新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

麻疹流行の影に反ワクチンな民族問題(ロシア語系やユダヤ系やアーミッシュやソマリア)ProMEDの興味深い解説

2019-03-26 16:29:23 | 麻疹/はしか/Measles

世界中で麻疹のアウトブレイクがやまない背景に、麻疹ワクチン接種率の低下があることはすでに報じられてきたところです。でもそれは一律ではなくて、ある種のグループに顕著であると、米国の現状から興味深い考察がProMEDに載っています。

  • ワクチン接種率の低下問題、SNSの影響やフェイクニュースについて盛んに論じられている。これだけなら、フェイスブックからワクチンに関するウソの記述を削除すればよいことになるが、それでは本質的なことが抜けている。
  • 特に注意せねばならないのは、麻疹は国中に均一に流行っているのではなく、特定のグループに多いことで、tight-knit and traditional に注意。
  • たとえば、ワシントンでは、特にロシア語を話すウクライナやロシア系に多い。これらのグループはもっとも接種率が低い。
  • NYでは、接種率の低いユダヤ正統派(undervaccinated Orthodox Jewish)に多く、304例がこのグループであった。
  • さらに以前にはオハイオ州のアーミッシュ、ミネソタのソマリア系など。
  • こういったtight-knit グループに対しては、特に公衆衛生的に注目を注がねばならない。いったん流行が始まれば爆発的なことになる。これらのグループは共通の価値観と信念を共有し、頻繁に交渉がある。近年おこった26のアウトブレイク中、実に12回はこうしたグループに起こっている。その流行は大規模になり、最近の感染者数の75%を占める。
  • これらのグループは共通言語を話し、共通のニュースを読む。フェイスブックもさることながら、こうしたグループのリアルのネットワークこそ要注意。
  • ワシントンの麻疹は、欧州への旅行者により持ち込まれた。ウクライナではワクチン接種率は31%しかなく、昨年56000例だったのが、今年もうすでに28600例になっている。こうした持込みが、接種率の低いコミュニティに入ってしまえば、燎原の火のごときことになる(it can spread like wildfire because measles is so incredibly contagious)。
  • 2016年の研究では、ウクライナ生まれの親の子供の接種率80%、同ロシア生まれの親の子85%、対してアメリカ人いっぱん92%という数字だった。

奥が深い話。多民族国家では、ある特定の民族やグループにワクチン懐疑が特に強く、すなわち特に接種率が低く、爆発的に広がるという現実。日本には、「特にワクチン懐疑が強い民族」というものがないのが幸いではありますが、それでも、三重の宗教施設にて集団感染が発生したように、単一民族の中においてもワクチン懐疑の強いある特定集団というものが存在し麻疹流行に輪をかけるかもしれないこともわかってきたのが今年であります。

ここらへん、リスクコミュニケーションにあたっても難題となりますが、把握できる限り濃密なアプローチが必要ですね。

ソースはProMED
http://www.promedmail.org/post/6382433

VOX
https://www.vox.com/2019/3/19/18263688/measles-outbreak-2019-clark-county

Why the Washington measles outbreak is mostly affecting one specific group

The CDC says 75 percent of recent measles cases are linked to tight-knit communities.


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日本の麻疹、2019年輸入元の顔ぶれ

2019-03-05 11:52:54 | 麻疹/はしか/Measles

2015年に清浄国認定された日本に麻疹が入ってくるのは、どこの国からか?

感染研のグラフ、貼っておきます。2019年1月の備忘録。

従来、「麻疹×輸入元」とかのキーワードで検索すれば、インドネシアとタイが大抵顔を出していましたが、2019年1月では

フィリピン>ベトナム>ミャンマー

の順に顔ぶれが変わっています。関連サイトは

1.フィリピン
https://www.rappler.com/nation/224156-measles-cases-continues-rise-doh-proposes-no-vaccination-no-enrolment-policy
http://outbreaknewstoday.com/philippines-measles-outbreak-tops-11000-cavite-declares-state-calamity-95635/?fbclid=IwAR1BtKecckJVtVzTdGoapsAy05pnx3iJRnHXYIXFymDp5SvqpI3LTQ8lVHk

