自民党総裁選挙は、自民党という政党の指導者を選択するだけでなく、
日本国首相を選択すると言う栄誉に包まれている。
9月7日告示、9月20日投開票の運びである。
安倍晋三首相は、8月14日の長州「正論」懇話会で講演を行った。
https://www.sankei.com/premium/news/180814/prm1808140008-n1.html
石破茂元幹事長は11日、鳥取県米子市で開いた国政報告会で
「(自衛隊の権限などが)何も変わらない改憲をしてどうする」と述べ、首相との対決姿勢を強めた。
https://www.sankei.com/politics/news/180811/plt1808110021-n1.html
対立候補、石破茂の立候補表明などはいずれ、紹介するものとして、
今回の自民党総裁選挙での登場人物は、安倍晋三首相、石破茂元幹事長
野党立憲民主党、其れと、メデイアと言う事が、明確になってきた。
憲法9条改正は勿論だが、他の緊要な政策に付いて論議される事は慶賀の至りである。
今年の国会は特定野党の18連休もあり、もりかけの追及も無駄な国会運営に帰した。
朝鮮半島の政治動向は、日本の安全保障の再構築を余儀なくされていると認識している。
南北会談、米朝会談を持って緊張緩和を述べる奇観は言うまでもない。
陸上型イージスの要、不要を言うメデイアには、日本国民を守ると言う気概が無い。
同じく立憲民主党も憲法9条改正反対のみならず、安保法制で集団的自衛権を
違憲と言う政党は、日本国民の敵と申し上げる。
同調するメデイアには、ファクトとフェイクの区別が付かない。
羽鳥真一のモーニングショーは数日に渡り、石破茂の独演会を開催した。
これら、メデイアの偏在の上に、今回の自民党総裁選挙が挙行されるとご承知願いたい。
これら、報道の上には、既に公平と言う概念は、消失しているのである。
憲法9条改正の意義とは、自衛隊を明記することで、平和主義と共に日本国の防衛を
掲げる事であり、今後の憲法改正の道筋を示すこととなる。
また、日本国の国家主権の存在を明らかにすることである。
拉致問題や日本人人質事件での国家主権が蔑ろにされた事例を忘れてはいけない。
北朝鮮、中国、ロシアと核保有国(潜在を含む)に取り囲まれた状態で、
ミサイルを防衛する手段を問う。ミサイルを留める手段とは、何か?
2018.8.19 22:12更新
【自民党総裁選】
9月7日告示、20日投開票 安倍晋三首相と石破茂元幹事長の一騎打ちへ
https://www.sankei.com/politics/news/180819/plt1808190014-n1.html
自民党は21日の総裁選挙管理委員会で、総裁選の日程を「9月7日告示、20日投開票」と正式に決定する。連続3選を目指す安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長による一騎打ちとなる見通しで、平成24年以来6年ぶりの選挙戦に突入する。
首相は8月下旬に正式に出馬表明する。既に憲法9条に自衛隊を明記する自民党憲法改正案を秋の臨時国会に提出する方針を掲げており、外交・安全保障やアベノミクスの実績も訴えていく考え。石破氏は首相の政治姿勢への批判を強め、「官邸の信頼回復」を打ち出していく構えだ。ただ、首相は総裁選期間中も外交日程などがあり、公開討論会や街頭演説などは最小限となる可能性が高い。
総裁選は衆参国会議員票(405票)と党員・党友票(405票)で争われる。首相は細田派(94人)や麻生派(59人)など5派の支持を受け、議員票320票近くを固めた。党員票も優勢とみられる。一方、石破氏は石破派(20人)と竹下派(55人)の参院議員約20人を中心に50人前後の支持にとどまっている。
立候補に意欲を示す野田聖子総務相は推薦人20人の確保が困難とみられる。
2018.8.14 10:00更新
【長州「正論」懇話会】
安倍晋三首相講演要旨 憲法に自衛隊明記、誇り持って任務に
