逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

日本の2倍になっていた中国のGDP(国内総生産)

2014年01月26日 | 経済

『日出る勢いの中国と「日」没する日本』

日本経済は冷戦崩壊後の25年間、アメリカのグローバリズム(新自由主義)で穏やかに死につつあるが、対照的なのが冷戦崩壊後に(同じく新自由主義で)大きく躍進している中国である。
日本では1997年に消費税をたったの2%増税(3%から5%)しただけでも影響は凄まじく、97年の521兆円を最大値(ピーク)にして、デフレが進行し経済が縮小、国内総生産(GDP)の数値は一貫して下がり続けている。
1月20日、中国国家統計局が発表した2013年の国内総生産(GDP)は、物価変動を除く実質で前年比7.7%増と、依然として極めて高いままで成長率を維持している。
2013年の中国の国内総生産額は円換算で983兆円(約57兆元)になり、500兆円弱に低迷する日本のGDPの2倍に達した。
盛者必衰『栄枯盛衰は世の習い』とはいうが日本は、半世紀近い昔である1968年に西ドイツを抜いてから、42年間もの長きに渡りアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国の地位を維持していたのである。
ところが2010年にGDPで僅差で第三位だった中国に日本(世界第二位)が抜かれてから、3年後の去年2013年には日中両国の差が一気に『2倍』まで大きく開いているのですから驚きである。
2010年の日本のGDPは5兆4778億ドル。対して中国は5兆8895億ドルであった。
中国がわずかに日本を上回っていたが、僅差の4000億ドル程度であり、日中両国は『ほぼ同額』だったのである。

『たったの3年で「差」が二倍に』

日本の2倍になった中国のGDP値の格差拡大の原因ですが、日本を追い越した後も高い成長を続けた中国と低迷する日本経済も一因だが、『成長率の差』だけが問題ではない。
2013年は日本が異次元の金融緩和(アベノミクス)で1ドル70円台から1ドル100円台へと、今まで日本が経験したことが無い30%もの急激な円安が進んでいた。
アベノミクスに世間は浮かれているが、『円安』の結果、現在の為替レートで中国の元と日本の円を換算した場合に、今のように日中の経済力指数の国内総生産(GDP)の差が2倍に開いて仕舞ったのである。
しかも為替の関係で、日本が全面的に外国からの輸入に頼る石油など燃料、食糧、原材料が軒並み1~2割ほど値上がりする性質の悪い『アメリカ型インフレ』が起きているのですが、これ等はアベノミクスがもたらした円安が原因しているのです。(2013年の貿易収支は11・5兆円もの赤字で過去に例が無い)
安倍晋三の異次元の金融緩和がアベノミクスではなくて、本当はアホノミクッスしたアベノリスクだった実体が今年になってからだんだん明らかになって来ている。

『安倍晋三首相の大失言』

スイスのダボス会議に参加した安倍晋三首相は『今の日中の関係は第一次世界大戦前の英独に近い』との認識を示してBBCやファイナンシャルタイムズなど地元マスメディアを驚かしている。
黄泉の国からの岩下俊三さんは『日本が戦争をしたがっていると誤解されても文句は言えないのである。』と、安倍発言の持つ危険性を的確に指摘している。
まさに、ご指摘の通りなのです。
第一次世界大戦以前の欧州では、政治家も外交官もマスコミも積極的に戦争回避に努力しなかったので世界大戦にまで発展させて仕舞う。
当時、戦争を『数ヶ月の短期で終わる』と見て、止めるどころか逆に開戦を煽っていたのである。
少しでも歴史を知っていれば『第一次世界大戦前の独仏関係』と今の日中関係をリンクさせるとは絶句するしかない。
100年前の英独両国の政治家は、国家破滅の軍事衝突に突き進んでいったが、現在の日中でも軍事衝突不可避との週刊誌とか新聞の記事が書かれているのである。
日本や中国を良く知らない欧米メディアの中には、安倍の発言を『日中戦争近し』、『日本が(あるいは中国の両方が)全面戦争を準備している』と誤解して理解する可能性が高いのである。
この安倍発言に反応したのか、太平洋軍最高司令官兼太平洋艦隊司令官のサミュエル・ロックリア海軍大将は1月24日の国防総省で行われた記者に対するブリーフィングで、日中関係における緊張が軍事衝突にまで発展する恐れがあると指摘したと言うから驚いた。
日本の事情に詳しいはずの極東米軍のトップが、なんと、日中軍事衝突を心配しているのである。

