新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

照会・お便りetcはこちらへどうぞ
opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

大臣に聞いてみた、麻疹とジカ、ミャンマーの現状は?

2016-09-25 01:50:54 | 麻疹/はしか/Measles

いまミャンマーに来ています。科研費で調査研究に通っているのですが、今回はさらに加えて、メンタル系の学会(4th Myanmar Mental Health Conference)で招待講演を依頼されるということが追加、日本の産業医制度やストレスチェック制度や過重労働対策の長時間残業の医師面談などなど紹介してきました。そしてディナーの席に就くと、この国の保健スポーツ大臣(Myint Htwe氏の隣の隣席でした。招待講演だから上座に通されるまでは想定内でも、大臣と一緒にご飯を食べるというのは想定外ですね。

で、せっかくなので、メンタル系のお話のほかに渡航医学系の話・・・麻疹とジカウイルス感染症・・・をちょっとふってみました。
政権交代で軍出身大臣が退陣するとともに就いた、Johns Hopkinsで学位をとった医師で、かつて17年間保健省に務め引退していたところを新政権に呼び戻されたとのこと。
そんな背景もあり、打てば響くように答がかえってきました。

  • ジカウイルス感染症は、臨床症状から疑い例はあった。PCRを実施したが、1例はデング熱、もう1例は(よく聞き取れず)。で、not yetだ。
  • 麻疹は先だってもアウトブレイクがあった。ザガイン州。 隣接するインドで流行のものと遺伝子型が一致した。インドから感染症が入ってくることは再々ある(感染症的には、インドはやや迷惑な隣人?)
  • 麻疹はワクチンで対策できる。が、国土のなかには非常にアクセスの大変なところがある。

つい先だって日本に行ったということで(神戸の保健大臣会合のことかな)、日本の印象は

  • 塩崎厚生労働大臣は非常にナイスである。また、スポーツ大臣にも会ったが(馳?丸川?)気に入った。
  • 日本人は名刺を交換する習慣があるね。私の名刺交換するための行列ができたのはとても面白い光景だった、と笑う。かくいう管理人も名刺交換させていただいたのですが、こちらから差し出すと、どこかからかサッとお付きの者が現れて大臣の名刺を渡してくれました(常にじっと見ているのですね)

好々爺とした話しやすい大臣でした。薬指にはすごく高価そうな指輪が印象に。
この国の保健上の問題は(メンタル系含め)的確で、この先、ミャンマーの抱える保健問題が多少なりとも改善してゆくことが期待されます。 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

EUにみる麻疹ワクチン接種率と発生数の関係

2016-09-09 17:52:18 | 麻疹/はしか/Measles

麻疹騒動に関連して、ECDCサイトを見ていました。気がついたこと。
ワクチン接種率が先進国において低下していること、麻疹コントロール維持のため施主率95%あれば等々、いわれているわけですが、ECDCの地図を見ているとおおむねあてはまるものの、交通量など他の要素も加わっているようです。

こちらの地図で濃いグリーンのついているのが、接種率95%以上の国。スペイン・ポルトガル・ハンガリー・クロアチア・チェコ・スロバキア
薄いグリーンは95%を割り込み85-94%。UK・ドイツ・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ・オーストリア
薄いブルーは85%も割り込んだこころもとない国。フランス

ここまででも、「国のイメージと比例しない接種率」は意外な感じを受けますが、実際の発生数をみると、大きな赤丸がついているのはUKとドイツ。(イタリアもついているが接種率データがない)

これらからわかるのは、
1.一見最先端と思われる国は、必ずしも接種率が高いわけではない。移民や出稼ぎ等々で流入が多くて徹底しきれない?

