実は、向田邦子を知らない。
知らないのに、古本屋さんでちょっと100円やし、で、題名だけで選んだ本が向田邦子だった。
題名は、霊長類ヒト科動物図鑑とかいうもの。
そいで、毎晩寝る前にちらちらと読んでは眠りについてるのだが、ひとつひとつがいい具合の短さの、いわゆる、エッセイ集というものだ。
全然知らないのだけど、向田邦子さんのこと、、本の背表紙に生まれが1929年とあって、そうかぁ、やっぱし若干古い人やなぁと。
が、とは言っても、今の私と変わらない感覚の方が強いのは強いんだけど、時たま、あぁ、時代が古いんやなぁっていう雰囲気があって、これがなぜだか読ませている要因な気がしている。
だから、面白いというほど面白くもないけど、ぼつぼつ読むには良い具合で、それでも、一番印象的な話は父やら母やらとの家族の、つまりは、本人が小さいころのお話である。
そのひとつで、傘という題のものがある。
その時代、父を電車の駅まで見送るのに、誰か彼かが見送りに行かねばならず、いわゆる荷物持ちでもあるんだけど、長女の向田邦子が結構その役をやらされてたらしい。
あるとき、同じように父を見送るとき、家から駅のホームまで一切お互い話すことなく、ホームでは、何も言わず荷物を渡し、一応電車が出るまで見送らないといけないから、目の前の電車の中、すでに席に着いた父は新聞だったかなんだかを広げこちらを見るわけでもないのだが、まぁそれでも本人も何も言うこともなく、どうしたらよいかもわからず、そのまま出発と、いざなってもにこりと手を振るどころか顔を下にしたまま、うんともすんともしなかったそうで、その後父は帰ってきてから、母になんだ邦子のやつは女のくせに愛想がない、と言ってるのを聞いてたらしい。
そして、またあるとき、雨が降ってきてるから駅まで父を傘を持って迎えに行って欲しいと母に頼まれた向田邦子は、傘を持って駅まで向かうのだが、駅から人はどんどんと出てきてて、暗い道ではそのままじゃ父と行き違いになってしまうと思ったから、父の名前を言いながら小走りで人の間を駆けていたのだと。
すると、父と出くわし、父に人の名前を道で大声出して言うやつがあるか、と怒られたらしい。
別に大声ではなかったようだが。
が、帰り着いてからというものの、母が向田邦子に、あなたお父さんは邦子はなかなか機転の利いたやつだ、なんて褒めてらしたわよ、と。
この話が一番印象深い。
なぜだろう、とってもその感じが頭の中で描写されるのだ。
そして、お互いの気持ちをぺらぺら話す間柄でもない、けれども、家族であるその在り方が今とは違うなぁと、それがリアリティを持って、こんな感じだったのかなぁなんて想像できたのが楽しかったのだ。
と、最近その、向田邦子のせいで、、おかげで?こういう文調になっているということをお伝えしておきたかったということでもあるのだった。ふふふ。
エッセイ風?