時代背景は60年安保、ハガチー事件から所得倍増計画発表へ、そしてアメリカでは43才のケネディ大統領誕生、北海道では北方領土問題が特攻船やレポ船などの問題を生んでいる。信介は江差で知り合ったオーストラリア人のジョン、新宿2丁目で知り合ったカオル、函館の元新聞記者西沢洋平らとともに対ソ連問題に巻き込まれる。信介を追って江差に来た岸森は組織からの粛清を受け視力を失うが、江差でバーを営んでいた立原百合江とジャズ喫茶を開店して江差で暮らすことを決心する。信介は百合江の娘で17才の美少女襟子に気に入られ関係を持つようになるが、ジョンの勧めで海外に旅することを夢見て、チャンスを伺う。東京では歌手としてデビューした牧織江がプロとして芽を出しかかっている。織江から信介は何回かの手紙を受け取り、織江の信介への変わらぬ思いを確認するが、海外への憧れを心の中で育て続けている。
こうした中で、函館で出会ったレポ船の後ろ盾となっている影之原隆元と元新宿二丁目で娼婦だったカオルがその秘書になっており、さらには公安警察の安川という人物も絡んできている。対ソ連政策では、日本政府の立場は北方領土返還を要求、影之原も同様の立場で表向きは活動しているが、裏ではソ連への情報提供の元締めでもあり、複雑な動き。そうした中で、西沢がレポ船の存在を社会的に追求しようとする動きが影之原の眼に止まり、この動きを牽制しようとする中で、信介、ジョン、そして西沢にハバロフスクに行ってみることを持ちかける。西沢の元同僚で、西沢が死んだと思い込んでいる伊庭敬介がハバロフスクで影之原の手助けをしている、ということを持ち出し、彼に会って真実を知ってほしい、というのである。信介のことが好きになった襟子はこれを知って、自分も連れていくように信介に迫る。
信介と織江の青春ストーリーは過去のものとなりながら、信介の勝手気ままな思いつきに従ってストーリーが展開するような、若者は無茶なことをしてみるものだ、というインテンションがあるような、今後の展開が読めない。週刊誌での連載では、この先の風雲編で、ハバロフスクへ渡り、すったもんだがあった後に、信介はハバロフスクで知り合ったロシア人娘アニョータとシベリアを横断してポーランドを目指すらしい。しかし連載はその時点で中断したままである。拡散したストーリーをどうまとめていくのか、五木さん、長生きして欲しい。
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