https://www.sankei.com/premium/news/180814/prm1808140008-n1.html
【憲法改正】
西日本豪雨の発災以来、最大で3万1千人を超える自衛隊の諸君が行方不明の捜索、大量に流れ込んだ土砂やがれきの撤去、炊き出しや入浴などの被災者支援に当たってきた。被災者のため、黙々と献身的に任務を全うする彼らは日本国民の誇りだ。
毎年、防衛大学校の卒業式に出席し、最高指揮官として真新しい制服に袖を通したばかりの自衛官たちから「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応える」との重い服務宣誓を受ける。
彼らは国民を守るために命を懸ける。しかし、近年でも「自衛隊を合憲」と言い切る憲法学者はわずか2割だ。その結果、多くの教科書に自衛隊の合憲性に議論があるとの記述があり、自衛官の子供たちも、その教科書で勉強しなければならない。
こんな状況に終止符を打つ。全ての自衛官が誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる政治家の責任だ。憲法の中に、わが国の独立と平和を守ることと、自衛隊をしっかりと明記することで責任を果たしていく決意だ。
昨年の衆院選で自民党は初めて選挙公約の柱、主要項目の一つとして憲法改正を位置づけ、自衛隊の明記など4項目を具体的に掲げた。本年の党大会では党の運動方針として、公約に掲げた4項目の議論を重ね、憲法改正案を示し、憲法改正の実現を目指す方針を決定した。これに従って意見集約に向けた党内議論が精力的に行われてきた。
いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない。これまでの活発な党内議論の上に、自民党としての憲法改正案を次の国会に提出できるよう、とりまとめを加速すべきだ。
来月には総裁選があるが、憲法改正は立党以来の党是であり、すべての党員の悲願だ。昨年の衆院選での公約実現を目指すことは、自民党としての責任でもある。誰が総裁になろうとも、その責任を果たしていかねばならない。
憲法改正には、衆参両院で3分の2を得て発議し、国民投票で過半数の賛成を得るという極めて高いハードルを乗り越える必要がある。政治は結果であり、どのように幅広い同意を得て憲法改正を実現するか、総裁選で党員の間で議論を深め、一致団結して前に進むきっかけとなることを期待する。
【行政をめぐる問題】
通常国会中、(財務省の)決裁文書改竄(かいざん)など行政をめぐるさまざまな問題が相次ぎ、国民の皆さまの信頼を損なったことを深くおわび申し上げたい。政府挙げて再発防止に取り組む。
私自身の関与の問題についていろいろと厳しい指摘、批判をいただいた。今後とも、指摘があれば丁寧に説明責任を果たしていかねばならない。
妻(昭恵夫人)や長年の友人が関わっていたのであれば、疑念の目が向けられることは当然であり、その点への意識が必ずしも十分ではなかった。首相という立場が周囲に与えうる影響を常に意識する必要がある。しっかりと胸に刻みながら、今後、慎重な上にも慎重に政権運営に当たらなければならない。
「安倍1強」とか言われているが、私は極めて宥和(ゆうわ)的な人間だ。安全保障法制のときも党内で徹底的に議論してもらい、その結果をベースに進めた。これが私のスタイルだ。強権的なやり方は長続きしない。大きな改革であればあるほど、まず国政選挙で問う。国民の支持を得て、実行に移していく。民主主義の基本に立ち返るしかない。
【1億総活躍】
先の通常国会では、長時間労働の是正や同一労働同一賃金などの働き方改革関連法が成立した。育児や介護など、さまざまな事情を持つ皆さんが多様な働き方を選択できる「1億総活躍」の新しい時代に向かって扉を開くことができた。
政権交代前、8割台にとどまっていた生活保護世帯の子供たちの高校進学率は初めて90%を超え、直近では93%までアップしている。1人親家庭では、大学への進学率が24%から42%まで上昇した。いわゆる子供の貧困率も低下している。どんな世の中でも格差はあるが、格差を固定化させてはならない。
