新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

新たな発想のワクチンできるかも?(ノイラミニダーゼ変異@インフルエンザ)

2013-10-07 11:20:49 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

インフルエンザ感染の新しいメカニズム報告。

  • ヘマグルチニンの変異後の新たな感染メカニズム。The researchers discovered the new mechanism of infection after mutating the hemagglutinin of a lab-adapted strain of influenza so that it could no longer attach to cells
  • 最初の仮説では、変異したへマグルチニンは、感染能をもたないと思われていた。しかしながら、この変異したヘマグルチニンが増殖したので驚いた。さらに驚いたことに、ノイラミニダーゼに変異を起こした。
  • 詳しく調べると、ノイラミニダーゼが変異することによって、ウイルスが宿主細胞にくっつくことが可能になることが判明した。すなわち、これまで思われてきたようなヘマグルチニンが細胞にくっつくことが必須では無いことが判明した。
  • この種の変異は、ヘマグルチニンが付着するをの防ぐという意味で新たな免疫につながる可能性あり。

コロンブスの卵みたいな話で、まったく新しい発想のワクチンができるのかもしれません、将来。

ソースはFred Hunchington research center
http://www.fhcrc.org/en/news/releases/2013/09/researchers-influenza-infect-cells.html

Researchers discover a new way that influenza can infect cells

Study may have implications for immunity against flu
SEATTLE – Sept. 23, 2013
 

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豚インフルH3N2vの疫学詳細解明(米CDC)

2013-09-27 07:31:25 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

昨年米国オハイオ州を中心に、農業祭での感染事例が相次ぎ騒動になった豚インフルエンザH3N2v、疫学データの報告by米CDC。

  • H3N2vの疫学。H3N2vは2011年に出現し、2012年の激増306例。H1N1pdmのM蛋白を有する豚インフルエンザウイルス。
  • 大部分は18歳未満の若年者。中央値は7歳。入院例ではさらに低年齢5歳未満が多い。
  • 農業祭での豚接触が大部分(直接接触69%、間接26%)で、多数回接触例も。
  • 慢性疾患罹患例では、重症化リスク。
  • 豚⇒ヒト感染のメカニズムはなお未解明。
  • 死亡例は61歳女性例1例のみ。
  • 現地の豚密度にも関連、オハイオ州と インディアナ州に特に多い。
  • 農業祭の時期にも関連、農業祭は7月22日~の週にピークを迎えたが、その1週間後に感染のピークがあった。
  • 潜伏期は2.91日。
  • ヒトヒト感染確認は15例。そのすべてが10歳未満。ただし容易にヒトヒト感染の証拠なし。
  • 症状は咳、発熱、倦怠感。特徴的なのは1/4に眼症状、充血や刺激症状が認められたことで、これはH7やH1N1入院例でも認められた。
  • なぜ豚やヒトでこのウイルスが自由に拡大するのかは未解明。

米国という、ある意味”理想的な環境”で発生したのでこれだけ解明がすすみました。MERSもこういう調子で全貌が明らかになってゆくと良いのですが。。。
ともあれ、H3N2vの流行、大した被害にならぬ範囲で公衆衛生分野の、ウイルス学分野の、臨床分野の、多くの専門家・専門家の卵に研究調査の機会を与え、将来のパンデミック対策に向けた人材養成のチャンスを我々人類に与えてくれたようです。

ソースはCIDRAP
http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2013/09/h3n2v-outbreak-profile-details-risks-pig-exposures

H3N2v outbreak profile details risks, pig exposures

;

 

 


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新たなパンデミック起こしそうなウイルスは32万種ある

2013-09-04 16:19:06 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

今後、新興感染症として人間様を襲ってくるかもしれないウイルスは、あと何種あるのか・・・
推定したら、32万種だという報告。

  • the Indian flying fox で検索
  • 2000匹調査で55種のウイルス検出、うち50種はこれまで未知のウイルス(they ran across 55 viruses, 50 of which were completely new to medical science.)
  • ここから、哺乳類5500種に類推広げると、32万種という数字に。

