何てキモイ恋愛群像劇なのだろう。ヒュー・グラント演じる若き英国首相をはじめとする英国セレブ男(一部例外あり)にこれまた白人美女たちが一目でメロメロになるご都合主義のオンパレード。LGBTQやフェミニストの皆さんが見ると、本当は下心で真っ黒なのに玉の輿に乗ろうとピュアな女性のふりをする女優陣や、その演技にいとも簡単に騙される男優陣の浅い演技にきっと吐き気をもよおすに違いない。
そんなわざとらしいカップルばかりが登場する中で、狂言回し役で登場していたビル・ナイ演じるポップ・スターが一人気を吐いている。お下劣を絵に描いたようなこの男、インタビュー時の下ネタは当たり前、そこで放送禁止用語を連発するは、レコード売上がNO.1になったらの約束通り素っ裸でギターをかき鳴らす。散々女と遊んでおいて、真“ゲイ”ソングライター=エルトン・ジョンのクリスマスパーティーにおよばれしたとたん、自分もゲイに目覚めるというお土産つきだ。
クリスマスは家族で過ごすものというキリスト教社会の伝統が、すっかり恋人同士でイチャコラしあっても良い日に変わってしまったのは何故だろう。マスゴミの影響でこんな神の教えに背く不埒な習慣に染まってしまったのは、米国リベラルとバブル後の日本人だけだと思っていたら違っていたのである。なんとあの英国でもすっかり、クリスマス・イブ=恋人とデート&SEXする日に差し替えられてしまっていたのである。イギリスを代表する俳優陣がクリスマスに向けてウキウキ&ワクワクしている様は、もはや気持ち悪いを通り越して情けなくなってくる。悪のりにも程があるのだ。
コリン・ファースはともかく、リーアム兄さんやMr.ビーンは違うだろといいたいのである。マライア“鯨”キャリーの“All I Want For Christmas Is You”を黒人の女の子がカバーし大団円を迎える本作のそんな気持ち悪さに、唯一気づいていたのがポップ・スターだけだったのだろう。今や反出生主義のリベラルが大半を占めるハリウッドで、ノンケの恋人たちを大量投入したこんな出生主義映画が作られることはおそらくない。金のために人工的にメディアがブームを盛り上げ、古くから守られてきた伝統を捨て去った時、その国の没落はすでに避けられないものになっているのだろう。なんつって。
ラブ・アクチュアリー
監督 リチャード・カーチス(2003年)
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