前項(D-①)で、オタマジャクシ状の波頭に覆い被さる表現について、琴平・松里庵工房との関連が深いことを画像を通して眺めた。波(波頭・波しぶき等)の採用やその表現は、刺繍作品においては主役を引き立てる場面の「余白処理」に近い作業ではないかと思う。そのような余白の部分に、工房の大きな特徴が散りばめられているのだと思う。本稿では<のこぎりの歯状の波しぶき>を熟視してみたい。オタマジャクシ状の波頭よりも、鋭角的な波しぶきに工房・松里庵の特徴が籠められているように思う。
<衣裳側>
・肥土山(鷹の四天)
・中山(鷹の羽織)‥裾部分に鋭角的な波しぶきが、上部にオタマジャクシ状の波頭が見える。
・中山(獅子牡丹の四天)
・小海(龍と須弥山の四天)
<太鼓台側>
・詫間町志々島(波千鳥の幕)
・馬路(海女の珠取り幕)‥海女の周囲をぐるりと波しぶきが囲い、悪龍から逃れようとする緊迫感を表現している。
・丸亀市塩屋西(源頼光主従、大江山行の幕)‥幕は古くて判読しにくいが、鋭角的な波しぶきは、洗濯する女性の下に見えている。
・豊浜町の席船(鷲の見返り幕)
(終)
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