マーティン・ウルフと言う男が書く、米国の事態とは、
メデイアが引導した欲望が書かれている。
英フイナンシャルタイムズの意見と見える。
米国の緊急性を秘めた問題は、「新型コロナ対策」、
それともう一つは「米国の分断」と言う事実である。
米国の「バイデン独裁」はかなりの点で、同盟国や
友好国にとっては、死活問題を含んでいる。
マスコミ記事には、「バイデン独裁」と言う文字が頻繁に出てくる。
米国民主党の進めるトランプ弾劾とは、悪魔裁判に見える。
米国の分断が増加する事態に、メデイア不信を強く感じる。
米国という共和政国家の臨死体験
大統領が企てたクーデターの衝撃――マーティン・ウルフ
2021.1.26(火) Financial Times
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63799
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年1月20日付)
ナルド・トランプ氏はホワイトハウスを去った。しかし彼が米国の民主主義に残した爪痕はあまりに深い
起きたことは、以下の通りだ。
米国のドナルド・トランプ大統領は何カ月もの間、何の裏付けもなく、公正な選挙で自分が負けるはずはないと断言していた。
案の定、敗北すると不正な選挙のせいにした。この主張には今でも、共和党支持者が5人に4人の割合で同意している。
大統領は、選挙結果を覆すよう各州の当局者に圧力をかけた。
これに失敗すると、今度は各州から送られてきた大統領選挙人の投票結果に目をつけ、副大統領と連邦議会議員を脅してこれらを却下させようとした。
さらには、その求めに従うよう議会に圧力をかけるために、議事堂を襲撃するよう扇動した。
その結果、約147人の連邦議会議員(うち8人は上院議員)が、州から提出された投票結果を却下することに賛成した。
「大嘘」が反乱に発展
端的に言えば、トランプ氏はクーデターを企てた。
もっと悪いことに、共和党支持者の大多数は、こうした行動を取ったトランプ氏の理屈を受け入れている。ものすごい数の連邦議会議員が同調した。
クーデターが失敗したのは、裁判所が証拠のない訴えを棄却し、各州の当局者がきちんと務めを果たしたからだ。
だが、歴代の国防長官10人は、選挙に関与しないよう米軍に警告する必要性を感じた。
筆者は2016年3月、トランプ氏が共和党大統領候補に指名される前から、この人物は重大な脅威になると論じていた。
トランプ氏が、偉大な共和政国家の指導者に求められる資質を全く持ち合わせていないことは明らかだった。
ところがその後、甚だしい不適格さを補う「欠点」があることが判明した。
ある民主主義国について次のような話を聞かされたら、読者はどう反応するだろうか。
現職が明らかな敗北を喫した選挙が不正に行われたものだったという「大嘘」、この嘘を拡散した偏向メディア、それを信じた有権者、反乱を起こした暴徒による議会襲撃、そして、その嘘が作り出した疑惑に対処するために選挙を中断しなければならないと主張する議員たち――。
恐らく、この国は死の危険にさらされていると結論づけるだろう。
米国は多数決主義の国家ではない。小さな州はその少ない人口に見合わない議決権を持ち、人種差別による投票権行使抑制の歴史がある州すら存在する。
しかし、誰が政権を握るかは選挙で決めることになっている。
2大政党の片方の支持者の大半が、自分たちが負けた選挙は「盗まれた選挙」だと考えたら、果たしてこの仕組みは機能するだろうか。
平和的に権力を獲得し、正統にこれを保持することなど、できるものか。どちらが政権を担うかを決める要因は、暴力しか残らない。
ポスト・トゥルースはプレ・ファシズム
米エール大学のティモシー・スナイダー氏が主張するように、「ポスト・トゥルースはプレ・ファシズムであり、トランプが我々のポスト・トゥルース大統領だった」。
もし真実が主観的なものなら、力が物事を決めるしかない。そうなれば、本当の意味での民主主義は存在し得ない。
互いににらみ合う乱暴者の集団が複数できるか、ボスが率いる圧倒的に大きな集団が1つできるかのいずれかだ。
