意思による楽観のための読書日記

世代格差ってなんだ 城繁幸、小黒一正、高橋亮平 ***

現代人と太平洋戦争中の世代、そして江戸時代の人々が生活利便性や平等感、幸福感などを比較して不公平である、と言っても致し方ない。しかし、現在生きている世代の間で大きな不公正や不平等があるならなんとかそれらを解消する方向に改革を進めたい。しかし、改革をすすめる政治家の多くは50-60才代であり、30才以下の若者世代、これからの日本を支えるべき世代の声を代表していないではないか、という主旨。

日本型雇用の特徴をサマライズしている。
1. 賃金が年齢給で賃下げが困難
2. 終身雇用慣行で解雇が難しい
3. 年功序列も終身雇用も戦後確立された新しいものである
4. 中小企業は景気動向変化に伴う雇用調整の役割があるが、上記特徴は明確ではない

そしてこれらは若手社員には次のように働く。
1. 年功序列には技術蓄積を進め均質社会を維持するメリットがあるが、そのためには経済成長が必要でありすべての企業でこれらを達成することは難しい。
2. 失われた10年に何が起きたのかといえば既存雇用維持のために新卒採用が抑制され、正社員になった若者世代でさえ、中高年世代の人件費に圧迫されて昇給、出世のハードルが上がった。

こうした世代間格差を解消するためには企業の施策に頼ってばかりではうまくいかない。社会保障制度を見直す必要があると提言する。
1. 世代間格差是正のために世代間公平基本法を制定する。
2. 社会保障の受益と負担の調整を担う独立機関を設置する。
3. 受益水準やベース財源(公債はのぞく)は政治が決定し社会保障予算をハード化する。
4. 世代間公平の観点から社会保障に事前積立を導入、その負担水準や積立の経路は独立機関が決定する。

選挙の仕組みについても提言している。
1. 世代別選挙区制度の導入により、世代代表を一定数政界に送り込む仕組みを構築する。
2. 被選挙権年齢の引き下げにより若者世代からの政界入り機会を拡大する。
3. 政治家に挑戦するリスクを下げて優秀な若手の人材を政界に送り込む。

WLB(ワーク・ライフ・バランス)についても言及する。
1. 出生率と女性の労働力率はプラスの相関がある。
2. 女性の労働環境整備とともに、仕事と出産・育児が両立できる働き方を実現する。
3. 保育への参入規制緩和、幼保一体化などによる待機児童解消が必要。

日本の現在の社会保障制度の欠陥は次の二つ。

1. 終身雇用という企業の仕組みに依存、出産、育児、職業訓練などの現役世代向け社会保障システムが貧弱であり、正社員ではない人たちへの社会保障が空洞化している。
2. 少子化、高齢化の進展で賦課方式が世代間格差を広げ、それ自体が少子化を進める原因ともなっている。

各党のマニフェストについてもそれぞれ評価し、若者世代視点によるマニフェストを提言している。今すぐにでも手をつけなければならない施策が多いのに、現実世界の政治は停滞している。これは政権与党がだらしないだけではなく、政治の仕組みが疲弊化しているからではないか。若者が政治に参加する、意見が反映できる、若者の立場にたった政策が立案され実行される、こうした見方は日本の国力維持のためには大変重要であると感じる。
世代間格差ってなんだ (PHP新書 678)
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