SARS、MERS,H5N1、H7N9・・・みたいなのが、あと32万、可能性ありとは気が遠くなる話ではあります。32万種”も”あるとみるか、32万種”しか”ないとみるか。この件は米国の一般報道でも出ておりますが、「数百万種じゃなくて32万(ぽっち?)」という書き出しのも目にしますから、人それぞれでしょうか。ウイルス学者になればくいっぱぐれは無いようです(笑)

ソースはexaminer.com
http://www.examiner.com/article/scientists-estimate-320-000-viruses-could-be-waiting-to-be-discovered

Scientists estimate 320,000 viruses could be waiting to be discovered


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肥満と新たなお母さんがインフルエンザハイリスク群

2013-09-03 08:28:57 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

インフルエンザ重症化のハイリスク群の見直しbyカナダチーム。
危ないのは肥満者と新しいお母さんと。

  • インフルエンザり患による重症化の評価。McMaster University in Hamilton, Ont.の報告。
  • これまで言われてきた「5歳未満」「妊婦」「先住民族」は合併症により罹りやすいわかでもなくて、代わりに「肥満」「新たなお母さん」がよりシビアな合併症に罹りやすいと判明(children under five years old, pregnant women and native peoples have historically not suffered excessive complications from the flu. Conversely, new mothers and obese people – two populations not typically regarded as high-risk groups – were found to be more prone to suffering severe outcomes.)。
  • こうしたデータは、たとえばパンデミック時のようにワクチン接種に優先順位をつけねばならない時に、非常に重要になってくる。
  • カナダでは毎年、インフルエンザの重症化や合併症で2000人が入院し2000〜8000人が亡くなっている。

肥満はBMI30で切っているようです。おそらく全国の産業医の皆さんは初夏あたりに実施された検診結果の個別指導に追われていることと思いますが(管理人も昨日、先週とそうだった)、肥満の減量指導には「メタボ⇒脳卒中や心疾患」に加えて「インフル死」という新鮮なことを入れると聞いてもらえやすくなるかなとも思いました。

ソースはthe Globe and Mail
http://www.theglobeandmail.com/life/health-and-fitness/health/study-identifies-new-high-risk-flu-groups/article14053947/

Canadian study identifies new high-risk flu groups Add to ...


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インフルワクチン接種後に異なるウイルスに感染したらかえって症状悪化(H1N2ワクチン→H1N1)

2013-09-01 11:00:12 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

子豚にインフルワクチンを接種後、そのワクチンとは異なるインフルウイルスに感染させてみたら、、接種しなかった子豚よりもひどい症状になってしまった・・・と報告。

  • まったくウイルス暴露歴のない子豚にH1N2ワクチンを接種。接種群。
  • ワクチン接種しないコントロール群を用意。
  • 両群に、H1N1ウイルスを感染させた。
  • 結果、接種群の方には肺炎など重症化。コントロール群の方が軽症。
  • H1N2ワクチン接種により(H1N2に対する)抗体が大量に産生されるが、その抗体はH1N1に対し奏功しないばかりか、かえって肺細胞へのウイルスの結合を助ける結果となっている。
  • 2009年にカナダで騒動になった、「季節性ワクチン接種したらH1N1重症化かも?」騒動の説明になる可能性も。
  • この結果から、現在開発がすすめられているユニバーサルワクチンに対する注意喚起となる。
  • ただし、この結果は、ヒトに対する季節性ワクチン接種を妨げるものではない。(インタビューに対し、季節性ワクチンは受けるべきであると強調している)

インフルワクチン接種していて、別の型のに感染したら、かえって肺炎のリスクを高めてしまうという結果です。ユニバーサルワクチンなどの開発にあたって考慮に入れなばならない知見ですが、同時に、リスクコミュニケーションの難しい知見でもあります。季節性インフルワクチンを接種して、それとは異なるウイルス(たとえばH7N9)に感染したら肺炎になってしまうなら、接種やめとこう・・・と誤解に基づく”嫌ワクチンムード”に油を注ぎかねません。それを見越して、インタビューされた研究者も "people should definitely take them," と強調しているわけですが・・・

