地球上に生命が誕生して以来、大きくは5回の大絶滅があったとされる。直接的な原因は火山の大爆発もしくは巨大隕石落下に伴う気候の大変動であった。それでも少しの生物は生き残り、死に絶えた以前の生物が生きていたスペースを埋める以上の進化を遂げながら以前以上の繁栄を謳歌してきている。本書によれば、生物分類上の、門・綱・目・科・属・種で言えば「科」のレベルの数の増減で、繁栄と絶滅を評価できるという。この分類は、人で言えば脊椎動物門、哺乳類、霊長目(二足歩行ができる)、ヒト科(ゴリラ、オランウータン、チンパンジー、ヒト)、ヒト族(原人、ネアンデルタール人、現生人類)、ヒト(現生人類)となる。
生物の絶滅は火山や地球外からの大きな環境変化で受けた大打撃で決定打を受けるが、実はそれ以前に小さな環境変化圧力を受けながら「科」レベルでその数を一気に増加させ、ある一定数を超えると「科」の数は漸減するのが化石分析などで明らかになっているという。一定量というのはこの地球環境上で生息するのに十分すぎる数に達したときということ。
人類はその一定量を越えようとしているというのが本書の主張。環境変動をCO2が原因とするのがIPCCの主張であるが、本書はその主張に賛否を表明することなく、大きな地球寒冷化温暖化の波は宇宙からの影響、太陽、地球海洋温度変化、地軸の傾きなどが複雑に関係しあって起きるもので、地質学的時間スケールでは一概に言えないとする。それでもここ数百年で起きている地球環境変化は地球上のある一種類の生物、人類によって引き起こされていることは明確であると。しかし、もはや人類が自分の力ですでに起こしてきた地球環境変化をもとに戻すことは、その変化が大きすぎて不可能であり、人類が絶滅を逃れることも不可能である。筆者が考える絶滅モデルによれば、隕石などの外的要因がなければ、現在の哺乳類が絶滅するのは9億年以内、現生人類は数百年以内であると主張、それは6度目の大絶滅に至る一つのきっかけになるかもしれないとする。
本書の主張は明確で単純で救いがないようにも思うが、その結論を導き出す過程の記述が実に筆者の知性と教養を垣間見せていて、このような領域に関心がある読者の一読に値する。