記事の要点
・4ヶ月間入院したリハビリ病院について
・問題が多かったリハビリ病院
・脳出血を経験した医師の話
・資料ー脳卒中患者の現状
残念ながら私の体験談はネガティブだ。同様の感想を書く、脳卒中体験者である医師の言葉も紹介します。他のリハビリ病院では、こんなことが無いことを切望したい。
筆者は体系的な医療教育を受けたことはなく、医療関係事業を抱えない企業で働いている。だから知識と経験は少ない。
ただ4か月間リハビリ病院に入院した。24時間見聞きした体験と主観的な感想である。
だが、限られた見聞に過ぎないが感じたことは事実なので書いてみることにしました。
むすび
手を上げようとしても、だらりと垂れる。
体が自分の思い通りに動かない。
死んでしまう? 大泣きしながらこのままでは終わりたくないと心底思った。
リハビリ病院入院した2日目から「誰より早くリハビリセンターにやって来て、誰よりも遅くまでリハビリセンターにいる」(9時オープン、17時クローズ。元旦含めて休みなし)と言われるぐらい頑張った。病室に戻るのは昼食時のみ。
退院前に「お世話になりました」と筆者に声をかけた職員たちがいた。筆者が「この職場にいればすぐに私の上司になる」と言う職員がいた。熱烈なファンもいた。
リハビリ病院の120日間、熱い日々を過ごした。
高額の費用を個人(月14万円)と保険組合(月135万円)が払っている。さらに国保の場合は税金を投入しているのだ。
医療に対する期待と実態のギャップ感は大きかった。振り返ればICUからリハビリ病院でお世話になった関係者、ひとそれぞれであった。
今でも思いだす気分の悪くなるダメ行動から素晴らしい行動まで、人間が引き起こしている。
意識の高い系の素晴らしいひとがいることが希望である。
職場復帰するには自分の努力(強い自力更生意思と協力者を探し、恵まれる幸運)がモノを言う。つまり、体制は整備されていない。発症から治療、回復まで運任せの世界だ。
リハビリ病院での具体例を紹介
●「どうせ、ズボンを両手で上げられないんだから」。
今でも忘れられない不愉快な発言だった。
片麻痺の患者は、両手を健常者と同じ使い方ができない。麻痺する側の腕は不自由だ。
ズボンを健常者と同じように両手を使って上げられないのだ。
この状態の時、リハビリ中に浴びせられた言葉だ。発したのは40歳代のベテランで、同僚から尊敬されていた。
●ある言語聴覚士は話しの内容がチクチクと心に刺さり不愉快過ぎて、ストレスが高じた。脳梗塞後なので、それは避けたい。だから担当しないようにしてもらった。
患者は療法士を選べないが、できる限り自分のやりやすいように環境を変えた。
●作業療法士からは「それだけ箸を使えればいいじゃないですか」発言にも出会った。
患者に気休めにならない。不愉快だった。
●ため口を聞く職員がいた。これにも不愉快で閉口した。リハビリ担当職員に、医療技術を教える前にマナー教育が必要だ。
この件では、奥様もすぐ隣で、わたしの担当職員と先輩職員が話しているのを聞き、内容前に言葉の程度が低くて驚いたと今でも言っている。
*担当職員は内心では、この先輩を快く思っていないことが後で分かった。
●患者の個人情報が患者間に漏れた。これもまた驚きだった。
病院内には個人情報の扱いを告知する案内があったが、職員には徹底されていなかった。
ある作業療法士から、ここの職場が「アルバイトしていた職場(=パチンコ店)よりも個人情報の扱いがルーズ」と教えてもらった。
●わたしのリハビリ担当者が、筆者の仕事を病室にいる奥様に聞きに来た。
えっ!奥様からこのことを聞いた時、絶句した。何度も担当者に説明したつもりだが、理解できなかったようだ。
退院間際に、経営企画の仕事がよく分かりましたと作業療法士が言っていた。
ちょっと不思議ではありませんか!