ソースはmedical express
http://medicalxpress.com/news/2013-08-vaccination-flu-worse-exposed-strain.html

Vaccination may make flu worse if exposed to a second strain

by Lin Edwards


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H7N9は渡り鳥から水鳥、鴨経由で人間に

2013-08-22 18:58:26 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

H7N9が人間様にやってきた経路の報告。

  • 香港大の報告。
  • H7N9ヒト感染発生地帯にて、サーベイランス、遺伝子解析実施。
  • 少なくとも2回以上の機会に、H7は鴨から鶏に感染し、H9N2と遺伝子再集合してH7N9が出来上がった。( H7 viruses probably transferred from ducks to chickens on at least two independent occasions and that a so-called "reassortment" of these viruses with others called H9N2 eventually generated the H7N9 outbreak virus.)
  • もうひとつH7N7もまた、同様の現れ方をして中国の鳥に感染拡大していることを発見。
  • フェレットへの感染能を有していることも判明し、こちらも将来人間に感染しだす可能性も指摘される。

今年H7N9で起こったような騒動が、H7N7でもひと騒動起きそうな可能性とのことです。自然界には抗えないわけですが・・・

ソースはロイター
http://uk.news.yahoo.com/china-bird-flu-analysis-finds-more-virus-threats-170109056.html#AhTKuIB

China bird flu analysis finds more virus threats lurking


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サイトカインストームが襲っていた09年のH1N1pdm

2013-08-19 09:08:14 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

サイトカインストーム。かつて07〜08年あたり、「H5N1が新型インフルになって襲ってきて日本人64万人犠牲になるかも」と騒がれているピークだった頃、インフル論壇の”流行語大賞”みたいだった言葉です。この単語が週刊誌の大見出しを飾っていたのをご記憶の方も多いでしょう。

 この”サイトカインストーム”が人口に膾炙しなくなって元の医学専門用語に戻った感のこのごろですが、久しぶりに一般報道に登場しそうなことになってきます。2009年H1N1pdmの重傷化例でこれが派手にみられていたとの報告。

  •  H1N1pdmの死亡例50例。肺組織調査。
  • 肺組織のウイルス量ピークは、サイトカインの特に高レベルと相関していた(the peak levels of virus in the victims' lungs correlated with "remarkably" high levels of certain cytokines in the same tissues)。
  • サイトカイン27種中7種で増加。増加していたのは IL-1 receptor antagonist protein, IL-6, tumor necrosis factor-α, IL-8, monocyte chemoattractant protein-1, macrophage inflammatory protein 1-β, and interferon-inducible protein-10 。
  • ウイルス量は第7〜17病日に特に高く、これはmRNA levels of IL-1 receptor antagonist protein monocyte chemoattractant protein-1, macrophage inflammatory protein 1-β, interferon-inducible protein-10,と相関していた。

1918年の起こったことをもとに2008年ころに懸念され世間一般に騒がれていたことが、やはりそもまま2009年にもおきていて、それが2013年に明らかになったということですね。本当に証拠が揃い確かなことが言えるにはこれぐらいの歳月が必要だということでした。

ソースは
Avianfludiary
http://afludiary.blogspot.jp/2013/08/the-cytokine-storm-revisited.html

Saturday, August 17, 2013

The Cytokine Storm Revisited

Am.J.of Pathology
http://www.journals.elsevierhealth.com/periodicals/ajpa/article/S0002-9440(13)00479-3/abstract

Article in Press

Cytokine and Chemokine Profiles in Lung Tissues from Fatal Cases of 2009 Pandemic Influenza A (H1N1)

Role of the Host Immune Response in Pathogenesis

Accepted 24 June 2013. published online 12 August 2013.


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H5N1とH7N9の重なるホットスポットはここだ!