2.接種率95%以上の国ではやはり麻疹が阻止できているが、これを割り込むと、阻止できている国と出来ていない国が混在している。→ 交通量、外から人間の流入が多い国が発生数も多い

我々日本も、今後、LCCの発展や観光政策の浸透とともに人間の流入がますます増え、麻疹輸入例のチャンスはますます増えると考えておくべきでしょう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

MRワクチンの在庫状況を(オモテから)尋ねてみた状況(2016.9.7)

2016-09-07 17:25:59 | 麻疹/はしか/Measles

関空麻疹、ジャスティンビーバー麻疹、千葉麻疹・・・と次々報道され、管理人含め多くの人々が「ワクチン2回接種を!」と活字で電波で呼びかけている今、MRワクチン在庫はどんな状況になっているのか。

メーカー各社に聞いてみました。
各社とも、それぞれのHPに載っている「お問い合わせ先」にかけるという、正面からオモテの方法での照会です。
いずれも所属と名前は名乗って、「MRワクチンの在庫状況はどんなですか?」と単純なクエスチョン。各社とも最初に電話に出た人が即答できましたので、同様の照会が来ているようですが、いずれも待ち時間なくすぐ通じたので殺到という程でもないようです。

調査日時は9月8日16:30時点。

ジャパンワクチン:「欠品しております」
北里:「在庫がない状態です」
武田薬品:「出荷調整させていただいております。特約店に割当てしております」
阪大微研:「こちらは造ってるだけです。販売は田辺三菱さんです」
田辺三菱:「急にご注文が増えましたので弊社では出荷調整をさせていただいています。物はありますが品薄になってきています」

という状況です。
特約店がどこかとか、出荷調整で売ってもらえてるのはどこかとか、ウラが必要な情報のルートは持ち合わせておりません。あしからず・・・


 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麻疹のコプリック斑を見つけたのはこんな髭もじゃのオジサンだった

2016-09-07 14:30:34 | 麻疹/はしか/Measles

これは単なる雑談。このところの麻疹騒動で、いくつかのメディアにお応えしているなかで、

Q.口の中にぶつぶつが出来るのですか?
A.はい、初期に頬粘膜に、コプリック斑って、ちょっと可愛い名前のぽつぽつが出来るのですよ・・・

なんて言いながら、ふと思いました。これ発見した人はどんな人だろうかと。コプリックなんて、とっても可愛げな名前なんだけれど。

じゃーん、こんな髭もじゃのオジサンでした(笑)

ヘンリー・コプリック。米国の小児科医。
1858年生まれ。NY大に学び、ライプチッヒ・ウイーン・プラハで学位取得。
NYに戻り、ベルビュー病院(Assistant professor)、グッドサマリタンズ

コプリック斑を見つけたのは1896年

ソースはWikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Henry_Koplik

 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麻疹はどの国から入ってくるのか ~麻疹の渡航医学的おさらい~

2016-09-03 23:39:10 | 麻疹/はしか/Measles

2015年にWHOから麻疹排除宣言をうけた日本。このところの麻疹騒動の元の元は輸入例ということになりますし、今回の騒動が収束後も、また同様のことは発生してゆきましょう。 では、麻疹の輸入例はいったいどこの国からやって来るのか。WHOページからおさらいしてみましょう。


ジャスティンビーバーのコンサートに冷や水浴びせ、関西空港が妙なクローズアップされかたをしたり・・の源は、ズバリこの地図のとおりです。世界の麻疹分布(出典WHO)

 

 ジャスティンビーバーの件はインドネシアと報道されちゃっていますが、最も濃~い焦げ茶色がついているのはインドネシアの他にも、インド・中国・マレーシアが焦げ茶色組です。(日本との往来が少ない国では、スーダン・南スーダン・エチオピア・ナイジェリア・トーゴが焦げ茶色組)。台湾に焦げ茶色がついているのは中国のいちぶという意味?あと、フィリピンには焦げ茶色の次のランク、赤色がついているのもいやらしいところです。

http://www.who.int/immunization/monitoring_surveillance/burden/vpd/surveillance_type/active/measles_monthlydata/en/

こちらはWHOの地域事務所ごとの内訳。
絶対数でみればアフリカの存在感はかすんでしまい、西太平洋と南西アジアがダントツ。 日本との往来の多い国々が世界でも最高ランクということです。これが現実。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麻疹パニックになってきたUSA(感染者が特急列車に乗ったら新聞沙汰!)