わたしが復職する仕事内容が、事務なのか立ち仕事なのかということより、職務自体をイメージできない。
出勤してすることはまずパソコンを立ち上げ、帰宅前にパソコン電源を落とす。
対面の打ち合わせ・会議以外は、パソコンで済む。
これを言うと、担当者はびっくりしていた。
●拘縮(筋肉が固まり、動かなくなる)にならないよう教えなかった。
杖を力強く握り過ぎて、未だに拘縮症状が残っている。
針灸治療の効能(針灸治療を始めるまでに2年間の空白が生じた)も教えなかった。
さらに、麻痺している手足は血流が悪いので冷たい。これを予防・保温してくれるレッグウォーマーの存在を教えてくれなかった。これを使うと急改善した。
*細部のことのようだが、私には重要なことだった。結局、患者体験がない医療者には限界があるとの認識に到る。
●病院への費用支払い金額は、健保負担金額が約135万円、自己負担金額が約14万円(食事代などは自己負担。どちらも月額)だった。
費用に比べて一日のリハビリ時間が少ないと文句を言う患者さんがいた。
また、リハビリ病院で治療を受ける期間も最大6か月間の制限がある。
●回復期リハビリ病院だけでは、就労世代の後遺症患者が職場復帰するのが難しい。この点も社会的な課題だと感じた。
制度に起因する日本医療全体の問題なので、現場の職員たちだけに責任がある訳ではない。
●大事な事実がある。療法士の給与水準である。担当してくれた理学療法士が教えてくれた。
「新卒の看護師よりも(30歳)私の方が給料安い」
リハビリ医療診察報酬を算定するための人件費が低いので、薄々知ってはいた。
労働内容に比べて賃金低い看護師(日勤夜勤、土日盆暮れ正月なし)よりもさらに低いのだから、優秀な人材は集まらない。
下図は医師を除く医療現場で働く労働者の給与
この賃金グラフを見てください。
出所 日本経済新聞。
●ある理学療養士から聞いた話。リハビリ職員養成学校の新設認可が増えた。資格試験が易しくなった。理学・作業・言語聴覚療法士が急増している。若い人たちに教える人がいない。
この話を聞いて、モヤモヤの一つが解消した。
もっと勉強をして欲しかった現場だ
あくびしながら、2~3分だが時間に遅れてやって来た職員を叱ったことがある。それ以降、どの職員も小走りでやって来るようになった。
また、予定を勝手に変えることを注意した。
リハビリセンターの床は汚れていた。素足になると足うらが汚れた。そのたびに職員に注意をした。そのたび、筆者近くだけモップ掛けしていた。
入院中に4月を迎えた。
新卒が入職すると多くの職場はすぐに見分けがつく。しかしここでは、在籍する職員が若いので、一見するだけでは、新人と先輩職員の違いが分かりずらかった。
筆者にはもっと勉強して欲しいと思った現場だ。職業経験の前に人生経験が足りない。最低限の医療技術は習得していても、患者への接し方を教えられていないのかもしれない。
みんな患者の役に立ちたい気持ちはあるので、良い上司に恵まれれば伸びるだろう。
一緒にリハビリした患者さんたちは、少しでも後遺症から回復しようと必死だった。(わたしを)病室まで追いかけてまで質問した患者さんもいた。
仲間が少しでも自分より回復していると分かれば、その理由を知り、自分も真似しようと、必死なことが空気で伝わる。現場は、そういう患者たちで一杯だった。
病室ベッドで、「私は患者なんだ。今日はリハビリしたくない」と言っていた現場も知っている。
そういう現場で屈辱感を味わさせられるのは残念だった。3人とも女性だった。
*理学療法士(PT)は男性が多く(入院患者の半数は高齢女性)、作業療法士(OT)は女性が多数、言語聴覚士(ST)は全員が女性。入院していたリハ病院は概ねそういう内訳だった。
療法士は70人以上いた。平均年齢は20代。担当していた理学療法士が突然出勤しくなったこともあった。
理由は不明。信頼関係を築くのは難しい。筆者は自分でもリハビリ方法を模索した。
もちろん、患者のプライドを傷つけないように気を配る職員もいた。大多数は、患者の役に立つように動いていた。少なくとも気持ちはそうであった。
また、リハビリ医療に知識のない筆者に、回復するためのきっかけを与えてくれたのもこの現場である。
リハビリとはアビリティー(能力)を再び取り戻すことだ。脳の機能を取り戻そうと思ったら、脳を使えばよい。今までできていたことなら、そこまでつながる道筋が脳にはある。それを呼び戻せるのは、自分以外にはいない。脳卒中を体験した医師山田さんが書く通りだと思う。
筆者が使った介護箸。右手が不自由でも使いやすかった。入院後しばらくは、右手で箸が持てないので左手でスプーンを使っていた。
まだ車いす利用だったころ使用した。
一緒にリハビリしていたおばちゃんが使用していた。
同じ感想を書く患者=脳内出血と脳梗塞を経験した医師