【アベノミクス】
6年前に政権交代を成し遂げ、経済最優先を掲げ、「三本の矢」を力強く放ってきた。
年金資産はこの5年半で53・6兆円も増加した。人口が減少する中で名目GDP(国内総生産)は11・8%成長し、58兆円増加し、過去最高を記録した。中小企業の倒産は政権交代前から3割減少し、この27年間で最も少なくなっている。
正社員の有効求人倍率も統計開始以来、過去最高だ。この春、高校、大学を卒業した若者たちの就業率は過去最高水準となった。5年連続、今世紀で最も高い水準の賃上げが実現している。中小企業の賃上げ率も過去20年で最高になった。
アベノミクスの果実を使って、安倍晋三内閣は民主党政権時代の2・5倍のペースで、5年間で59万人分の保育の受け皿を整備した。その結果、女性就業者は200万人増加し、今や25歳以上の全ての世代で女性の就業率は米国を上回った。
【自由貿易】
わが国がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のような多くの国が参加する協定づくりを主導したのは、戦後70年以上の歴史でおそらく初めてではないか。EU(欧州連合)との経済連携協定(EPA)も5年の交渉を経て、先月、署名に至った。人口6億人、世界経済の3割を占める大きな市場に、自由で公正なルールに基づく経済圏が誕生する。わが国はこれからも、自由貿易の旗手として、新しい時代の経済、秩序づくりを主導していく決意だ。
拉致問題 安倍政権で必ず解決
【信頼される外交】
日本は、アジアで唯一の先進7カ国(G7)メンバーだ。同時に長年、東南アジア、インド、中東諸国など太平洋からインド洋へ至る地域の国々と深い信頼関係を築いてきた。日本こそが世界を平和と繁栄へ導く懸け橋となる。今後も不断の努力を重ね、世界から信頼される国、尊敬される国とならなければいけない。
【日米同盟】
トランプ米大統領と1年半の間に7回の首脳会談、20回を超える電話会談、3回のゴルフを重ねた。米国は日本が攻撃されたとき、共に戦ってくれる唯一の同盟国だ。どの大統領ともしっかり信頼関係を築くことは、日本の首相の最も重要な責務の一つだ。トランプ氏とは何でも話し合える関係を築くことができていると思っている。
3年前、安保法制が成立したことが大きい。互いに助け合えることができる同盟は当然その絆を強くする。日米同盟はかつてなく強固なものとなっている。
トランプ氏にはこれまでの常識は通用しない。だからこそ、前例にとらわれず大胆な決断ができるリーダーでもある。
【北朝鮮問題】
6月には歴史的な米朝首脳会談が行われた。米大統領と朝鮮労働党委員長の2人の首脳がサインし、文書を発出した。この意義は大変大きい。北朝鮮はこれまで、1994年の枠組み合意、2005年の6カ国共同声明にかかわらず、国際社会の努力をことごとく裏切ってきた。首脳間の合意でなかったゆえに簡単にほごにされてきた面がある。
(平成14年の)日朝平壌宣言は当時の小泉純一郎首相と金正日(キム・ジョンイル)国防委員長がサインをした文書だ。北朝鮮もこれをなかったことにはできない。日朝の交渉を始める際、間違いなくその土台となる文書だ。
4月の日米首脳会談の際に、トランプ氏に「サインをする文書を残してください」と話した。今回の米朝首脳間の文書は北朝鮮の完全な非核化に向けて大きな土台を作った。最強の軍事力を持つ米国の大統領がサインをした。その重みは相当なものだ。トランプ氏は相互不信の殻を打ち破り、相互の信頼を醸成することで共に問題を解決するという新しいアプローチを取った。
わが国にとって最も重要な拉致問題は、ご家族の皆さまが高齢になられながら、いまだ解決できないことは痛恨の極みだ。安倍政権でこの問題を必ず解決するという強い決意で臨んでいる。最後は私自身が金正恩(キム・ジョンウン)氏と直接向き合い、わが国が主体的に解決しなければならないと考えている。
