先日、道の駅にフルーツを買いにドライブがてら、行きました。遠くもないけど
近くもない距離で、用事を済ませた帰りに寂れた温泉街に寄ってみました。
元々客足が遠のいた街だったのにコロナの打撃でますます閑散としていました。
私はその温泉街は昔から好きです。旅館や飲食店などの佇まいは昭和のまま
時が止まっていて、タイムスリップしたような感覚になります。寂れ過ぎていて、
廃墟好きとかでない人を連れて来たらがっかりさせると思います。
荒木経惟の写真集とかには最適そうです。
こういう感じのモデルさんが一層雰囲気を掻き立てるでしょう。
廃業した旅館が多い中、最後のあがきのように、ほぼ廃墟状態にボロいまま
温泉付きアパートとして運営している所があります。24時間、かけ流しの温泉に入り放題です。
元温泉旅館のアパート。私などはとても血が騒ぎました。中は、修繕費用もかけたくないようで
ボロくて、廊下の突き当たりとかにあるオブジェとかも全て、古臭い。館内がかび臭い。
照明器具も、昔はおしゃれだったことが偲ばれる、今は古臭いもの。
大宴会場の畳の間の縁側は、最高に陽当たりがよく、そこが共同の物干し場になっていました。
外に干さなくても、ここだとサンテラス同然で格好。浴場への入口の引違い戸は緑色のアクリル板
でできていて、自然光によってレトロに発光していました。異空間への誘いとして、とてもいい。
扉を開けると、脱衣所があり、温泉が勢いよく流れている音がする。ほっとする。
浴場のガラス引違い戸を開けると、モザイクタイルでできた総レトロな温泉。
「おもひでぽろぽろ」でたえ子が入った熱海の温泉に似てる。
照明器具など色々壊れているが、取り替えるつもりはなく、朽ちたままにされている。
館内は古臭くて時が止まっている中、温泉だけは元気よく流れていて、「よかった~」。
そこのロビーには、年季の入ったYAMAHAのグランドピアノ、KAWAIのアップライト、
YAHAMAのオルガンがありました。触らせてもらいました。グランドピアノはボロボロだけど、
元が良いのはわかりました。蓋を開けた時から予感してました。
セルロイドの白鍵と黒檀らしい黒鍵。弾くとその通りで、音がよかった。調律してないけど。
昔のピアノって、今の大量工場生産品と違って物が良いものが多いんです。村長さんとか大金持ちの
家にしかなかった時代。家一軒と同額ぐらいした。この旅館も昔は栄華を誇っていたらしい。
ただメンテナンスを長期間していないから、ダンパーペダルが効かない。日差しの中で弾く
ベートーベンの悲愴2楽章と滝廉太郎の「花」 〽春のうららの隅田川。