よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

67:第五編のまとめ:古典派、現代正統派経済学の否定=ケインズが根本から袂を分かつ「この種の分析」

2021年01月29日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次賃金を下げても完全雇用は達成できない 第五編のケインズの論理展開はわかりにくい。 それは古典派の議論の背景にはこういう「理論」があるだろうと指摘しその理論を、その「理論」そのものによって論駁するそのために古典派理論が成立する前提を吟味し実際の世界では何が起きているかを対置する という面倒な論理展開になっているからである。当時も今も常識に基づく古典派理論を反駁するにはこのような . . . 本文を読む

68:第五編のまとめ その2:貨幣賃金の切り下げは消費性向、資本の限界効率表、利子率にどのような影響があるか

2021年01月26日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次労働力商品の特殊性こそ鍵となる不況の時、操作すべきは貨幣量か? 賃金か?貨幣量が事実上固定されているとしたら、賃金単位で測った貨幣量は貨幣賃金を十分切り下げることによってどこまでも増やすことができるのは明白である。しかも所得に対する貨幣の相対量は一般には大きく増加しうるのであり……したがって、貨幣量は変えなくても賃金を切り下げれば、賃金水準はそのま . . . 本文を読む

69:第六編 一般理論の示唆するもの―短い覚書 を検討する前に

2021年01月23日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次古典派・現代正統派の果たす役割:彼らは「自由の敵」に対する永続革命を続けている 前々回、古典派、現代正統派をキリスト教の創造論者に例えたが、もちろん古典派、現代正統派の見解は創造論者と違って「社会」の役に立っている。立っているから、創造論者と違って権力の覚えめでたきものとなる。ケインズは第3章で以下のように書いていた。 では「リカードが完膚無きまでの勝利」を得たのはなぜだろう . . . 本文を読む

70:第22章 景気循環に関する覚書:ケインズは「資本主義の死」を予言していた

2021年01月20日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次第6編 一般理論の示唆するもの―短い覚書 第六編は以下の三章からなっている。第22章 景気循環に関する覚書第23章 重商主義、高利禁止法、スタンプ付き貨幣および過少消費理論に関する覚書第24章 一般理論がいざなう社会哲学―結語的覚書 経済社会の現実やその現実に対して提案されている政策に対して「一般理論の示唆するもの」を対置しているのが22、23章。それぞれに興味深いが、第24 . . . 本文を読む

71:第23章への重要な指摘(先行訳の誤りについて)とお薦め図書

2021年01月17日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次第23章 重商主義、高利禁止法、スタンプ付き貨幣および過少消費理論に関する覚書  前章でケインズは景気循環がなくなった資本主義、完全投資下での資本主義、資本主義の死について言及していた。当時も(今も)資本主義の死を認めたくない人々から様々な提案がなされていた。 ケインズはその代表的なものを検討していくわけだが、それを見る前に触れておかなくてならないことがある。 邦訳のどれもが . . . 本文を読む

72:第23章 重商主義、高利禁止法、スタンプ付き貨幣および過少消費理論に関する覚書

2021年01月14日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次自由貿易か保護主義か?トランプの「重商主義」は正しかったのか? 表題のとおり、この章には4つの論点がある。今回はまず貿易論(重商主義)を取り上げる。 一般理論は“閉鎖経済体系”を前提にしている。一般理論の展開の上に貿易、為替、国際金融に関する未だ書かれざる一章があった。それを非常に簡略にメモ(覚書)にしたのがこの部分である。 ケインズの関心は、一般理論 . . . 本文を読む

73:第23章:少なくとも重商主義は新自由主義ではなかった―その政策意図と限界

2021年01月11日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次重商主義の国家主義的性格と戦争好きについて 第23章続き私の批判の全重量はかくして、私を育み私が何年ものあいだ教えてきた自由放任学説の理論的基礎の不十分さに――利子率と投資量は最適水準に自己調整され、それゆえ貿易収支に拘泥するのは時間の無駄だとする考えに向けられる。われわれ経済学者の一団が、何世紀ものあいだ実際的な経世済民術の主目的であったものを、おこがましくも子供じみた妄執 . . . 本文を読む

74:第23章:一般理論に先行する反・非古典派の議論 利子率・資本の限界効率・流動性選好の概念について

2021年01月08日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次 先行する議論を検討することによって一般理論の特徴が鮮明になっているのがこの章である。 前回までは、重商主義を検討し、自主的な利子率決定と国家的な投資計画が利用可能になった現在、貿易黒字によって国内の貨幣量を増加させようとする政策に意味はなくなったとしていた。 今回は、まず高利禁止法である。古典派の議論に立てば利子率には資金の需給によって自動調整機構が備わっているのだから、人 . . . 本文を読む

75:第23章:問題は過少消費なのか?:今回は閑話休題

2021年01月05日 | 一般理論を読む
 古典派理論、現代正統派理論に汚染されていると最も陥りやすい罠がこの過少消費理論である。現代では需要喚起、消費刺激などという。 消費が少なすぎるという裏には、公共の投資計画のことなど思いもよらない立場が存在している。この汚染は政治的、思想的立場を超えて大きく広がっている。個人の政治的思想的立場によって、汚染のタネが咲かせる花は違うはずだが基本的には同じように見えるところが恐ろしい。土壌に汚染物質が . . . 本文を読む

76:第24章一般理論がいざなう社会哲学―結語的覚書 筆者訳全文公開

2021年01月02日 | 一般理論を読む
一般理論を読む  目次(*訳者補)内は訳者が補った。訳注は()内に訳注:として示した。第1節  資本主義の最大の欠陥は、完全雇用の達成が不可能性であることと、資産・所得の分配が出鱈目でかつ不公平なことである。完全雇用達成の問題については一般理論で明確にしてきた。しかし資産・所得の格差の解決については、二つの重要な問題が残っている。 イギリスでは、19世紀末以来、所得税、累進課税、相続税等 . . . 本文を読む