北朝鮮は正しい道を歩めば、明るい未来を描くことができる。その前提が拉致、核、ミサイルの諸問題の解決だ。わが国として不幸な過去を清算し、国交正常化を目指す方針は揺らがない。私も相互不信の殻を打ち破り、問題の解決を目指す決意だ。
【日中関係】
昨年11月、習近平国家主席と首脳会談を行い、新しいスタートを切った。5月に李克強首相が公式訪問し、10年来の懸案だった海空連絡メカニズムに合意するなど多くの成果を得た。首脳間の往来を通じ、日中関係を新しい段階へと押し上げていきたい。
【戦後日本外交の総決算】
私が掲げた「自由で開かれたインド太平洋戦略」を米国をはじめ多くの国が強く支持してくれている。日本の外交安全保障戦略を米国が取り入れるようなことは初めてのことではないか。
冷戦終結後も、北東アジアでは北朝鮮問題をはじめ戦後の枠組みが長年、そのままになってきた。日本がリードして、新しい時代の北東アジアの平和と繁栄の礎を築かなければならない。今こそ「戦後日本外交の総決算」を成し遂げるときだ。
【日露関係】
一昨年、長門にロシアのプーチン大統領を招き、平和条約問題の解決に向けた真摯(しんし)な決意を共有した。
あのとき合意した、(北方四島)元島民の飛行機を利用した墓参りも今年で2年目になる。四島での共同経済活動も新しい段階に入ろうとしている。
長門合意を着実に実現に移すことで、領土問題を解決し、戦後70年以上解決されないままの平和条約の締結を目指したい。ロシアとは世界の課題解決に協力する関係を築き上げていく。日露の新時代を切り拓(ひら)いていきたい。
【地方創生】
安倍内閣は観光立国に力を入れ、外国人観光客は5年連続で過去最高を更新した。今年は上半期だけで、すでに1600万人に迫り3千万人時代に突入した。観光を地方創生の大きな起爆剤とする。2020年、4千万人の大台を目指してさらに施策を強化する。
おいしくて安全な日本の農林水産物も外国人には大人気だ。農家の平均年齢は66歳を超えている。農業を守り抜くためにこそ、今、改革しなければならない。先の国会では林業改革に向けた法案も成立し、次は水産業改革にも挑戦する。
地域経済を支える中小・小規模事業者は、深刻な人手不足に直面しており、しっかりと手を打っていく。同時に一定の専門性、技能を有し、即戦力となる優秀な外国人材を幅広く受け入れる新しい在留資格を来年4月を目指し創設する。いわゆる移民政策ではない。
【国土強靱(きょうじん)化】
西日本豪雨では、たくさんの方がお亡くなりになった。改めてご冥福をお祈りする。
前政権の時代、「コンクリートから人へ」といったスローガンが叫ばれた。河川の改修や治水事業、砂防ダムの建設、ため池の維持改修など、まるで公共事業全てが悪いように批判され、予算は大幅に削られてしまった。国民の命を守る、防災や減災に必要なインフラまで削ってはならない。減災・防災の観点から、河川の浚渫(しゅんせつ)なども含めて安心な暮らしを確保するための対策を全国的に早急に講じる必要がある。
【先の時代を切り拓く】
9カ月後には天皇陛下のご退位、皇太子殿下のご即位、皇位継承という歴史の大きな節目を迎える。国民の皆さんが、わが国と皇室の長い伝統と歴史に思いをはせこぞって寿(ことほ)ぐことができるよう、世界の方々から祝福されるよう政府として万全の準備を進めていく。
「失われた20年」はもはや過去のものになった。未来を見据えた改革を進める準備は整った。平成のその先の時代に向かって、今こそ動き出すべきときだ。
社会保障を全世代型へと改革していかねばならない。未来を担う子供たちに大胆に投資する。高齢者の皆さんも力強く応援していく。子供たちから子育て世代、そして高齢者の皆さんまで、すべての世代が安心できる社会保障制度を構築していく。少子高齢化を踏まえ、地方の行政体制、財政、税制のあり方も考える必要がある。
やればできる。そう信じ、いかなる困難に直面してもチャレンジを続けてきた先人たちの志を私たちはしっかりと受け継ぎながら、今こそ、平成のその先の時代を切り拓くときだ。
2018.8.12 05:00更新
【主張】
首相も「出馬」表明 9条改正大いに論じ合え
