花壇で咲き乱れる花々の妖精たちは
愛され愛でられるから自信に満ちていて
とても明るい。
無邪気でかしましく
また、自然な行動に彩られていました。
小さなカタバミの花の妖精は
気後れしていました。
私は雑草。
あの方たちの仲間に入りたくても入れないわ。
カタバミは小さなピンクの花を抱えながら怖れていました。
楽しそうな花の妖精たちの会話に入りたくても入れないでいたのです。
それを見ていたのは
後ろのオリーブの木の妖精さん
カタバミの妖精が木陰でそーっと他の華やかな花達の様子を伺っているのを見ていました。
オリーブの木の妖精はカタバミの妖精に声をかけました。
「どうしたの?気後れしてるの?仲間に入れないの?」
カタバミの妖精は、楓や楡や桜の木の妖精達とは普通に話せたのです。
でも
美しい花の妖精たちとはなかなか話の輪に入れませんでした。
オリーブの木の妖精はカタバミの妖精に言いました。
「私の言うことをやってみてご覧なさい。」
カタバミの妖精は不安そうにオリーブの木を見上げました。
「まずは心を空っぽにするのよ。な~んにも考えないようにするのよ。そしてね、次に、自分は美しい花の一族に生まれたのよ、って自分に言い聞かせるの。あなたの過去のいろんな囚われや経験を消して、新しく自分が思い込ませたい情報に上書きするのよ。そう、あなたは美しい一族に生まれてあなた自身も美しさに溢れているの。そしてね、愛されている。愛されている。そう心を上書きしなさい。」
カタバミの妖精はオリーブの木の妖精に教えられたように毎日毎日呟いて自分を上書きしようとしました。
彼女はあまり怖くなくなって来ました。
自信が出てきて
少しずつ他の美しいお花たちとも会話を楽しめるようになったのです。
カタバミはそのうち
自分がカタバミであることすら忘れてしまっていました。
自信と愛されている感覚に目覚めた彼女は輝きを増したのです。
楡の木の妖精はそんな彼女を見て言いました
「あんたは薔薇やダリヤや、園芸種の美しいお花達とお友達になり嬉しそうだが、それは本物かい?」
彼女は躍起になって言葉を返しました。
「せっかくみんなと仲良く対等に付き合えるようになったの。私の過去のことなど忘れてしまったのよ!」
楡の木の妖精は静かに言いました。
「それは本物かい?自分を園芸種の美しいお花の妖精だと思い込ませ上書きするのはいいが、やり方が違う気がするのだよ」
「………」
「カタバミにはカタバミの美しさがある。あんたのことをカタバミだとわかっていても美しいと愛でてくれる人はいるんたよ。そのまんまのあんたが美しいと想う人が。園芸種の美しいお花達とお友達になるのは、勘違いさせて自分を誤魔化してなるものではない。あんたのそのまんまの美しさ、優しさを出して、そのまんま中に入っていけばいいんだよ。別に自分の事を消し去る事はないんだ」
楡の木の妖精に言われてハッとしたカタバミは
自分がカタバミであっても、胸を張ったのです。
カタバミらしい美しさでたおやかさで、他のお花たちとも仲良く話せばいい。
背伸びすることもないし
よく見せようとしたりしなくてもいい。
カタバミは何だか心が晴れ晴れしたのでありました。(笑)