2.ベトナム
https://www.viet-jo.com/news/social/190216111617.html?fbclid=IwAR3WknzfHyR6rLKxHbQ8Yh85yvQYd-keHQJ-KQCWxxTI45Qb-CBUaWLNt6Y
http://m.sggpnews.org.vn/health/alert-to-diseases-after-tet-holidays-80212.html

3.ミャンマー
https://www.nytimes.com/2016/08/07/world/asia/myanmar-measles-outbreak-kills-40-in-remote-villages.html

https://www.mmtimes.com/opinion/24976-mobilising-against-measles.html

https://www.mmtimes.com/news/supplementary-measles-vaccination-yangon.html

https://www.mmtimes.com/national-news/5797-measles-mortality-in-sharp-decline.html


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炎上するフィリピンの麻疹、デングワクチンの失敗が尾をひく憂鬱

2019-02-25 20:04:42 | 麻疹/はしか/Measles

フィリピンの麻疹、感染者数も死亡者数も、報道のたびにうなぎのぼりの炎上状態がとまらぬ中、保健大臣が「祈っている」と述べたりしているのは前回紹介したところです。

さらにマニラ首都圏にも入り、「麻疹ワクチンを打っていなければ学校に入れない(教育を受けさせない)」という原則を打ち出しましたが、そこで議論が巻き起こっているのが、保護者たちのワクチンに対する陰性感情。

その源のひとつが、昨年のデングワクチンDengvaxiaの座礁。接種後に別タイプのデングにかかるとかえって重症化してしまう・・・という事象で中止に追い込まれたトラウマが、麻疹ワクチンの学校必須化の支障になっているという話。

思わぬ方向から伏兵があらわれています。

https://www.rappler.com/nation/224156-measles-cases-continues-rise-doh-proposes-no-vaccination-no-enrolment-policy

 


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フィリピン麻疹、その凄惨な数字、災害宣言発出!

2019-02-23 09:03:24 | 麻疹/はしか/Measles

フィリピンに麻疹が流行っている・・・という話は、渡航医学にかかわっていれば何度となく耳に入ってきている話かとは思いますが、あらためて見てみると、災害非常事態宣言まで発出されるその壮絶な数字に息をのみます。「50 deaths in four days」だとか「declared a state of calamity」だとかいう記述から伝わってくる凄みに震えます。

  • わずか4日間で50例死亡! 3000例増(an increase of 3,000 cases and 50 deaths in four days.)
  • 今年にはいって11459例、死亡189例。
  • 保健大臣は「麻疹流行がおさまるのを願っている。祈っている。でも増加し続けている。月までは無理だろう」と(We are hoping and praying for the measles outbreak to end,)
  • 麻疹ワクチンは集団接種も個別訪問接種も実施(implementing massive immunization drives  and conducting door-to-door immunizations)。
  • Caviteでは麻疹の感染増を理由に災害非常事態宣言が発出された(declared a state of calamity due to the increasing number of measles )

う~ん、ワクチン戸別接種まで必死にやってるけど、4日間で50人亡くなり、保健大臣が「祈っている」とアナウンスする。非常事態宣言発出。壮絶のひとことです。我々も祈りましょう

http://outbreaknewstoday.com/philippines-measles-outbreak-tops-11000-cavite-declares-state-calamity-95635/?fbclid=IwAR1BtKecckJVtVzTdGoapsAy05pnx3iJRnHXYIXFymDp5SvqpI3LTQ8lVHk

Philippines measles outbreak tops 11,000, Cavite declares state of calamity


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現地で実感。まだまだ日本に麻疹が入ってくる実感

2019-02-20 02:57:07 | 麻疹/はしか/Measles

いまヤンゴンにいます。今朝の新聞を開いてみたら、一面トップがいきなりこれです。

ヤンゴン郊外複数個所で麻疹のアウトブレイクが確認され、政府がMRワクチン接種キャンペーンをやってる報道。

ヤンゴン郊外7か所の流行で、なんとか食い止めるべく、ミャンマー政府の接種キャンペーン(この国でもMMRじゃなくてMRみたいです)。

これで感じるのが、日本への麻疹が持ち込まれる火元の国として認識されるインドネシアやタイ以外にも、まだ知られざる国がまだまだあるなあという事実でした。ミャンマーの麻疹は14日付ProMedに記載はあるものの、それ以降は載ってきていません。