https://www.sankei.com/politics/news/180812/plt1808120001-n1.html
安倍晋三首相が地元山口県の会合で「6年前に自民党総裁選に出た時の志はみじんも変わることはない」と述べた。
事実上の出馬表明である。10日に表明した石破茂元幹事長との一騎打ちとなる構図がはっきりと見えてきた。党内の幅広い支持を得ている首相の出馬は当然視されていたが、「3選」に向けて大いに政策論議を戦わせてほしい。
首相が外交・経済の基本路線を継続するとしても、政策の修正や強化の必要性について最大与党が定期的に検証することは欠かせない。石破氏との真正面からの議論を国民に示す必要がある。
注目すべきは、首相が憲法9条に自衛隊を明記する改正について「大きな責任を持っている」と語ったことだ。石破氏も同じく9条改正を主張するが、戦力不保持を定めた2項の削除を求める点で首相とは立場が異なっている。
9条改正について首相は「勇気を持って説明していきたい」と訴えたが、石破氏は「優先順位が高いとは私は思わない」と述べている。それでは期待する正面からの論戦とはなりにくい。
なぜ自衛隊を明記すべきかという根本的な意義を含め、この機会に両氏には、国民の前で分かりやすく論じ合ってもらいたい。
その前提として、北朝鮮や中国の動向など安全保障環境の大きな変化や、トランプ米政権との間での日米同盟のあり方についても認識を明らかにしてほしい。
保護主義を強める米国とどう付き合っていくか。自由貿易や民主主義の価値観が死活的に重要な日本にとっては文字通り、かじ取りにかかわる問題である。
首相は森友、加計問題にも触れて「再発防止を徹底的に進める」と語った。石破氏がこの問題を念頭に「正直、公正」を掲げたことも意識したのだろう。
佐川宣寿前国税庁長官の虚偽答弁や財務省の公文書改竄(かいざん)などは行政に対する国民不信を募らせた。問題を長引かせ、国会審議の停滞を招いた面も大きい。石破氏の問題提起を受け止め、論争を機会に行政の立て直しや信頼の回復を図らなくてはならない。
首相の政権基盤が強固となるなかで、党内の政策論議が停滞するきらいもあった。両氏の論争に連動し、支持する議員らも内外の政策を吟味し、論争を盛り上げることに腐心してもらいたい。
2018.4.25 10:40更新
【正論】
9条2項論議は主権問題である 東京大学名誉教授・小堀桂一郎
https://www.sankei.com/column/news/180425/clm1804250004-n1.html
東京大学の小堀桂一郎・名誉教授
平成9年4月28日に民間有志の提唱にかかる「主権回復記念日国民集会」の第一回が開催されてより、この集会は二十余年の歳月着実に開催を続け、本年はその第22回の集会を開く予定である。
≪記念日の国民集会を前に≫
此(こ)の間、25年には、同じ日付を以て「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が政府主催の形で挙行され、そこには天皇、皇后両陛下のご臨席を仰ぐといふ慶事があり、草莽(そうもう)の有志が催す集会と趣旨を同じくする式典が、政府自らの発案で実現したといふ事に民間有志の実行委員達は洵(まこと)に意を強くした次第であつた。
然(しか)しながら、政府主催の記念式典はその年一回限りでその後が続かず、民間人集会が当初から掲げてゐた〈4月28日を国民の祝日に〉との目標もまだ達成できぬままに、我が国は依然として独立主権国家の面目を平然と否定してゐる米国製憲法の監視下に置かれてゐるに等しい。
自民党は先ず改正目標の4項目をまとめ、30年の運動方針で「憲法改正案を示し、改正実現を目指す」と掲げる所までは来た。だが我が国が真に独立主権国家としての尊厳を回復したのか、それとも依然として被占領国日本の屈辱に甘んじ続けるのか、その判定の岐路である第9条2項の削除を含む改正には当面踏みきれない様である。
