意思による楽観のための読書日記

職場は感情で変わる 高橋克徳 ***

不機嫌な職場の著者の一人による解決策の提示。組織感情マップを示し、組織にありがちな問題の類型化をしている。
1. 仲良し過ぎてぬるま湯
2. 活気があるがつらい
3. 焦りがいらだちに
4. 感情のぶつけ合いでギスギス
5. 関わりを拒否する冷え冷え
6. 無感情

そもそもこうした組織の雰囲気はどのようにして作られてくるのか。これは人間の脳の成り立ちから来ているという。脳は①原始は虫類脳 ②旧哺乳類脳 ③新哺乳類脳
①は不要な接触を避け危険を回避する ②は喜び、愛情、恐れ、怒り、嫌悪で知覚して認知した上で感情として発現する ③は社会的存在としての自己で、動物的直感や感情的には嫌なことでも責任感ややる気というものが介在する一番人間的とも言える部分である。

こうした感情は組織内では連鎖する、という。これが共感というもの。こうして醸成されていく組織内の感情は、組織で活動する際、組織効率に大きな影響を与えるためにコントロールできることが好ましいが、難しい、これがマネジメントの役割の一つである。組織感情は組織の成長、例えば、立ち上げ、成長、成熟、変革という成長フェーズ、それぞれのフェーズでどのような感情を共有したいか、これをコントロールできれば組織としてよりよい働きができるという。

組織感情マップの右上、高揚感はわくわくするような気持ちが持てるかどうかがポイント、共感できる組織ビジョンや目標設定ができれば好ましい。自分でやってみよう、という主体的な感情は自立と自律、自分たちの仕事が社会に役立っていると思えること、関心が持てる、と言うことが重要。みんなで頑張りたい、という連帯感では、仲間と一緒に困難や壁を乗り越えることがきっかけになる。これらが高揚感を支えている。

右下の安心感では、組織内メンバー同士がお互いのことを知り合い、信頼できるかが重要。挨拶、お礼、返事などの基本マナーが安心感を作り出す。支え合い感がない不機嫌な職場の共通項は、タコツボ、情報非共有、非協力。マネジメント同士の経験の共有や助け合いネットワーク構築のミーティング「リフレクション・ラウンドテーブル」が有効。認め合い感では、自分は必要とされている、君が必要だ、というメッセージ交換が有効。

左上の緊張感では、過度なプレッシャーはストレスを生み、行きすぎた緊張感はギスギスした職場を産む。ストレッサーへの対処策は「コーピング」。耐える、逃げるという消極的コーピングと助けを呼ぶ、直接ストレッサーに働きかけて解決するという積極策がある。ストレッサーはそうは変わらないケースが多いので、自分が変わる方が得策であるケースが多い。

左下の冷え冷え感はたちが悪い。第三者による介入が必要だ。

2009年のWBCの日本チームは実力を発揮して優勝した。個人力Xつながり力=組織力の勝利だった。イチローは優勝記者会見で次のように語った。「チームにはリーダーが必要だという発想は安易だ。今回のチームにリーダーは不要だった。それぞれの選手が向上心を持っていれば十分であり、その場合にはリーダーはいないほうが良いくらいだ」

最後に、すべての能力発揮、感情の基礎となることは体と心の健康。健康管理が組織管理の基本である。

これが著者が示した不機嫌な職場をなくす「解決策」。組織長の役割は重要だ、ということ。パワハラ上司などは問題外であるが、世の中には部下に緊張感を与えるのが管理職の仕事と考える人も多い。部下のやる気や前向きな自立心は、ノルマ達成、仕事の締めきり、顧客のクレーム、会社赤字転落の危機など、という緊張感の前に無力なケースも現実には多い。こうしたハードルを連帯感や達成感に変えられるか、これがマネジメントだと思う。
職場は感情で変わる (講談社現代新書)

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