一般理論を読む 目次 前回は、消費性向が下がった分だけ投資が増えることは原理的にない。ということだった。今回は原理から現実へと分析は深まっていく。第三章 有効需要の原理 第二節 筆者訳の解説 ②この理論は次の命題に要約できる。技術、資源、費用が一定のとき、名目所得も実質所得も雇用量Nによって決定される。社会の所得と、そこから消費に回されると期待できる額(D1)の関係は社会の心理的特性によって決ま . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次第三章 有効需要の原理 第二節 筆者訳雇用が増えると実質総所得も増える。実質総所得が増えれば総消費も増えるが、所得が増えたほどには増えない。これは我々の社会の心理である。だから増大した雇用を消費需要の増大を満たすために全部振り向けるとすると使用者は損失を被ることになる(*1)。ある雇用量のもとで社会の消費量を超えた分を吸収するだけの十分な投資がなければ雇用量は維持できない。こ . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次 今の段階では分かりやすいとは言えなくても、次章以降で展開される雇用理論をここで簡潔に要約しておくことは読者の助けとなるだろう。用語は後に厳密に定義するつもりである。この要約では貨幣賃金や他の要素費用は雇用された労働一単位当たり不変としておく。この単純化された前提は分かりやすさを考えてのもので後ほど外すことになる。が、貨幣賃金や他の要素費用が変化しようとしまいと、議論の根本的 . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次雇用・利子および貨幣の一般理論 の序文を紹介する。筆者訳である。なぜ今になって序文を紹介するのか。①最初に紹介すると、誰も読まなくなる?から。②本書の性格を雄弁に語るからである。ケインズは、古典派理論はその枠内では正しいが、そもそも前提が大間違いだと言う。しかも古典派はその理論の前提を明らかにしていない。一部修正では済まない、根本的な変革を求めている。そして変革の暁には経済理 . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次自由放任経済は、肝心の自由を守らない扉の解説を加えたい。 絵はヴェルサイユ条約調印の様子である。背中を向けてうつむいているのがドイツ代表。ケインズが、この条約が課すドイツにとって過酷すぎる賠償金に反対したことは知られている。平和の経済的帰結http://hdl.handle.net/2261/61201 そしてナチスの台頭がこの過酷な賠償金と大恐慌なしには考えられないことも知 . . . 本文を読む
第1章 一般理論世のケインズ理解は誤解のかたまり「有効需要」という言葉をお聞きになった方は多いと思う。株式市場の「美人投票のたとえ」も。しかし、世に伝わる解釈の多くは誤解である。一般理論を「常識」の範囲内で理解しようとするとそうなる。さらに 使用価値貯蓄-投資バランス消費性向、投資誘因資本の限界効率長期期待、短期期待流動性選好となると経済学者でもその意味を理解している人は少 . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次 今回から三回にわたって、ケインズ自身の論理展開を理解するための解説:助走となる。古典派を批判するためには、まず古典派が何を言っているか理解しなければならない。常識的な古典派、非常識な一般理論 まずケインズは自らの理論を古典派理論批判という形で展開する。ところが古典派は常識に立脚しているのでこれといった理論体系がない。批判する対象がはっきりしないのだ。 そこでケインズはこの章 . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次第2章 古典派経済学の公準古典派理論の公準 詳説:なぜ、「労働分配率を上げよう」というスローガンは空疎なのか? 前回に引き続き、ケインズ自身の論理展開を理解するための解説:助走となる。相手を批判するためには、まず相手が何を言っているか理解しなければならない。 今回は、古典派の英雄:リカードの理論に即して解説する。若干晦渋になるがお付き合いいただきたい。なぜなら現代正統派もリ . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次 第2章 古典派経済学の公準 ケインズ自身の論理展開を理解するための解説:助走の三回目となる。 今回は、日本人にとって感覚的に理解することが難しい第2公準の解説である。本ブログでも最もアクセスの多い項目だ。 この難しい理由が「明らかに貯蓄過剰であるのに失業率が低い」という日本の謎の理由ともなっていると思うが、それについては後に詳述する。第2公準 労働雇用量が与えら . . . 本文を読む
一般理論を読む 目次第2章 古典派経済学の公準よみがえる一般理論と現代正統派理論の空疎さ 助走がすんだところで、いよいよケインズの論理展開を追ってみよう。 古典派の公準とは、雇用理論を考える上での前提であった。その雇用理論は、第一公準は雇用の需要関数を与え、第二公準は雇用の供給関数を与える。賃金は労働力商品の価格だから需要と供給の二つの関数の交点が雇用の均衡点となる、というものである。古典派の . . . 本文を読む