『一人勝ちのドイツと、デフォルト寸前のイギリス』

安倍首相であるが、100年前の歴史認識が『無知』である(逆さまに理解している)ばかりか、政治家として一番肝心な現状認識が出来ていない。
二倍に開いた日中の『国力』や勢いの差を知らないのである。安倍晋三は何時まで『虚しい夢』をみている心算なのだろうか。
今の日中両国の『力』関係ですが、第一次世界大戦前の世界に冠たる大英帝国(実力№1の覇権国家)と躍進する新興工業国独(№2の国家)では無い。
二倍に差が開いた今の日中両国に一番近いのは、100年前の英独ではなくて今のイギリスとドイツの関係なのである。
今のイギリスは世界帝国どころか、欧州ソブリン危機でPIIGS(ポルトガルやギリシャ、スペインなど五ヶ国の頭文字)と共にデフォルトが心配されるまでに落ちぶれ果てている。
イギリスの金融機関の抱える債務は段違いの世界最大であり、PIIGS五ヶ国に英国(Great Britain)を加えたPIIGGSと呼ばれているのですよ。
経済が低迷する元世界帝国のイギリスと対照的なのがドイツで、リーマンショック後の不況下の欧州で『一人勝ち』しているのである。
それにしても、2010年に日本が中国に国内総生産(GDP)で逆転した時には日本のマスコミや有識者が『大騒ぎしていたのに、』である。
ところが、早くも3年後の2013年には日本を抜いた中国のGDP値が『日本の2倍』になっているのに、この驚きの『事実』に対して今の日本のマスコミや識者が一切沈黙して一言も語らないとは不可解である。
中国の人口は日本の10倍の13億人なので国内総生産(GDP)が同じになった2010年時点で中国人の一人当たりの個人所得では日本人の10分の1だった。
現在では(たったの3年で)個人所得でも3分の1程度まで格差が小さくなっている。
二倍に広がった『止まらない中国』と、『立ち尽くす日本』との差は、今後も広がる一方で止まる気配が無い。

『靖国参拝や安重根記念館で中韓と真っ向から対立する日本』

政権発足1周年の去年末2013年12月26日の安倍晋三首相の靖国公式参拝騒動のほとぼりが冷めるまもなく、今年に入ってからは中国ハルビン駅の100年前に伊藤博文を射殺した朝鮮独立運動家安重根の記念館に対して、日本の菅官房長官や外務省のアジア太平洋局長が『安重根は死刑になったテロリストである』との挑発的な、『火に油を注ぐ』抗議声明を出し、これに対して中韓両国政府が『安重根は義士である』と激しく反発する大騒動に発展する。
日本では年末恒例の赤穂義士の討ち入りに対して(200年以上前に)『死刑になったテロリストである』などと批判した『空気が読めない』政治家は、当たり前ですが一人もいないのです。
日本政府(菅官房長官や外務省局長)ですが、何の目的でハルビンの安重根記念館の開設を批判したのでしょうか。
現在の日中韓三国ですが、お互いに大事な臓器や下半身を共有するシャム双生児のように、経済的に不可分に相互に依存しているコングロマリット状態なのですよ。(日本の製造業の多くは自国内ではなくて中国韓国等外国で生産している)
『空気が読めない』では済まされない、『国を危うくする』亡国的な愚かな発言である。
韓国外外務省は20日『安重根は祖国の解放と東方国家の真の平和のために、私心なく命を投げうった偉人であり、全世界の人々が敬愛する英雄である。伊藤博文は武力を動員し、日本の朝鮮半島侵略を主導し、朝鮮半島と北東アジアの平和を破壊し、当時の朝鮮半島の人々に大きな痛みをもたらした元凶である』との声明を出している。

『伊藤博文の最後の言葉』

今回の安重根記念館の開館ですが、これは中韓で結束して日本に対抗する思惑があるのは確実である。
伊藤博文ですが、朝鮮植民地化の端緒となった初代朝鮮総監であるばかりか、1895年4月の日清戦争敗北で台湾の日本への割譲など屈辱的な下関条約を結んだ日本国首相なので、中国としては恨みがあるのです。
伊藤博文は明治維新以降の政治家としては、外国との戦争や紛争を避けようとして、朝鮮併合や日露戦争には強く反対していたが、結局1909年朝鮮併合を最後には容認して仕舞うのである。
韓国併合に慎重だった伊藤博文は『君、朝鮮人は偉いよ。この民族にして、これしきの国を自ら経営できない理由はない』、『今日のありさまになったのは、人民が悪いのじゃなくて、政治が悪かったのだ』と語ったと新渡戸稲造が書き残している。
襲撃した安重根に対して『おれを撃ったりして、ばかなやつだ』とつぶやいたというが、暗殺後に日本の朝鮮支配はそれまでの政治主導から軍部主導へと極端に悪く変更されて仕舞い、伊藤博文の最後の言葉が『真実』になるのですから歴史は恐ろしい。



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