56回 でした。
今日は、暑い中、またお忙しいなか17名の方が聴きにきてくださいました。
そして、今日は赤ちゃん連れの若いママが3組。赤ちゃんも3人。小さな子どもさんもいらっしゃってとても嬉しかったです。いつも来てくださるご婦人も、暇をみつけて駆けつけてくださいました。
ありがとうございます。
Program
1.追悼 ゆきこさんへ
風のハープ (ショパン)
2.朗読
3.森のざわめき ギロック
4.海の風景
5.人魚の歌
6朗読
7.野ばら シューベルト
8.叱られて 弘田龍太郎
*途中で 急遽 「市場」という曲を演奏しました。
9.夢の森 ビューモント
10.浜辺の歌 成田為三
*最後に、フォーレのシシリエンヌを演奏しました。
***朗読***「秘密のピアノ」(kaze sora)より “トム ピアノを弾いてみる?”
昔、フィンランドという国に一人の女の子がいました。
名前は、リリー。
お下げが良く似合い、お人形遊びとジャム作りのお手伝いが大好きでした。
夜、寝るときには、お母さんがいつも絵本を読んでくれました。
絵本は、なんとお母さんの手作りです。
フィンランドはとても広い国で、その頃はバスや電車もなく、乗り合いの馬車で遠くの町まで出掛けて買い物をしていたからです。
お母さんは、自分が子どもの頃見た花や森を思い出しながら、色鉛筆で絵本を描いていたのです。
リリーとお母さんが見ているお花や森は、同じ世界です。
でも、お母さんの心を通ると、花がしゃべり、森がざわざわと笑ったり。 動物たちもお話しをする不思議な世界。
そんなお母さんの絵本が大好きでした。
リリーは、目を閉じてお母さんのお話の世界を散歩しながら、いつも眠っていたのです。
リリーの家には、古くて大きなピアノがありました。
「三角トーストみたい」。
リリーはそう思っていました。
ある日、リリーのお父さんのお母さんという女性が、やってきました。
お菓子やマフラー、お人形や靴。たくさんのお土産を持ってきました。
リリーは、もううれしくて嬉しくて、その人が大好きになりました。
でも、その人はお年寄りで耳が聞こえません。
リリーが何か話しかけても、にこにこしているばかりで、お話しをすることができませんでした。
「つまんないなあ」。
雨が降る、ある日。
その人は、三角トーストの蓋を開けたのです。
そして、そのピアノを弾きだしました。
なんとやさしい音。走ったり、飛んだり、歌ったり、泣いたり、元気だったり、弱々しかったり。
リリーは、その人が弾くピアノが大好きになりました。
その人がやって来て一回目のクリスマスが過ぎ、2回目、3回目。
そして、4回目のクリスマスの前に、その人はたくさんの人に見送られながら、リリーのお家から出てゆきました。
三角トーストのピアノは、急にしゃべらなくなりました。
三角トーストの上に、一冊の本が置いてありました。
それからリリーは、その人が弾いていた音や動きを思い出しながら、ピアノを弾き始めました。
リリーが大人になって、お嫁さんになり、お母さんになり、そしてお婆さんになったある日。
家の中を片付けていたら、その本が出てきました。
ぼろぼろで、色も汚くなっていました。
リリーは懐かしさのあまり、胸に抱え込んで、あの日の毎日を思い出し、胸がいっぱいになりました。
「トム?ピアノを弾いてみる?」
Kaze sora