永崎士道の建設業徒然なるままに、時々国防とグルメも

主に建設業の話題を書きたい。
私自身建設会社の社長だったので、
業者贔屓の発言も大目に見てください。

談合(カルテル)ブレーンストーミング(その3)

2012-06-02 | 談合
同じ方(ラブリースノーさん)からまたコメントがありました。ありがとうございます。
経済学的にかなり鋭い質問です。日本経済新聞でもこれだけ専門的な談合考察は全くしていませんね。
経済学の予備知識がない方にもわかるように返答していきたいので、何回かに分けて返答ブログを書こうと思います(ブログネタに困らなくて助かります  )。


ラブリースノーさんからのコメント内容

公共事業の工事発注をミクロ経済学的なアプローチで考えてみます。

1.適正価格が形成される市場の条件
(1) 市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。
(2)売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと。
(3)取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。

(1)の条件を満たすには、指名入札制度は廃止するべきです。
(2)の条件を満たすには、(1)と関連しますが、市場参加者を増やすことで個別事情を排除することができます。
(3)の条件を満たすには、予定価格や失格価格の情報公開か、その制度の廃止です。

2.価格形成のプロセスについて
 合理的な市場が形成されたとして、つぎに買い手の行動原理を考察します。
・同等の効用であれば、価格の安いほうを選ぶ。
・同価格であれば、効用が大きいほうを選ぶ。

上記の買い手の合理的な行動を担保するものが、複数の商品(供給者)の存在です。入札制度はこの買い手の合理的な経済活動を可能ならしめるためのシステムですから、談合により入札制度のもつ意味がなくなるなら、それに替わるシステムが必要となります。
 この場合、買い手の利益は役人の利益ではなく、彼らを雇っている納税者の利益と考えてください。
 
 ここまでの結論として、買い手の選択の権利を損なわないシステムができれば、談合はあってもかまわない、ということになるのではないでしょうか。

以上がコメント内容でした。


経済学の知識のない方にはチンプンカンプンでしょう。
超分かりやすく一言でいうと『巨大なフリーマーケット』かな(ラブリースノーさんもし違っていたらご指摘ください)。

もっとも重要なことは、市場に参加することも、市場から退出することも全く個人の自由にできること。つまり、行政の許可や免許は不要、入場・退出料もゼロ、何を売り何を買うかも売手と買手の合意だけで売買が成立する市場。
ただし、唯一の条件として(3)がある。商品に関しては、買手も売手と同じ情報を持っている。だから、買手が詐欺、ぼったくりなどの被害にあうことはない。
結果として、そのような市場には、多数の商人と消費者が集まってくる。

売手は多数の消費者の中から、もっとも高く買ってくれるお客を選ぶ自由がある。不当な値引きを要求する客には売らなくてもよい。買手は多数の商人の中から、もっとも安く売ってくれる相手を選ぶ自由がある。
そして、このような市場では、売手も買手も双方納得して売買が成立しているから、みんながハッピーになっている。

ところが、談合や指名入札などは売手や買手の自由な行動を規制する。結果としてだれかが損をしているかもしれない。
商人が談合をして値下げに応じなければ、消費者には最も安いものを選ぶ自由がない。指名入札は、役所が市場への参加権をきめるから、役所にだめだと言われたら市場に参加できない。もしその者が最も安い商品を販売できる商人だったら、参加を断られた商人だけでなく、買手(納税者)も最も安いものを買いハッピーになる機会を失くしたことになる。
だから許されない。


談合を否定する者たちの論拠は、上記のような感じでしょう。


まず私の立ち位置宣言は、
談合を自由経済の欠点を補完する方法として活用しようということ。
決して、自由経済に変わるシステムを提案しようというわけではない。
だから、競争は全面的に肯定する。
問題にしているのは、どのようなルールで競争するかということ。
パンチだけのボクシング、蹴りも認める空手、あるいは投げと寝技だけの柔道なのか。
それとも、金的目つぶし噛みつき何でもありの喧嘩ルールなのかということ。

このとき基準になるのが、どのルールがより多くの人の幸福につながるのかだと思う。

ところが、自由経済の理論には非常に大きな欠点がいくつかある。
その最大のものが、『市場の外部性』という問題。
自由経済の理論が、効率が良くなり皆ハッピーになると言っているのは、市場の内部だけ。つまり、市場に参加している者だけの話。市場に参加していな者、退出した者は自由意志で市場の外にいるのだから、彼らのことは考える必要がないことになっている。しかし、退出の自由といってもそれには倒産、失業などで市場に参加できなくなった者たちも含まれている。
自由経済の理論では、市場外部に出て行った者たちがどうやって飯を食っているのか何も説明していない。
落伍者(倒産企業、失業者)も市場からいなくなるという前提があるから、市場内部の効率は良くなるのだ。


今日はだいぶ長くなってしまったので、続きは次期以降にいたします。



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