世間はどこもバリアだらけと、書くのは「崩れた脳 生存する知」(角川ソフィア文庫)の著者である山田さんだ。彼女は脳内出血なのだが脳卒中の同じ体験者として共感して読んだ。
横柄な医師、高齢の患者さんをまるで赤ん坊か幼児と勘違いしているかのような看護師など、患者を自分よりも劣った人間のように扱う医療関係者が多いことも、患者の立場になってあらためて実感した。
日本には、少数の例外を除いて、この病気をきちんと理解している医師はほとんどいない。専門的に治療が行える医療機関も極端に少ない。
リハビリとはアビリティー(能力)を再び取り戻すことだ。脳の機能を取り戻そうと思ったら、脳を使えばよい。今までできていたことなら、そこまでつながる道筋が脳にはある。それを呼び戻せるのは、自分以外にはいない。また、自分自身がいちばん優秀なリハビリコーディネーターになれるはずだ。専門家の言うことはあくまでも参考意見としてありがたく聞いて、自分の症状にきちんと向かい合ってみることを、脳卒中患者のみなさんにはおすすめしたい。
(青字は本から引用)本全体に医師でありながら医療関係者への厳しい指摘がある。
何とか元の体に戻ろうと、もがいている患者ばかりなので、セラピスト(山田さんは、療法士をこう呼ぶ)として支援して欲しい。
なお、「奇跡の脳(脳科学者の脳が壊れたとき)」もお勧めです。
彼女も脳内出血を起こした。8年間リハビリに励み、職場復帰したそうである。
(参考資料)脳梗塞と脳内出血患者の現状から
病床全体の数は厚労省の方針により減少しているにもかかわらず。リハビリ病床は増えている。
出所 回復期リハビリ病院協会
リハビリ病床数が増えるのは需要があるからだ。医は算術の側面もある。根本として、国民厚生経済から医療と介護の全体最適は避けて通れない。
*数字から読む日本の医療 - 天星人語 (goo.ne.jp)
脳梗塞による死亡人数は年間6万2千人
脳卒中(脳内出血+くも膜下出血+脳梗塞。統計では脳血管疾患)の発症者数は年間29万人で、死者数は、年に11万人ほど。死亡原因別死者数の第三位だ。
死者数は、脳梗塞が6万2,122人(男性2万9,494人、女性3万2,628人)。脳内出血は3万2,654人(男性17,881人、女性14,773名)、くも膜下出血で亡くなった方は1万2,307人(男性4,535人、女性7,772名)、その他の脳血管疾患が2,797人という結果だった。*厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」(2017年)
脳卒中の発症者は、年間29万人
それでは毎年どれほどの人数が新規に発症しているのであろうか? 公的な統計は見つけられなかった。滋賀医科大学の研究調査による推計では、初発が22万人で再発が7万人だとしている。
さらに、 脳梗塞は要介護・要支援になる主な原因となる
出所 滋賀医科大学
同じく滋賀医科大学の推計によれば、脳梗塞患者の46%は、退院後の生活において、何らかの介助が必要である。重度の場合は、しゃべれない+筆談できないので、意思を伝えられない。涙をうっすらと浮かべているだけの状態になる(怖いが筆者は知っている)。いうことを聞かない体に、筆者も大泣きした。
出所 日本経済新聞
いやいや、日本の大社会問題である。人間は高齢になれば介護問題を誰しも避けて通れない。認知症と並んで、脳卒中が原因となることが多い。安全で有効な予防方法と治療方法が待たれる。
出所 厚生労働省
さらに、総患者数(継続的に医療を受けている者)は推計111万人だ。統計で分かる通り、働き盛り(40~59歳)の患者数が少なくない。約16%が就労世代(20~64歳)とされる。*日本経済新聞
就労世代比率は低いが、一定数はいる。リハビリ病院で一緒だった。「もう死にたい」と漏らすひともいた。就労世代の職場復帰を支える体制は十分でない。今はコロナ後遺症に苦しむ就労世代問題もある。筆者の仕事を理解できなくて、内緒で奥様に聞きに来ていたという事実もある。
*就労世代の後遺症と職場復帰 - 天星人語 (goo.ne.jp)
リハビリ医療のイメージ
上図がリハビリ病院・リハビリ医療の平均的イメージを表す。全国調査によるリハビリ病院に入院した患者の平均年齢は76.9歳で、男女比は42.3/57.7なので、女性が多い。平均入院日数は3か月だ。
この寒さです。重々ご自愛下さいませ。
当事者の声を出して行かないと!と強く思います。
病院で違いが大きい事をどうにかして欲しいと思います。
私はまた恵まれていました。
私の入院した頃とは、医療の環境は変わった所もあるので、厚労省には、実態にあった方策を実行して欲しいものです。
拙いブログ『片麻痺お気楽日記』に、いろいろ書いて来ました。
貴方様も、思う事を発信されて下さいませ。
書き込み、ありがとうございます。
書き込みありがとうございました。