下巻では、急に思いついて同志社大学を中退してアパートも引き払い東京に身一つで出かける。アテはないが、とにかくなんでもいいから仕事をしたい、というまったく呆れるようなおもいつき。20歳の男がこのような行動を取るのが信じられない。所持金は4万円、池袋の麻雀屋で雑用をする。そしてある時毎朝朝飯を食っている喫茶店で毎日見かける男、坂本に声をかけられそのアパートに転がり込む。そして坂本のツテでホストクラブで働くようになるが、バカらしくなりすぐに辞める。坂本はせっかく紹介してやったのにと大迷惑である。そしてそのうちに右翼的な男と飲み屋で意気投合し、次の日からその男が経営する運送屋に働くようになる。しかしここも、右翼の街宣活動を手伝わされて、殴りこみを手伝わされることになり嫌になって逃げ出す。そしてパチンコ屋の住み込み、そしてそこも飛び出す。そして働くようになったのがレコード屋、ここはしばらく続いた。クラシック音楽売り場に配属され、全く興味が無い世界だったが、次第に本を読んだり、音楽を聞くうちに興味をもつようになる。店長に、アメリカのレコードを輸入してみたらどうかと持ちかけて任せてもらうことになり張り切る。そのころ街で出会った女性、山本一枝と親しくなり同棲するようになるが、強引な作田に飽き飽きした一枝はある日いなくなる。
輸入の話が進み始める頃、レコード屋にアルバイトに来ていた慶應大学生の依田聡子と知り合う。聡子にはアメリカに婚約している男性がいるということで、作田も聡子には手を出そうとしない。しかし、聡明な聡子にだんだんと惹かれるようになった作田、しかし聡子はアルバイトを3ヶ月でやめてアメリカに渡るという。そうなれば仕方がない、もう逢えないと諦めかけていると、聡子が思わず作田に会いに来る。来週アメリカに行く、その前に作田に会いたかったというのである。作田の気持ちは爆発する。そして聡子と愛しあうようになる。又三は有頂天になり、聡子を手放すまいと誓う。そんな時、大阪の祖母が死亡したと連絡があったため1周間大阪に帰り、東京に戻ってくると聡子はアメリカに言ったという。絶望のどん底に沈む作田又三。24歳になっていた。
大阪の実家に帰った作田、しばらくぶらぶらしていると、ある日、北海道の海でタラ漁に励む漁師の姿をテレビで見る。これだ、と思った又三は、すぐさま根室に旅だった。全くアテはない。そしてそこで、しばらく漁業の様子を見る。どうしたら漁師になれるのか。そんなことは無理に決まっている。しかし諦めきれない又三、ある時、密猟でソ連領の貝殻島付近でウニを取ってくる、といういわゆる「特攻船」と呼ばれる存在があることを知る。そして頼み込んでそのメンバーに雇ってもらう。密猟であるので、ソ連の監視船に見つかったら逃げる、そして日本の海上保安庁の監視船からも追われる。しかしうまくすれば一回の出漁で数十万円の稼ぎを手にすることができた。又三はこの密猟に入れあげる。
自分で船を持って人を雇えばもっと稼げるはずだと、借金をして船を買い自分で特攻船の雇い主にもなる。こうした作田を呆れて見ていた年上の女性がいた。それは「帰郷」という名の喫茶店のママだった。特攻船でソ連の監視船に追われて、流氷の上を追い詰められたこともあった。そのせいで足の指を2本失った。ヤクザと組んで、陸上の取り締まり情報を収集して、帰ってくる港を変える、ということも始めたが、ヤクザと組んだのが間違いだった。作田が雇ったメンバーも船もヤクザに取られてしまい、ヤクザに追いかけられる身となった。それを救ってくれたのは帰郷のママ久子だった。久子は母親のように作田を愛してくれた。作田もそうした久子を心の底から好きになった。しかし時が過ぎて、久子は昔トルコで働いていた、と告白した途端、作田は「そんな女と一緒にはなれない」と親切にしてくれた久子を詰った。久子は作田から離れていった。
特攻船では結局1000万円ほどを貯金した。当時とすれば大金である。その金を持って大阪に帰った。びっくりしたのは母や弟達であった。母に300万円渡して、残りは競馬やパチンコ、ゲームで使ってしまった。そしてビリヤード店で働くようになり、そこで働く実直な女性保子と知り合った。島根の出身であったが、気立てがよく、よく気が利いた。作田はそんな保子が気に入った。付き合い始めると、保子は処女だった。大いに気に入った作田は保子と結婚した。保子とはうまく行きそうな気がした。保子は妊娠、しかし流産してしまう。作田は昔の友人の紹介で放送作家のアルバイトをすることになった。そしてレギュラーも持てるようになり収入も増えて暮らしも安定してくる。あるとき、会社の旅行で出かけた作田、その留守に保子は別の男と浮気をしていたことを知った又三は激怒、保子は又三から離れていく。又三は相手の男をさんざん殴り飛ばして、日本を出る。行き先はタイだった。
タイではいわゆる女衒、タイの女性を日本に送り込むという仕事だった。しかし、タイの女性の窮状を知るにいたり、その仕事からも足を洗う。手持ちの金は多くはなかったがしばらくはタイで暮らすことにする。日本からタイまで好きになった女性を追いかけてきた青年を助けるために一緒にヤクザと一緒に暮らしているというその女性を助けに行くということもするが、その女性はすでにその青年のことを愛してはいなかった。貧乏人は嫌いだ、というのがその理由だった。日本に帰ってきた又三、保子を探すが保子の実家に聞いてもその行方は分からなかった。実は保子は別の男性と結婚して子供も生んでいたのである。
波瀾万丈といえばそうであるが、立派な人間がするような生き方ではあるまい。これが百田尚樹の人生だったのなら、「永遠のゼロ」が泣くというものである。
![](http://image.with2.net/img/banner/c/banner_1/br_c_2308_1.gif)