米国という共和政国家の国際的な信用にとってこれがいかにひどい時代だったか、そして世界各地の独裁者たちをいかに喜ばせてきたか、楽観論者であっても同意せざるを得ないだろう。
しかし、楽観論者は次のように言うかもしれない。
米国は厳しい試練の時代をくぐり抜けてきた、今度もまた国内外で約束を新たにする、ちょうど1930年代に、今よりもはるかに危険だった時代にフランクリン・ルーズベルトがやったように――。
残念ながら、筆者はそう思わない。共和党は扇動のせいですっかり堕落してしまっている。
筆者が本稿を書くや否や、左派の暴力や社会主義者についての不満が語られ始めることは分かっている。
しかし、民主党の主要メンバーには、トランプ氏に相当する人物は絶対に見当たらない。プレ・ファシストがいるのは右派の方だ。
もっと悪いことに、トランプ氏自身は病原体ではなく症状でしかない。ジェームズ・マードック氏は先日、次のように語った。
「議会議事堂の襲撃は、我々が危険だと考えていたものが本当に、恐ろしいほど危険であることを証明している。視聴取者に嘘を広めてきた放送局は、気がつかないうちに拡散して手に負えなくなる勢力を野に放った。連中はこの先何年も、我々の近くに居続ける」
父親のルパート・マードック氏が築いた、あの有害なフォックス・ニュースのことを言っていたのだろうか。
共和党が進む道
トランピズムのポスト・トゥルース的世界の創出において右翼メディアのバブルが一役買ったことは明らかだ。
富豪が資金を提供した「制度内への長征」についても、同じことが言える。
この長征によって作り出された司法部門は一般庶民の武装、目に見えない政治献金、そして格差の拡大をもたらし、民主的な安定性を危険にさらしている。
最も厄介なのは、減税や規制緩和の実行に必要な有権者の支持を集めるために、人種による分断の政治という、米国史の非常に不愉快な一部分を共和党のエリートが兵器として利用したことだ。
早すぎる「絶望死」を経験しているのは、大学卒の学歴を持たない白人たちだ。しかし、右翼の真の敵はリベラル派であり、社会における少数派民族だ。
右派の政治が今の姿を保つ限り、大統領選以降に露わになった危険性が消えることはない。連邦議会の共和党議員は、ジョー・バイデン新大統領を失敗させようとするだろう。
狂信的な議員と、自分の出世を何よりも重視する議員は手を組み続ける。常軌を逸した右翼プロパガンダも吐き出され続けるだろう。
そのような運動が次の大統領候補に選ぶのは、果たしてどんな人物か。ミット・ロムニー氏のような従来型の保守政治家だろうか。そうではあるまい。
トランプ氏は道を示した。今後は多くの人々がその道をたどろうとするだろう。
あれほど多くの共和党議員が連邦政府を失敗させたり富める者をさらに富ませたりすることを目標に掲げている限り、同党の政治はそのように機能するに違いない。
歴史の大きな転換点
我々は歴史の重要な転換点にさしかかった。
米国は世界で最も強く、最も大きな影響力を誇る民主的な共和制国家だ。過ちや欠点がどれほどあっても、世界の手本であり、民主的な価値観の守護者だった。
トランプ氏の指揮下で、これが消え失せた。トランプ氏は一貫して、この共和制国家の理想に体現された価値観や願望に敵対していた。
トランプ氏は失敗した。しかも、同氏がクーデターを企ててから、同氏の脅威が現実のものだったことを誰も否定できなくなっている。
だが、それでは十分ではない。もし米国の政治が今後、大方の予想通りに展開していくなら、トランプのような人物は増えていく。
そのなかには、トランプ氏本人よりも有能で無慈悲な人物がいて、成功を収めるかもしれない。
そのような事態を阻止するのであれば、米国政治は今こそ、真実を重んじる姿勢と排他的でないタイプの愛国主義へのシフトを断行しなければならない。
共和政を取っていた歴史上最後の超大国はローマだったとされる。しかし、富裕層と権力者が共和政を破壊し、軍事独裁政を敷いた。
米国が誕生する1800年も前の話だ。米国という共和政国家はトランプの試練を生き延びた。だが、まだ死の淵から救い出してやる必要がある。