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【ふじもん世界放浪「放学記」第4章中東編 謝罪文『校長先生、ごめんなさい』の巻。】

2013-11-26 01:58:59 | 日記
2013年11月25日。


《エジプト南部の都市・アスワンにいる僕は、今日地元の小さな小学校を訪問させていただいた。今回の旅の中で僕はたくさんの学校を訪れているが、ちょっと今回、謝罪をさせていただきたいと思います・・・。》


校長先生

ご無沙汰しております、藤本(ふじもん)です!

お元気でしょうか?僕はおかげ様で、ここまで元気いっぱいに旅を続けてられております。


校長先生、僕は今エジプトのアスワンという街にいるのですが、地元のある小学校を訪問してきました。学校を訪問することはこの旅の中では何度もさせていただいているのですが、今日地元の学校を見ていまして、やっぱり校長先生にお伝えしなければいけないなと思い、筆をとりました。

僕は日本を発つ前に、「日本の学校にはたくさんの問題点があると思うんです。僕はそれを変えていきたい。教育を変えていくことは、日本、いや世界の未来を変えていくことだと思うからです。」と、大口を叩いてきました。

確かに問題点は多々あると思います。改善していくべき点がないはずはありません。

でも、世界の学校を見ていくうちに、僕の認識は変わってきました。

特に、日本で先生という職業をされている方々の素晴らしさを、今身に染みて感じております。

日本の先生ほど、子ども達を思い、身体を張っている先生はいないと確信しました。


世間では「最近の先生って大丈夫なの?」などと言われていますよね。でも僕たち現場にいた人間としては、そんな先生は本当にごく一部で、ほとんど全ての先生方は真面目に真摯に職務に励んでいることは、周知の事実です。

どこの国の学校とは言えませんが、本当にひどい学校をいくつも見てきました。

授業中なのに全く違うことをしている先生や、先生方の間でお茶会が盛り上がってしまい、そのまま授業をしない先生がいたり、1つの学校でなんと半数近くの先生が休んでしまったり・・・。日本の感覚では理解不能な先生も少なくありませんでした。

今日見た学校もなかなかのものでした。理由は分かりませんが、激高した先生が、子どもを何人か蹴り飛ばしながら教室の外へ追いやっていました。凄いことですよね・・・。

論点はそれてしまいますが、校門の目の前のゴミの山も凄いものでした。こんな学校、日本じゃ有り得ないですよね・・・。



JICAから派遣されて現地の学校で奮闘されている、青年海外協力隊員の方にも直接話を聞いたことがあります。全く別の国で活動をされている方に数名お会いできたのですが、とても興味深かったのが、全く同じ悩みを抱えていました。

それは「先生方の意識から何とかしないと」というものでした。

隊員の方々は少しでも学校を改善していこうと、色々とアドバイスや提案をなされるそうです。その時の現地の先生方の反応は子ども視点ではなく、完全に「自分視点」だそうなんです。

つまり、子どもにとって良いとか悪いとかではなく、自分にとって楽か面倒くさいか、という基準でアドバイスや提案を受け取る人がほとんどだそうなんですね。

それを聞いて、僕はビックリしました。でも実際に僕自身の目で学校を見ていたら、それはとっても納得のいくものでした。


そして思いました。「日本の先生ってすげぇ」って。

だって、子ども達のためだって、毎日10時まででも11時まででも学校に残っちゃったりしますよね。たぶんそんな先生、世界で日本しかいないんじゃないかと思うんです。

そりゃ、業務の幅や量のせいもありますよね。それは僕も痛いほど感じてきました。でも日本の先生はちょろっとは文句を言っても、今置かれている現状の中で、全力を尽くしている。本当にすげぇって思いました。

でもそのせいで家庭を犠牲にせざるを得なくなったり、プライベートを無くしてしまったり、心を病んでしまったりする人もいる。だけど、こうも考えてみました。「そんな風になってまで、これからの未来を担う子ども達の為に身体を張っている先生方がこんなにたくさんいる。日本ってなんてすげぇ国なんだ。」って。


そしたら、すごく日本の先生、日本の教育に、心から誇りを感じられてきました。


見る人が見たら、「何言ってんの?そんなに働いて自分の身体壊したり家庭を見られなくなってしまったりしたら、何も意味ないじゃん。バカじゃないの?」と言うかもしれませんね。

確かにそうですよね。でもそんなこと、激務に追われている先生方が一番よく分かっていますよね。だけどそれでも、目の前の子ども達の為に、今の現状の中で精一杯やる。僕、日本人ってすげぇんだなって、本当に思いました。


だから、今の日本があるんだなって思いました。

だから、これまでの日本があったんだなって思いました。



僕は、これからの日本の教育で一番変えていかなかければいけないことは、教育課程であったり設備面であったりなど、「人的要因」ではない部分であると感じています。日本の先生方は、あの状況の中で本当に素晴らしく職務に励んでいると思います。だから、まずもって変えるべきは、先生を取り巻く環境です。そしたら、先生方はもっとゆとりをもって、そして自らの専門性も追求できる。

「先生という人間の質」という面では、本当に日本は素晴らしいと思う。僕はそれを強く感じています。


僕は今は先生ではないけれど、僕の生きる道は教育だって心に決めています。その道を通して、日本を、日本人を、そして世界を、もっと「良いものに」変えていきたい。その思いを一層強くしました。

もちろん、今のこの僕の意見は一面的であることは承知しています。僕は世界に約200ほどある全ての国と地域の学校を見てきたわけではありませんし、これまで僕が見てきた学校は全て、いわゆる「発展途上国」と言われている国々のものです。

「先進国」と言われている国の学校はどのようなものなのか。よくフィンランドやオランダの学校が模範的な例として挙げられますが、僕は、「先生という人間」という視点で見たら、日本の先生方は絶対に負けていないと思います。


校長先生、大変失礼致しました。僕は大口を叩いてしまいましたが、日本の教育、そして日本の先生の素晴らしさを、今まじまじと感じています。ついつい自らの悪い点ばかりをクローズアップしがちな日本だと思いますが、もっと良い点は良い点として自らの誇りとして認め、自負していいと思うんです。そして変えるべき点は真摯に変えていく。

日本人なら、それができると思うんです。


校長先生、僕は日本に帰っても、いわゆる「普通の先生」には戻らない予定です。違う形で教育にアプローチしていくつもりです。

でも、目的は同じです。想いは同じです。そして、長年先生をされてきている方々からすれば何を言ってるんだと怒られてしまうと思いますが、わずかな期間でも「日本の先生」であったことに、心から今誇りを感じています。


もうしばらく、僕は学びの旅「放学」を続けます。また日本でお会いできることを楽しみにしております。

それでは失礼致します。


2013年11月25日。真昼の暑さと夜の涼しさの温度差がハンパじゃない、アスワンの安宿にて。



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