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今日の筆洗

2024年01月10日 | Weblog

サッカーのイニエスタ選手の宝物は古びたサッカーシューズだそうだ。幼いころ、父親が貧しい生活の中、給料3カ月分をはたいて買ってくれた▼昨年亡くなったイングランドの英雄、ボビー・チャールトンさんは母親がサッカーを教えた。子どもの夢を応援する優しい親。サッカー選手にはこうした逸話が多い▼選手、監督として母国を2度のワールドカップ優勝に導いた方の事情は少し異なる。ドイツの名選手「皇帝」フランツ・ベッケンバウアーさんが亡くなった。78歳▼子どものころからサッカーの才能を見せたが、郵便局に勤める父親はその道に反対した。経済的事情があった。第2次世界大戦終戦の1945年生まれ。故郷ミュンヘンはその年、大空襲を受けた。困難の中、父親にはサッカーが浮ついたものに映ったか。時代が悲しい▼「強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ」。74年ワールドカップのオランダとの決勝戦では開始早々、オランダに先制点を奪われながらも逆転勝利。父親の反対もそうだが、その人はどんな逆境も冷静さと決意で切り抜けて、最後には「勝つ者」になってきたのだろう▼つまらぬことを思い出す。70年代半ば、当時の子どもは「皇帝」愛用のアディダス製品に憧れたが、手に入れた物をよく見ると、だいたい、アドドスとかアディオスと微妙に異なるブランド名が記されていた。