ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

アリータ:バトル・エンジェル

2020年01月14日 | ネタバレなし批評篇



お目目を3倍ぐらいに大きくしてCG合成しちゃいますけどいいですか?といわれて、出演オファーを快諾する女優などまずいないだろう。売れっ子のエマ・ワトソンやエマ・ストーンなら間違いなくそんな失礼なオファーを二つ返事で断ったはず(『エクス・マキナ』で実績のあるアリシア・ヴィキャンデルならもしかしたら…)。そう考えるとこのアリータを演じたローラ・サラザールという女優さん、相当人間ができているにちがいない、それほど女優にとって顔は命の吉徳なのだ。

ジェームズ・キャメロンが脚本及び製作を担当して話題にもなった本作だが、キャメロンが噛みついたあの『ワンダーウーマン』とのある共通点を発見したのでご報告させていただく。アリータと影でサイボーグパーツの密売をしているBFが親交を深めていくシーンを覚えていらっしゃるだろうか。一輪バイクに二人乗りして街中を散策するシーンに、あの『ローマの休日』と同じ演出法がとられているのだ。かたやオリジナルと同じアイスクリーム、かたやチョコレートを物珍しそうに頬張るところなどクリソツ。サイボーグが敵味方入り乱れての酒場乱闘シーンなども、もしかしたら同作へのオマージュなのかもしれない。

アイデアをパクられたかどうかまでは解らないが、内心コノヤローと思ったに違いない。珍しく語気を荒めて他人の映画にナンクセをつけたキャメロンの真意は意外と単純なところに隠されていたのかもしれない。映画冒頭のアリータ再生シークエンスは『鉄腕アトム』への、半殺しの目に遭いサイボーグ化したBFとのお別れシーンではキャメロン自らメガホンをとった『タイタニック』へのオマージュを盛り込むなど、原作コミック『銃夢』の忠実な再現というよりは、演出しがいのある素材としての魅力をキャメロンは感じていたのではないだろうか。

現代社会の世相を反映した(『タイタニック』や『ジョーカー』のような)上部と下部の格差に焦点をあてた原作の世界観も、映画ヒットの必要条件を満たしていることにおそらく気づいていたにちがいない。ヒロインであるアリータによるキレキレのアクションにばかり目がいきがちな本作だが、細かいディテールにまでキャメロンらしい練り込みが感じられる1本なのだ。『アバター』続編にさえかかわってなければ、盟友ロバート・ロドリゲスに任せずとも自身で監督をやりたかった作品なのだろう。

アリータ:バトル・エンジェル
監督 ロバート・ロドリゲス(2019年)
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