占領軍の手になる粗製濫造品に他ならぬ現憲法には様々の法理上の欠陥条項や表現上の誤謬(ごびゅう)が含まれたまま、破綻を指摘される毎にその場凌(しの)ぎの政府の言ひ繕ひで70年間使はれ続けて来た。その中でも最悪の不条理は9条2項後半の〈国の交戦権は、これを認めない〉との真向(まっこう)からの国家主権否認条項である。この文言は昭和27年4月の平和条約発効による主権回復と同時に、法理上の意味を失ひ、ただ憲法本文の中にその文字が残るだけの空文と化してゐる。
その空文が消去される事なく残つてゐるばかりに、この一節が我が国の安全保障、領土領海の防衛にとつてどれほどの法的な障害となつて来たか、又今後も禍となり続けるか、国政の担当者と防衛の現場の方々のみならず、世人一般がよく考へてみるべき事である。
≪交戦権否認条項の由来は≫
安倍晋三氏の率ゐる現政権の執行部は、目前に迫つて来た憲法改正の発議に当り、所謂(いわゆる)護憲勢力からの反動的抵抗を回避する方便の一として9条2項を存置したままで、之に付加へる新たな条文を以て自衛隊の保持とその権能を明記する案を用意してゐる様である。
憲法改正の実現可能性といふ観点から見るとこれは深く考へた上での着想と思はれる。又自衛隊の将官級の退職者諸氏の中にこの案を可とされる向が多いのは、これによつて自衛隊違憲論を克服する事はできるからであらうし、一方現場をあづかる専門家の立場から現政権の相次ぐ安全保障法制、緊急事態対処措置の充実努力で現法制のままでも国防は可能だとの観測が成立つてゐる故であらう。
国民投票で改憲案が否決された時の破局的事態を想像してみるとこの慎重な姿勢は理解できるし尊重もするが然し同調する事はできない。その理由を以下に書く。
憲法の交戦権否認条項は所謂マッカーサーメモの〈将来如何(いか)なる日本軍にもrights of belligerencyが与へられる事はない〉との文言に由来してゐる。このメモに基いて憲法素案を起草した当時のGHQ民政局次長ケイディス大佐はこの「交戦権」といふ学術語が何を意味するか知らなかつた。然し彼は軍人である以上、上官の命令は唯(ただ)聴くべきものであり、説明を求めたりする事はできない、との格率の下に行動してゐた。
≪国家の欠陥放置してよいか≫
その時ケイディスが考へた抜道は日本側との憲法素案の検討折衝の際、日本の側からこの交戦権否認条項の削除を要求してくれればよい、といふ事だつた。その際には直ちに要求に応じこの項を削除するだけの権限は彼に与へられてゐた。ところが彼の期待に反して日本側委員から削除要求は出なかつた。思ふに米国の職業軍人でさへその意味を知らなかつたといふ「交戦権」について、それを否認するといふ事態の重大さを理解してゐる学識者は当時の日本国政府の中にはゐなかつたのであらう。
以上に述べた事は故江藤淳氏の労作『占領史録』中の「憲法制定経過」に委曲を尽して記録されてゐる。政権担当者諸氏は今からでもよいから基処を調べ、この条項が如何に愚かな経緯で憲法に入つてしまつたかを知つて頂きたい。
戦後の我が国の国際法学界では「交戦権」の複雑な内包とそれの及ぶ外延については十分な研究がなされ、国家に自然に具はる権利にして且(か)つ国際法的遵守義務も有するこの法理を無視する事が、紛争当事者双方にどれほどの禍害をもたらすものであるかについての認識は進んでゐる。現政権は先づかかる重大な欠陥条項を放置しておいてよいのかと国民に問ふ様な啓蒙活動に努めるべきである。憲法改正の発議に先立つてこの努力を蔑(ないがし)ろにしてはならない。(東京大学名誉教授・小堀桂一郎 こぼり けいいちろう)
2018.8.15 07:52更新
【正論】
戦後73年に思う 改憲の動きを平成の証しとせよ 駒沢大学名誉教授・西修
https://www.sankei.com/column/news/180815/clm1808150003-n1.html
「政争の具」と化した審査会
いったい、この沈滞は何なのか。6月27日、自民党、公明党、日本維新の会および希望の党4党が共同で提出した憲法改正国民投票法(以下で国民投票法)改正案は、まったく審議されることなく、国会が閉会した。