ここのところ、日本国内では、「AKB握手会」だの「あべのハルカス」だの、誰でも知ってるボキャブラリーとともに麻疹が報じられることが頻回です。2015年に排除認定うけてる日本の麻疹例は(理論的に)すべて海外からの持ち込みのはずですが、その火元・供給源になる国は、有名どころのインドネシアやタイ以外にも、そしてここ数週に割とよく聞くフィリピン・ベトナム以外にも、まだまだあるなあというのが実感。

いま管理人がおりますミャンマー現地では、これから実習生や外国人労働者として日本へ送り出すべく、政府も人材派遣会社もそれぞれに動いています。つまり、日本とのヒトの行き来も大いに増える実感が感じられるのがヤンゴンです。

今後、突然の麻疹報告がますます頻回化してゆくのか、頭の中に置いておくべきことでしょう。


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「先進国の麻疹問題」あちらでもこちらでも

2019-02-07 09:35:53 | 麻疹/はしか/Measles

いったん清浄国認定された場所に、麻疹の輸入例⇒大きく報道という、先進国の麻疹問題。あちらでもこちらでも。イタリアの様な惨事になってしまった国もあれば、ボヤ段階の国もあれば・・・人生いろいろ。

 


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台湾の麻疹と当局が注意呼びかけてる国

2019-02-04 11:51:31 | 麻疹/はしか/Measles

昨年2018年、台湾人観光客が沖縄の麻疹感染源だった・・・という騒動、なんとなく台湾≒麻疹のイメージが広がってしまいましたが、あのケースは直前にタイ旅行でした。台湾は麻疹の輸出というより、輸入側なのですが、ではどこから入ってくるのか。

今回発表2例はベトナムからと、渡航歴不明の1例。

その前の6例は、ベトナムとフィリピン。

台湾当局が注意呼びかけているのが、「 mainland China, Vietnam, Thailand, the Philippines, Indonesia and India, Europe, in particular Ukraine, Serbia, Romania, France and Italy; South America–Venezuela and Brazil; Africa–Madagascar, Nigeria and the Democratic Republic of the Congo and the United States(コピペ)」という組み合わせ。

ご注意を

 

http://outbreaknewstoday.com/taiwan-reports-two-additional-measles-cases-22712/?fbclid=IwAR0X40yi84g57a2x6mL0seyQVfmwnUY4yRWiufQYWWmoDu9nNpoWjJ71ffE

Taiwan reports two additional measles cases

February 2, 2019

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今日もいっぱい、グローバル麻疹があちこちで

2019-01-07 11:30:00 | 麻疹/はしか/Measles

世界中でもぐら叩きのように出てくる「先進国の麻疹問題」。本日はとりわけタイムライン上で目立ちます。

欧・米・オセアニア。2019年の「先進国の麻疹問題」悩まされる年になります。

日本でもひと騒動ふた騒動ありましょうが、これから、(一般人が)思いもかけない国から入ってくることもあろうかと思います。フランス・イタリアほか、ここに挙がったような国々も頭の片隅にインプットしてまいりましょう。


 

 


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麻疹(はしか)は世界中で3割以上も増えている!とWHO

2018-12-03 13:50:46 | 麻疹/はしか/Measles

ここ最近の麻疹(はしか)、「〇〇国で麻疹発生(〇〇には一旦清浄国認定を受けた先進国の名前が入れ代わり立ち代わり入る)」報道が目立ちます。時々は反ワクチン(イタリア政権、自閉症説、etcふくめ)、またある時は持込み(本家ディズニーランド、沖縄、関空、ジャスティンビーバー・・・)とともに語られますが、そもそも、世界中で大増加している!との報告。

