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タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪『釧路新聞』<巷論> (09年6月3日) ≫

P1030857 第三次吉田内閣の池田勇人・大蔵大臣が予算委員会で放言したと世に喧伝された、いわゆる「貧乏人は麦を食え」という有名な文言については、平成二十年十二月八日投稿のブログ記事で、『釧路新聞』<巷論>執筆者の誤りを指摘したが、再び別の執筆者によって同じような誤り(6月3日付・第3面、<巷論>)が繰り返されているので、新聞人に対して注意を喚起したい。
50  池田蔵相(写真は、毎日新聞社のHP<昭和毎日>から転写)は、昭和二十五年十二月七日の参議院予算委員会において、高騰する生産者米価について所見をただした社会党の木村禧八郎議員に、「所得に応じて、所得の少ない人は麦を多く食う、所得の多い人は米を食うというような、経済の原則に副ったほうへ持って行きたいというのが、私の念願であります」(「参議院会議録情報、第009回国会・予算委員会・第九号」)と答弁を締め括ったのであり、「貧乏人は麦を食え」とは発言していない。
 蔵相と木村議員の発言の流れからは、国際的競争力を高めるため、国が安い値段で買い入れ生産者に補給金を出すという仕組みを止め、インフレを抑制しながら米価を国際価格に近づけるというのが蔵相の基本的方針であることが分かる。
 吉田政権の政策全般に批判的だった報道メディアが、蔵相の答弁の一部を意図的に歪曲し、「貧乏人は麦を食え」という見出しを捏造したのが真相である。インフレ懸念を利用し世論を煽ろうとする報道メディアの魂胆が丸見えである。
 増上慢に陥るのは為政者だけではない。正義の味方面をして居丈高になるのは、報道メディアの得意とするところである。百目鬼恭三郎『新聞を疑え』(講談社)には、日本の報道メディアによる情報操作の実態が暴露されているから、<巷論>の執筆者は一度目を通すとよい。蓮の下に身を隠すのは自分たちだと気づくだろう。

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