2015-02-02 20:51:54 | 麻疹/はしか/Measles

ディズニーランドに端を発した米国の麻疹騒動、夢の国を出て、二次感染三次感染の話題になってきていますが、感染者がアムトラックの特急列車に乗っていたことが新聞沙汰になる、パニックの様相を呈し始めています。

  • NYからアムトラックの特急列車に乗った大学生・・・が判明し、保健当局は接触可能性のある乗客に対して症状に注意呼びかけ。
  • The Bard College の学生、ペン駅から1月25日午後1:20発283列車に乗車。この学生の在学していた大学では、ワクチンクリニックを開設して接種に追われた。
  • この学生に接触した可能性があり、ワクチン未接種か、あやふやな人は特に症状に注意するよう呼びかけ。
  • 麻疹は感染性高く暴露から数日間で症状出現。10人にひとりは耳鼻科的感染、20人にひとりに肺炎症状。1000人に1〜2人は死亡する。
  • ディズニーランドランドに端を発した感染は、14州とメキシコに拡大。
  • 今年にはいってNYでは3例確認。

感染者が何月何日の〇〇列車に乗車していたので同乗の乗客は注意されたし。
管理人にとって、2003〜04年の中国現地報道を思い出す話、まったくこの通りのことが報じられていました。SARSやEVD並みのヒートアップです。

「いつもの米国」といえばそれまでですが、こうやって盛り上がってゆくのでしょう。

ソースはUSA today
http://www.usatoday.com/story/news/nation/2015/01/31/health-officials-ny-amtrak-passenger-had-measles/22653881/

Health officials: N.Y. Amtrak passenger had measles

Jane Lerner, The (Westchester County, N.Y.) Journal New 12:59 p.m. EST February 1, 2015
Amtrak Acela 2038 @ Newark Penn Station. Photo taken by Brian Weinberg, 10/23/2005.

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麻疹ワクチン打たせないトンデモ親は診ません(米LA)

2015-02-01 22:45:48 | 麻疹/はしか/Measles

本家ディズニーランドを核に麻疹感染が拡がる米カルフォルニア、LAの小児科医が「麻疹ワクチンうけてないケースはお断り」と掲示し、賛同の声があがっているという報道。

  • Dr. Charles Goodman。診察室およびフェイスブックに明示。子供にワクチン接種させない親の子供は診ませんと。
  • その子供のリスクはもちろん、待合室で接触する他の子供のリスクも考慮した措置。
  • これに対して他の医師も追随する動き。
  • 米国では、「ワクチン打ったら自閉症」デマの影響もあり、接種率が低下してきている。
  • これは、過去15年間で最悪の麻疹流行を受けたもので、先月から少なくとも98例の報告がある。その多くはディズニーランドがらみ。

ディズニーランドのインパクトもこれあり、米国の麻疹騒動はヒートアップしています。ワクチンと自閉症の関連の論文はもちろん取り下げになっていますが、いまだに反ワクチン運動に利用されています。そして無邪気に信じてしまう親がいまだに一定数棲息している現実。

かの国の報道も、それを訂正してワクチン受けるよう呼びかける方向にはありますが、まだ道のりはあるようです。

ソースはstartribune
http://www.startribune.com/lifestyle/health/290249831.html

The doctor won't see you now: Some physicians opting to drop patients with anti-vaccine views

  • Article by: ALICIA CHANG , Associated Press
  • Updated: January 29, 2015 - 6:46 PM

また、1歳未満はMMRが接種できないこともあり、感染すると28日自宅隔離を要請されたりするのを切り口に、麻疹の恐ろしさを啓発する記事なども出てきています。

http://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2015/01/29/why-this-mom-is-so-angry-at-the-anti-vaxxers/?tid=sm_tw

Why this baby’s mom is so angry at the anti-vaxxers

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麻疹がある先進国はどこ?

2015-01-20 08:19:12 | 麻疹/はしか/Measles

日本の感染症業界で麻疹の話といえば「日本は麻疹輸出国。あな恥ずかしや恥ずかしや」という文脈です。それはそうなのですが、先進国で麻疹があるのは日本”だけ”のような気がしてくるのも事実。

ProMeDに麻疹のアップデート、そこに挙げられていたのは、このような国々。
途上国もあり、本場のディズニーランドもあり。意外なところで燃えているものですね。(ディズニーランドは別項で)

In this update
Africa
------
[1] Nigeria (Adamawa): IDP camps

The Americas
------------
[2] USA (Davison County, South Dakota)
[3] USA (Sonora, California)
[4] USA (Disneyland, California)
[5] USA: multistate ex California, more cases
[6] USA (California): update

Pacific
-------
[7] The Philippines

ソースはProMED
http://www.promedmail.org/direct.php?id=3101013

 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする