妖精は木の陰で休んでおりました
「最近眠れないの」
と、目の前にやってきた小鳥に言いました
「凄い妖精さんと会ったのよ。私より凄い力を持っていて、私に休んでねって言ってくれるの」
小鳥はついばみながら妖精を見上げました。
「私には想いもよらない考え方なのよ。すごいのよ。私がね、お花を咲かせる能力を上げる訓練に集中してねって言ってくれるの。他はもうしなくてもいいって」
小鳥は
「たいそういいことだ」
と笑いました
「いいことなのよ。普通はね。でもね。眠れないのよ。何も眠れないの。」
「どうして?」
「あたしの事を凄い妖精だって言うのよ。あたしはちっとも凄くない。あたしは凄いとか言われると萎えるのよ。あたしはただ、ひまわりの、大きな茎の元でぼーっとしながらちょっとずつ力をつけたいの。だから元気になったのよ」
ずっと病気がちな妖精はひまわりの茎の下のお家に来てから元気になったのでした。
いつもひまわりが大きな花の力でおうちを守ってくれたからでした。
「ひまわりはいつかは枯れるって言うのよ。枯れても種が出来るから、あたしはその種をたくさんたくさん集めて、その種をいろんな所に植え付けたいの。そしたらね、その芽がまた出て、たくさんのひまわりのおうちができるのですもの。あたしに薔薇の花になれって言っても疲れるだけだわ。あたしは素朴にひまわりの種を植え付けたいのよ」
小鳥はそれを聴いて笑いました。
「種を少し分けてくれないか?春に子どもがたくさん生まれるから、栄養がいるんだ。」
妖精は聞いて言いました
「いいことよ。惜しみなく分けてあげる。ひまわりの恩恵は独り占めしたくないの。あたしもひまわりの妖精になりたいのよ。でもね、薔薇の妖精みたいにはなれないの。違うのよ。だから苦しくなって来て、昨日も、逃げ出したくなっちゃった。」
小鳥は
「悪いことだと全くないのに?」
と聞きました。
「悪いことなんかひとつもないのよ。完ぺきだわ。完ぺきな物は時には残酷なのよ。心に隙間ができなくなるの。あたしの配るひまわりの花びらが嬉しいと言ってもらえる事に賛同してくれるけど、ひまわりの花びらをバラのような香り豊かな物にする魔法を使うことを教えてくれるの。でも、あたしはひまわりの花びらが好き」
妖精はそう言い残すと
長年住んでいたひまわりの根元の小さなおうちから
小さな荷物をまとめ出てゆきました。
小鳥に
「残ったひまわりの種はあなたの家族の為に。そしてその周りの必要なみんなのために。みんなみんなあげる」
小鳥に
「どこに行くの?」
と、聞かれても
返事もしないで去ってしまいました。
妖精は眠れる場所を探し
また旅に出たのでしょうね