「月曜の朝、時計を確かめよう。」-。1970年代に時計のセイコーが展開した宣伝の文句なのだが、今の若い方にはピンとこないか。どうして、時計を確かめる必要があるのか。しかも月曜日の朝に▼60代以上の方には説明は不要だろう。クオーツやデジタルの時計が普及する以前、ゼンマイ式の時計はよく止まったり、遅れたりした。そのため、週明けの月曜、仕事などに向かう前に時計を正確な時刻に合わせましょうと呼びかけていた。遅刻の言い訳に「時計が遅れていて」と言ってもけっこう通用した時代の話である▼今すぐに残り時間を確認し、対応しなければならない時計の話となる。米国の研究者らが決める、「終末時計」である▼昨年の世界情勢の動きなどを踏まえて、人類滅亡までの時間を「残り90秒」と先ごろ、発表した。核戦争の可能性や気候変動、人工知能(AI)の脅威などが針の進み具合を決める▼時計はあくまでもたとえとはいえ、47年の創設以来、過去最短となった昨年と同じ残り時間のまま。針は戻ってくれなかった。出口の見えないウクライナ情勢やパレスチナ・ガザ地区の現状を思えば針は今もチクタクと前に進んでいるのかもしれない▼「残り90秒」と警告する深刻な時計の針を、世界の指導者にはよくご覧いただきたい。怖い話をすれば、「終末」の後では、どんな言い訳も通用しない。