同改正案は、(1)商業施設における共通投票所の設置(2)期日前投票事由に天災や悪天候を追加し、開始、終了時刻の繰り上げ、繰り下げの拡張(3)洋上投票者の水産高校実習生らへの拡大-など、平成28(2016)年に、投票者の便宜をはかるためになされた公職選挙法の改正事項を、国民投票へ反映させようというものである。
なんら反対する理由はないはずだ。それゆえ、もともと国民投票法に反対する共産党、社民党を除き、立憲民主党も国民民主党も、5月の段階では、大筋で了承する方向にあった。
けれども、6月に入り、両党は、森友学園や加計学園に対する政府の処理をめぐり、慎重姿勢から明確な反対へと転換し、結局、両院の憲法審査会で実質審議は行われなかった。憲法審査会の運用は、国会での与野党の対立とは距離をおくのが伝統ではなかったのか。いまや「政争の具」と化してしまっている。
前国会での衆参憲法審査会の会議状況をみると、衆議院憲法審査会では、第1回(5月17日)は幹事の補欠選任のみで1分間、第2回(7月5日)が自民党からの国民投票法改正案に関する提案とその趣旨説明のみで4分間、第3回(7月20日)で閉会中審査に関する件2分間、これがすべてである。
参議院憲法審査会にあっては、第1回(2月21日)…憲法改正に関する考え方の意見交換(2時間7分)。第2回(5月23日)…幹事の補欠選任(1分間)、第3回予定(6月20日)…都合によりとりやめ。第3回(7月20日)…請願の審査(1分間)。以上のうち、第1回の意見交換は、それぞれの委員が自説を述べただけで、議論の深まりはみられない。
国民に分かりやすい案文提出を
こうしてみると、憲法審査会はまったく機能していない。両院に憲法審査会が設けられてからすでに11年が経過している。まさに「眠れる」審査会である。信じられない怠慢ぶりだ。
とくに立憲民主党の非協力的な姿勢が目立つ。「立憲主義を理解していない安倍晋三首相の下では協力できない」が枝野幸男代表の基本的立場であるが、筋違いである。内閣は、国民投票法上、憲法改正の発案権もなければ審査に加わることもない。国会議員のみが行う。
国民主権行使の場として、国民が投票しやすい環境を作ることが、国民から負託を受けた国会議員のとるべき態度であろう。「立憲」の名の下に、「非立憲」的態度がとられているように思えてならない。
このような憲法審査会の沈滞には、自民党にも責任の一端がある。同党は3月24日、憲法改正に関し、優先的に取り扱うべき4項目を決定し、条文イメージ(たたき台素案)を発表した。
たたき台素案というごとく、生煮え感は否めない。ことに自衛隊明記の素案は粗雑である(拙稿本欄平成30年5月1日付)。安倍首相(自民党総裁)は8月12日、長州「正論」懇話会で、秋に予定されている臨時国会へ自民党案の提出を目指す意向を表明した。改正に前向きな他党の意見も取り込み、国民に分かりやすい、精選された案文を提出すべきである。
タブーのない論議が不可欠だ
「平成」はあと残りわずかである。平成における憲法論議で特筆されるのは、19年5月に国民投票法を制定したことである。秋の臨時国会では、平成のなした証しとして、改正案を成立させ、国民投票に向けた確かな一歩を刻まなければならない。
戦後73年、日本国民は多くのことを学んできた。また多くのものを改革してきた。日本国憲法は、その「押し付け性」を否定できない。戦後最大の課題は、日本国民自身の手で、日本国憲法を国情に適した形で改善する点にあることは論をまたない。
枝野代表は、『文芸春秋』平成25年10月号に、集団的自衛権の行使を認める憲法9条の改正案を提示しているではないか。共産党は、憲法改正についての最終表明として、昭和21年8月24日、「憲法9条は、民族独立のため、反対しなければならない」と公言したではないか。