  • ワクチン接種率の問題もあり、2017年から麻疹が世界中あらゆる地域で激増しているとWHO報告updated disease modelling data。推定で11万人の死亡例が出ている。
  • 2000年以来の17年間で2100万例以上の生命がワクチンで救われたが、症例数は2016年以来で30%も増加した。特に増加が激しいのが米大陸・東地中海・欧州(The Americas, the Eastern Mediterranean Region, and Europe)管轄域。唯一西太平洋(Western Pacific )でのみ減少した。
  • 麻疹の急増は極めて憂慮すべき事態で、なかでも、排除に至った国、もう少しで排除に至る国での増加に憂慮。いますぐ、ワクチン接種率をあげる努力を緊急におこなわなければ、そして接種がせきない年齢の子供たちを認識しなければ、何十年にもわたってやってきた努力が水泡に帰しかねない。
  • ここ数年、ワクチン接種率は85%近辺で停滞してきた。これはアウトブレイクを防ぐのに必要な95%よりはるかに低い数字。
  • 欧州における陰謀論や誤った理解、ベネズエラにおける保健システム崩壊、アフリカにおける静寂性と低接種率が相互して世界中の麻疹増加に関与している。いまの戦略を変えねばアウトブレイクからアウトブレイクへもぐらたたきを続けねばならなくなる。
  • 最近のアウトブレイクに反応してゆくなかで、ワクチン接種に持続的な投資をおこない、ルーチン接種への努力をおこなってゆくことを呼びかけ。戦乱地を含めた貧困地に焦点をあてて。
 昨年も今年も、輸入例の発生が大きなニュースになった日本ですが、WHOの西太平洋(WPRO、日本が含まれるエリア)は世界唯一の減少エリアということで、つまり、世界の状況はさらにもっと輪をかけて深刻であるということです。
ワクチン自閉症説に首肯する大統領がいる国、反ワクチンとなえる党が政権をとってしまった国、入れ炭いれがなり立てる反ワクチン団体の国、、、少なくともそういう事象がない日本なのに、それなのに、接種機運がもりあがるとワクチン不足が明らかになってしまう日本、なんとかならないかなあ・・・

 

  

http://outbreaknewstoday.com/measles-cases-increased-30-percent-worldwide-2016/?fbclid=IwAR2ZtgVBVRJWmugO3xgAtAgVlDhPe5YOiommUT2TnG5_jBAo2HFkkOURdaY

Measles cases increased by more than 30 percent worldwide from 2016: WHO

November 30, 2018
 
 

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欧米の麻疹大流行、実際のところ

2018-08-22 12:45:59 | 麻疹/はしか/Measles

欧米で麻疹が大流行してる!と日本の一般報道にも載りだしましたが、実際のところの現状はどうなってるのか。WHO、ProMed、Forbesから

  • (欧州の件)WHO欧州管内で感染者数は今年にはいってもう既に41000人、これは2016年1年間で 5273例⇒2017年 同23927例に比べ爆発的増加。今年の死亡例もすでに37例。2016年に記録的に低下したあと、跳ね上がっているのが現状。7カ国(France, Georgia, Greece, Italy, the Russian Federation, Serbia and Ukraine)ではそれぞれ1000例以上。管内53か国中43カ国で麻疹の、42カ国で風疹。
  • 不適切なサーベイランスとワクチン接種率が低いことも一因。国によっては12カ月以上にわたって発生が続いている国もあり、ステータスはendemicに逆戻り。ワクチン接種うけていない人は、どこにいても感染可能性。
  • あらゆる年齢層についてワクチン2回接種、接種率95%以上が必要。欧州では2016年の88%から2017年90%にあがったが、地域によって不均一であり、95%以上達成のところもあれば70%以下のところもある。
  • (米国の件)米国では、麻疹の大幅増は、移民のせいであると信じる人が多い。しかしながら、それは誤っている。真相は、米国人が麻疹流行地に旅行し持ち帰ってくることが増えているのが実際のところである。
  • 米国におけるワクチン接種率の低下も重要。社会に感染蔓延させないために90-95%以上の接種率が必要だが、低下。

概略、ワクチン接種率が(95%に)足りないから、麻疹がここ最近になってガンガン増えてきて、交通量の増大、サーベイランス不備で現状把握が十分でないことが拍車をかけている。そして、増えてきた麻疹例をみて、移民のせいだと誤った誤解も増えている。というのが先進国共通の悩みになりつつあります。

 

http://www.euro.who.int/en/media-centre/sections/press-releases/2018/measles-cases-hit-record-high-in-the-european-region
Measles cases hit record high in the European Region

https://www.forbes.com/sites/judystone/2018/08/20/why-will-we-see-more-measles-public-health-can-answer/#3c8e13ddd483

Why Will We See More Measles? Public Health Can Answer

 


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