い」食料や資源を買う方が、国内の「高い」食料をお金で買うよりも効率的だという考え方です。

つまり「食料や資源を海外からの輸入に依存する構造の中でしか日本は生きていけない」ので、外国(特に米国)と仲良くして、未来永劫に輸入できるように外交を維持する事の方が、食料の自給率を上げる事よりもずっと大切だという訳です。

しかし、エネルギー危機や食料危機になったら、どこの国も先ず自国民を優先するので、外国はどこも日本を助けないと思います。

そういう意味では、最低限の食料とエネルギーの自給を目指すのは国の第一の役割であるはずなのですが、残念ながら現実はそうなっていません。
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コメント有難う御座います (ブログ主)
2008-10-30 11:50:29
「今の農業は石油がないと云云』は農の基本が分かっていないか或いは分かっているが為にする屁理屈ですね。
日本でも外国でも農業での一番の問題点は農地で、日本の現状は4割近くが放棄され荒れ放題。農業従事者は高齢化が進みいまや六十代、農産物の完全自由化なら自給率は10%程度に下がります。

『食料は安全保障上の基礎である』なんて常識的な考えは今の自民党政府には全くありません。
『食料自給は安全保障上の基礎』の考えは世界の常識で世界中の誰でも知っているが日本の自民党と自民党に投票する無知な有権者だけは知りません。

自国の安全ではなく、トヨタやキャノンが外国で自由に商売が出来るように日本政府は貿易相手国に対して国内の貿易障壁を最大限撤廃して見せているんですよ。
酷い話です。まあ食料危機が起こっても金が有る自分には関係ないとでも思っているのでしょう。
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