われわれは、これらの見解を包括し、タブーのない憲法論議を展開していくことが求められている。それが成熟した民主主義国家の憲法論議のありようである。戦後、70年以上を経て、われわれは成熟した国民に成長していることに胸を張ってよい。無意味なレッテル貼りをやめ、真に日本国民のための憲法を模索していこうではないか。(駒沢大学名誉教授 西修 にしおさむ)
2018.1.11 11:45更新
祖国守る自衛隊が違憲の愚かさ 国際情勢から乖離する日本の安全保障観、憲法改正が急務
http://www.sankei.com/column/news/180111/clm1801110009-n1.html
激動する国際情勢の中、日本国憲法の安全保障観は、厳しい現実からあまりに乖離(かいり)している。日本国憲法では、その前文で「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とうたい上げている。(夕刊フジ)
そもそも、自らの安全と生存を、他国民によって保障してもらおうという発想自体が、批判されて然るべきであろう。だが、百歩譲って、仮に日本の周囲に「平和を愛する諸国民」しか存在しないというのならば、この憲法の安全保障観はそれほど非現実的とはいえないかもしれない。
しかし、わが国を取りまく諸国を眺めてみれば、到底「平和を愛する」とは思えない国が存在していることが明らかだ。独裁者が支配する北朝鮮は、次のように日本を威嚇した。
「日本列島の4つの島は、チュチェ思想の核爆弾によって海に沈むべきだ。もはや日本は私たちの近くに存在する必要はない。これが怒れる朝鮮軍と人民の声だ」
「日本を核爆弾で海に沈める」「日本の存在が不要である」と、国家が公式に発表しているのだから穏やかではない。仮に、北朝鮮の「公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しよう」とするならば、そこには戦略も戦術も、そして理性さえも存在していない。自らの安全と生存をないがしろにする、恐るべき狂気の安全保障政策であろう。
わが国の平和は、憲法が描き出す楽観的な安全保障政策によって守られてきたのではない。わが国の平和を保障してきたのは、精強な自衛隊の存在、そして強固な日米同盟の存在があったからだ。
本来であれば、憲法9条によって「戦力」を保有できず、「交戦権」も有していない日本は、魔術師のように解釈を変化させることによって「自衛隊」を合憲と位置づけてきた。
だが、虚心坦懐(たんかい)に憲法を読み、自衛隊を保持できると思う国民は少ないであろう。多くの憲法学者も、自衛隊を「違憲の存在」と位置づけてきた。日本共産党はいまだに、自衛隊を「違憲の存在である」と主張し続けている。
日本を守るために、日夜汗を流している自衛隊の存在を憲法上に明記するのは当然のことだ。本来であれば、9条の第2項を削除し、わが国も「戦力」を保有すべきである。
しかしながら、9条第2項の削除が現実的に厳しいのであれば、第3項に自衛隊を位置づけるべきであろう。祖国を守る人々の存在が違憲の存在であるなどという、愚かな言説が飛び交うような奇妙な国家であり続けてはならない。
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『逆説の政治哲学』(ベスト新書)、『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)など
2018.8.11 21:42更新
【自民党総裁選】
石破茂氏「何も変わらぬ改憲してどうする」 安倍晋三首相と対決姿勢強める
https://www.sankei.com/politics/news/180811/plt1808110021-n1.html
9月の自民党総裁選への立候補を表明した石破茂元幹事長は11日、鳥取県米子市で開いた国政報告会で「総裁選は参加することに意義があるのではない。次の時代のために何としても勝たねばならない」と訴え、党員票獲得に注力する考えを示した。
また、安倍晋三首相が求める憲法9条への自衛隊明記を念頭に「(自衛隊の権限などが)何も変わらない改憲をしてどうする」と述べ、首相との対決姿勢を強めた。