最後の旅を始めよう

-黒の英雄譚・零-

『初めての金縛り』

2007年10月24日 | ツレズレ日記
最初に言って置きます。
ここに書いたコトは…、
あの夜、私が体験した本当にあった出来事です…








あれは、
今となっては、一昨日の晩の出来事ですが…


帰宅した私は、
激しい頭痛のせいで、夕飯の準備をする気力もなく
早々とベットで横たわっておりました。

体が鉛の様に重く、
そのまま、痛みとまどろみの狭間で意識がモウロウとなって、
いつの間にか世界は、グレーに成って………










どれくらい時間が経ったでしょうか…
気が付くと、

『 ダン ダン ダン !』

…と言う音で私は目が覚めました。

「いつの間にか寝ていたのか…」
目を擦りながら、体を起こす。

『 ダン ダン ダン !』

音は、まだ続いている…
いったい、何の音だろう、

どうやら玄関の方から聞こえてくる…

『 ダン ダン ダン !』

誰かが、扉を凄い勢いで叩いている…
ワンルームのアパートだと、玄関からする扉を叩く音が、
恐ろしいほど部屋全体に響きわたる。

『 ダン ダン ダン !』

…どう考えても、この状態は普通じゃないっ、
何処かで、火事でも有ったのか?

いや…、
それなら、「火事だー」などと
叫ぶ声が聞こえてきてもおかしくはない…

それに、扉を叩く音以外は、静かなもので、

まるでコノ世界に、
自分と扉を隔てて向うに居る人間以外は、誰も居ないみたいだ…

『 ダン ダン ダン !』

もしかして変質者が、扉を叩いているのか?
そう思った、瞬間、
ドアに鍵をかけるのを忘れていた事を思い出した。

「まずい、
 外に居るヤツが中に入って来るかもしれない…」

そう思った瞬間、
不安は、現実と成ったのです。

ドアノブが嫌な音を立てて回ると、
凄い勢いで扉が開き、
ソイツは、唸りを上げ、私の居る部屋へと押し入ってきたのです!

いやに、大きな頭をした小柄な男で、
老人とも中年とも取れない顔が口を大きく開けて
言葉に成らない声をあげながら、こちらに、向かって来たのですっ!


「うわぁぁぁぁあああ!!」


もう、無我夢中でした。
飛び掛ってきた相手に対して、布団を前に構え体当たりして、
相手を床に倒すと、そのまま馬乗りに、
布団ごと相手を羽交い絞めにして、動きを封じ…

相手の自由を奪った体勢で、

「だれかぁぁぁぁ!!!」

と、叫んだ、助けを叫んだ……
















…そこで、目が覚めたのです。

「夢…」

シンと静まる部屋には、
つけっぱなしにしていたテレビだけが音を発している。

もちろん、
ダンッダンッと、扉を叩く音は無い。


「ハァ、なんだ夢か…」

ふう、と胸をなで下ろす。

「そうか…
 …夢だから『中に入ってきたら…』と思った瞬間、
 本当に成ったのか。」

…と、勝手にナットクしつつ…


でもすぐにドアの鍵の事が頭をよぎる。

「俺、ちゃんと鍵、閉めたっけ?」


知らない人間がいきなり自分の家に押し入ってくる…
その恐怖は、尋常ではアリマセン。
きっと、この恐怖は体験しないと解らないでしょう…

それも、私は今さっき、その恐怖を体験したばかりなのです。

たとえ、夢だとしても…


「まずは、戸締りを確認しよう…」

そう思って、体を起こそうとしたのですが、


 でも…、


…動かないのですよ、体が。

「あれ?なんだこれ?」

もう一度、試してみる。
ダメだ…、いくら力を入れても動かない…

もしかしてコレが…


「 金 縛 り か ! ? 」


経験した事のある人は、解るでしょうか?
なにしろ全然、体が動かない。

動かそうとすれば、ちゃんと筋肉は流動し
体が全く言うことを聞かない訳ではないのですが…

何かに押さえつけられているような…
でも、重さを感じる訳ではなく、
例えるなら…、
空気がコンクリートの様に硬くなったみたいな、そんな感覚です。

「さっきまで、コチラが押さえつける立場だったのに…」

先ほどの夢の光景が蘇る…

マズイ…
そんな、体が、動かないなんて。

「今、あんな風に変質者が押し入ってきたら、
 身を守ることなんて出来ない…」

せめて…
なんとか、戸締りの確認だけでもと思い、
目だけを動かし、扉の方を見ようと試みたのですが…



…すると、
思ってもみない恐怖が、又しても私を襲ったのです。


「誰かイル!!」

信じられない事に、視界の端に、人影が見えるのです…
白い人影が…

場所は、ちょうど私の足元。
焦点が合わないせいか、ボヤけて見えるソレは、
ハッキリ顔が見えないのに、コチラを見下ろしている様でした…


なんだ?コイツは?
変質者?幽霊?体が動かないのはコイツのせい?

なんとか体を動かし、
その白い人影が、何なのか確認しようとするものの…
体は全く言うことを聞かない…

自分の体が動かないっていうのは、
こんなにも、ジレッタイものなのだろうか…



「チリン、チリン、」

…と、鈴の音がする…
最近、よく庭に姿を現す飼い猫だ…

マッタク…
ネコの手も借りたいって言うのはこの事だ…

SFやファンタジーなら、
ここで、このネコが不思議な力で助けてくれるのでしょうが…

実際はそんな上手い話は無く、
私の体は自由になることは無ありません。

それだけでは無く、
白い影は、私の方に近づいて来るのです。

マズイ…何とかして、
体を動かせるようにしないと
何が起こるかわからない。

なんと、してでも…
コノ金縛りを解かなくては…

そう考えつつも、焦るのは頭の中だけで、
体の自由は、相変わらず…


そんな、事をしている最中も、
白い影は近づいてくる…
もしかして、このまま体が乗っ取られてしまうのではないか…

もう、影はすぐ其処まで迫っている。

「 う わ ぁ ! ! 」



と、叫んだ瞬間…、
我に返る…



デジャヴの様な光景が目の前に広がる…

シンと静まる部屋…

つけっぱなしにしていたテレビ…

まるで、何事も無かった様に静かに時間が流れている。



動く…
体の自由を縛るものは、もう何も無かった。

起き上がろうとすると、
頭痛が襲う、体も鉛の様に重い…

あれは…
あの金縛りも、また、夢だったのか…?






「チリン、チリン、」

鈴の音…?
あの飼い猫が来ている…

そういえば、
テレビも、夢と同じ番組をやっている…

あれは、いったい…
本当に夢だったのだろうか?







<なんだ…、夢か…、夢オチかぁ…
コメント (2)
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