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平成17 年度地域保健総合推進事業「医療安全対策と健所機能強化に関する調査研究」
山梨県中北保健所長 古屋好美
【目的】「今後の医療安全対策について(医療安全対策検討会議)」をふまえて、保健所の体制や人員などの医療安全に関わる現状と基盤整備すべき課題を明らかにし,医療安全相談対応能力強化や医療機関との新たな連携等の先駆的な取り組みを試み,全国の保健所における医療安全対策推進能力向上に寄与する。
【方法と結果】医療安全対策のテーマで、研究班において3つのサブテーマを設けて検討した。
a) 「院内感染予防・医療事故防止対策推進と保健所機能強化」(古屋グループ):現行法の範囲で、研究班が一定の整理を行って、全国の547 保健所および47 都道府県・14 指定都市衛生主管部局の意見を調整するため、医療安全対策推進に関する現状と課題や考え方について質問紙調査した。
(1) 全国の保健所は法令等に基づき、医療機関への立入検査や住民からの医療相談の充実に努力してきた。また、先進的に対策を行っている保健所がある。保健所の医療安全対策強化への意識は高まっている。
(2) 二次医療圏ごとの医療安全支援センターは、設置済みと設置予定を合わせて43.6%である。業務を行うための整備条件、本庁と保健所との役割分担を整理した。医療相談件数は県型保健所では少ない。
(3) 地域保健医療計画における医療安全の記載が十分かどうかは保健所と本庁の考え方に相違がある。
(4) 医師臨床研修で医療安全を教える頻度が管轄人口に関連がある。保健所に院内感染または医療事故の届出を受けたことがあることと、相談されることとは、それぞれ関連がある。
(5) 医療事故の届出について、将来的に保健所は「積極的に受ける」30.0%、「なるべく届出て相談」36.8%、「自主的報告」18.1%である。医療事故の原因分析、裁判外紛争処理および患者救済等の制度について、「主に第三者機関」73.9%、「役割分担すべき」15.0%である。さらに、医療事故の原因分析、裁判外紛争処理、患者救済制度のいずれにおいて、「保健所はその結果のみ情報提供を受ける」という回答が最も多かった。
b) 「医療相談対応能力における保健所機能強化」(石田グループ):医療情報を医療従事者と患者が共有し,患者の医療への主体的参加を促進するための事業を行った。その結果、住民の関心は高く、保健所が医療情報を継続的に住民に提供していくことが重要であることが明確になった。
c) 「病院の医療安全会議への参加を通じた医療事故防止体制評価と支援対策」(寺本グループ):病院の医療安全対策会議に保健所職員が参加してインシデント・アクシデント事例を収集、分析・改善の実態を把握し、医療機関との新たな連携を試みた。その結果、もっとシステムに着眼して関わる必要があることがわかった。
b) c) の試みについて情報共有することで、保健所の医療安全対策推進能力向上に寄与できると期待される。
【結論】今後の保健所の医療安全に関わる具体的な役割およびその実現のための基盤整備に向けて提言する。
1) 今後さらに立入検査や医療相談体制の充実を図るためには、法整備と予算、教育・研修、専門的情報提供体制、情報発信体制等の整備が望まれる。
2) 二次医療圏ごとの医療安全支援センター業務について、人員・組織体制、担当者の研修、担当以外の職員の理解と協力、実効性ある医療安全推進協議会の運営等の整備が必要である。その際、本庁と保健所との役割分担、管轄人口や医療相談件数の少ない県型保健所に対する配慮が必要である。
3) 地域保健医療計画策定において本庁と保健所双方の意見を集約し、医療安全対策を具体的に位置付けることが重要である。
4) 院内感染や医療事故の届出や相談においては保健所と医療機関との信頼関係がポイントであり、いっそうの信頼関係を築きたい。
5) 医療安全対策を保健所の優先的で重要な業務とする場合は、業務優先度見直しが必要である。
6) 「地域住民の身近にある保健所を活用して、医療安全・医療の質の向上を図ることは医療への信頼を高め、地域の医療安全文化を醸成し、また新たな機関を創設するよりも経済効果が高い」と、多くの保健所および都道府県・指定都市衛生主管部局は考えている。わが国の総合的な医療安全対策を構築するに当たっては、このことを関係各機関と共有し、連携・協働を検討することが必要である。
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