「U-ボート(ディレクターズ・カット)」
優に3時間を超える「大作」。
しかし、大作の割には、出てくるのはU-ボートの狭い船内と海面の映像でおおむね九割。
それでも見ているこちらを飽きさせない演出とカメラワーク。そして「なかなかこれは本物っぽいねぇ」と思わず呟いてしまう「U-ボート船内」の様子(実際は、1850万ドルの制作費をつぎ込んで、「実物大レプリカ」を作ったというから、それはそれでびっくり)
ネタバレあります・・・。
ユルゲン・プロホノフ演ずるU-ボートの艦長。渋い。ニヒルだ。ストーリーの緊迫感を、彼の眉間のシワと表情でもってキープし続ける。さすがだ。
物語の主役であるこのU-ボート「U96」はフランス大西洋岸のラ・ロシェルを出発。おそらくビスケー湾近辺で、連合国側の輸送船の撃沈を目的としていたものと思われる。
しかし間もなく、艦長はどういうわけか駆逐艦との勝負という“暴挙”に出る。
(駆逐艦は、U-ボートのような潜水艦を破壊沈没するために作られたいわば“潜水艦殺し”のエキスパート)
このあたりのシークエンスで、ペーターゼン監督は、U-ボートに対する「駆逐艦」の脅威の程を、映画を見る者にまず示したかったのではないかと思われる。
この頃の駆逐艦の爆雷は、まだ旧式なので(新式は「ヘッジホッグ」と呼ばれる)駆逐艦がU-ボートの「真上」を通過しないと爆雷としての意味がない(下に落としてドンッというタイプ)
映画ではまさにその爆雷を受けるU96の船内が生々しく描かれている。
しかし、それはまさに、小手調べのようなものであった・・。
この映画は、狭い船内の人間模様も映し出す。
従軍記者として乗船したヴェルナー少尉(ヘルベルト・グレーネマイヤー)の向かいのベッドには、まだ若いウルマン少尉(マルティン・マイ)が。
ウルマンは「占領下のフランスのあの街の花屋にいたフランス人の娘と、秘かに婚約している」ことをヴェルナーに打ち明ける・・。
このシークエンスでなんとも解らなかったのが、“自分の国が軍事力によって占領している他国の娘と恋仲になる”というニュアンスだ。ダメって言ってんじゃないっすよ(^^♪。ただ、不思議な感覚ではある・・。
そのような状況になった者にしか解らないことであろうが・・。
それからしばらく航海を続けたU96は在る日、数隻の船団を発見。連合国側の船だ。
ドイツ側にとっては“いいカモ”。
U96はここで、連合国側の反撃に遭いながらも、全ての敵船の破壊に成功する。
しかし、燃え盛り、沈みゆく船から敵兵が海原へ身を投げていく光景に、U96の若き従軍記者とドイツ兵たちは“戦争は人の殺し合い”という厳然たる事実を見ていた・・。
そしてこの映画のハイライト、「ジブラルタル突破作戦」です。
U96に新たに出された任務が、「シブラルタル海峡を突破し、イタリアへ向かえ」というものでした。
ジブラルタル海峡は、地図を見ていただければわかるのですが、スペインとモロッコの間、僅か13Kmしかない海峡で、劇中の若いドイツ兵いわく「処女より狭い」海峡です。「津軽海峡」が、最短部分で約20Kmですから、ジブラルタルの距離はそれより短いということでびっくり。
艦長はU96を潜らせたまま、潮の流れに乗せて一気に突破する作戦を実行しますが・・。
端的に言えばこの作戦は失敗に終わります。
連合軍の激しい爆雷攻撃。この時の船内はまさに修羅場。
U96は破損部位からの冠水とバッテリーの故障でエンジンが動かなくなり、海中深く沈み始めます・・・。
ここから先は、ぜひ、映画を観てください(^^♪。
ラストは、まぁ、そう来るだろう、という感じですが、万々歳で終わる訳にもいかないので、まぁ納得のエンディングでした。
追記.しかし、第二次大戦が終わった時の条約で「ドイツは戦争映画を作ってはならない」というのがあったような気がしたのですが・・・1981年頃はもうよかったのかな・・・??
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