2013-08-18 15:49:15 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

鳥インフルエンザH5N1とH7N9両者の重なるホットスポットは安徽省と浙江省の境界部だ!と報告。

  • 中国東部の安徽省・浙江省境界部がH5N1とH7N9と重なる、ヒト感染の高リスク地帯との報告。
  • これまでのH5N1とH7N9全データを、地誌空間的に分析。結果、ホットスポットはsoutheast of Taihu Lake and south of Jiangsu province but bordering both Anhui and Zhejiang provincesであると結論
  • H5N1感染者とH7N9感染者との接触パターンの違いも明らかに。H5N1感染者では職業的に鶏やその糞尿に直接接触している者が多いのに対し、H7N9では単に生鳥市場を訪れただけのような間接的接触者が多い。

特に要注意地点が特定されました。農村部にて日系企業駐在関係者との関連はあまり高くなさそうですが。
H5N1に比べて”ソフトな”接触者が罹っている点からは、より簡単にヒト感染してしまうのがうかがえ、今後の再発が非常に気になるところです。

ソースはemerging infecrious disease
http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/19/11/13-0815_article.htm

Volume 19, Number 11—November 2013

Letter

Geographic Co-distribution of Influenza Virus Subtypes H7N9 and H5N1 in Humans, China

 


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鳥インフルH7N9がヒトヒト感染するエビデンス

2013-08-07 18:06:22 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

鳥インフルH7N9がヒトヒト感染する・・・というちゃんとした論文はこれが初めてなのだとか。

  • 浙江省CDCチームの報告@BMJ。
  • 5月末時点でH7N9感染者は132例、犠牲者37例。
  • 両者とも犠牲となった家族例を調査。60歳父親と32歳の娘。同一家庭内。
  • 両者とも調査時には重篤でインタビューは困難。
  • 60歳の父親は食材の調達を担当していて、市場に行っていた。娘は居住地域からほとんど出ることはなく、家主の飼っていた2匹の黒鳥以外に接触歴なし。
  • 娘は感染防御を何もしない状態で父親のケアをおこなっており、それから数日後に発症して1か月後に亡くなった。父親と娘から検出されたウイルスは遺伝子的にほぼ一致。
  • 遺伝子的にほぼ一致して、他に感染する経路が無かったことから、ヒトヒト感染。
  • 接触者43例を調査したが、H7N9検出されず。
  • このクラスタではヒトヒト感染と思われるが、限定的であり、持続性はない。
  • 同一血族にうつっていることは要注目。ある種の遺伝的要因で、感染しやすくなるエビデンスもあり(there is some evidence that genetic factors may make some people more susceptible to bird flu. )
  • 感染パターンの観察からは、必ずしも、このウイルスがパンデミックへと至る道をまっしぐらとも言えないと。
  • H7N9の不気味な側面、ヒトに感染する前に鳥に症状をあらわさない点、冬にも再来が予想されることは要注意。

ヒトヒト感染は限定的にある。ステルス機みたいに、鳥の症状なく人間界にやってくる。冬にも再来注意。目新しくはないけれど、しっかり議論されてきています。

ソースThe telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/china/10227315/Evidence-found-in-China-that-new-bird-flu-strain-can-spread-between-humans.html

Evidence found in China that new bird flu strain can spread between humans

Chinese scientists have found the strongest evidence yet that a new bird flu strain is sometimes able to spread from person to person, but they are emphasising that the virus still does not transmit easily.

2:35AM BST 07 Aug 2013

 




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鳥インフルH7N9の薬剤耐性は再現できず(鳥インフルエンザA(H7N9)

2013-07-17 09:25:57 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

鳥インフルエンザA(H7N9)でタミフル・リレンザ耐性・・・というのは以前紹介したところですが、基礎実験ではそれが再現できなかった・・・混沌話です。

  • H7N9では抗ウイルス投与中の症例で耐性検出。
  • 投与中の約35%に耐性と関連する R292K 変異。
  • enzyme-based test では理論的に、この変異に対して耐性が検出されるはずであるが実際にはそうならなかった。

したがって、この方法でタミフルリレンザ耐性を検出するのは不可能・・・と武器の一つが使えないことの証明に。嬉しくないニュースです。

ソースはmedical press
http://medicalxpress.com/news/2013-07-h7n9-influenza-strain-resistant-antivirals.html

H7N9 influenza strain resistant to antivirals, but tests fail to identify resistance

 


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