「ヴェネツィア 美の都の一千年」宮下規久朗 ***

大いに昔のこと、テレビで映画「旅情」を見たことがあって、キャサリン・ヘップバーンがヴェネチアで出会ったイタリア人と恋に落ちるというお話だった。こんなに美しい場所があるのかと、いつかは行ってみたいと思ったことを思い出します。

水の都ヴェネツィアは、今では誰でもが思い浮かぶのはヴェネチア本島であるが、ヴェネタ潟上の島に築かれている。ヴェネツィア市は、ヴェネタ潟の島々や本土側も市域に含んでおり、本島のすぐ南にはサン・ジョルジョ・マッジョーレ島やジュデッカ島、『ベニスに死す』で有名なリード島がある。本島のすぐ北には、墓地のサン・ミケーレ島、ヴェネツィアン・グラスで有名なムラーノ島、レース編みのブラーノ島、そして、元の町があったトルチェッロ島がある。

ヴェネチアは「美の都」でもある。東ローマ帝国の一部となってからも、アドリア海の海賊を駆逐した功績が認められ、千年以上にわたり独立を保ってきた都市国家でもある。経済的な成功は多くの芸術家を集めた。その痕跡は、サン・マルコ大聖堂、サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂、聖ジョルジオ・デイ・グレーチ大聖堂などの教会、カ・ドーロ、カ・ダーリオ、カ・ダ・モストなどの建築物、リアルト橋、スカルツィ橋、アッカデーミア橋、リベルタ橋、ため息橋などの美しい橋、アカデミア美術館、国際現代美術館、ムラーノ・ガラス美術館、市立自然史博物館など、町のあらゆる場所に息づき、旅行者の目を楽しませてくれる。本書では、ヴェネツィアの歴史と魅力を存分に紹介している。
ヴェネツィア――美の都の一千年 (岩波新書)

ヴェネツィア――美の都の一千年 (岩波新書) 宮下 規久朗 岩波書店