本論が、下の方になってしまいました。
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フジコ・ヘミングのピアノは、宝石箱みたいに色鮮やかで綺麗です。
安定感はないです。無骨な感じです。通常、音の粒立ちを揃えて、均一に弾くのが上手いとされるし
そのように弾くように訓練されます。例えば、子どもがきらきら星を弾くと「どっドー そっソー ラっらソーー」
と粒立ちはいびつとなりますが、それを揃えて弾くのが訓練された演奏となります。
でもフジコのピアノは、音がまばらです。ウィンドベルで、風が吹くと1つ1つのベルが
違う大きさで鳴るように。宝石箱をひっくり返したように。だからそれぞれの美しさがより一層引き立ちます。
フジコの演奏はそんな感じだと思います。アイス珈琲の氷がカランコロンと鳴るように、色が綺羅綺羅してる…
彼女の体格や指が太いせいで、コントロールができなくて偶然そうなるのか
それとも、彼女のセンスで無意識にやっているのだったら、天才的な感性だと思います。
ずっと親や周りに「バカ」「アホ」と言われ続けて自分は前代未聞のアホだと思ってきたけど
ある時メンタルテストをしたら、最も頭がいい群に入る結果になったと彼女の本に書いてありました。
私は彼女を「バカ」と思ったことは一度もなく、真逆だと思います。
また、弾いているずんぐりした姿を「熊の子みたい」とバカにされたと書いてありましたが
私はそんな姿が大好きです。逆に、腰を振って登場したり(私の先生がそうだった)顔芸をしたり
洗練ぶったりそんなほうが嫌いです。そんなことを一切しないで普通に弾くフジコの姿が大好きです。
(関連記事:フジコ・ヘミングのピアノ フジコ・へミングのピアノ② フジコ・ヘミングと友達になりたい)
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うつ療養生活においては、安定した演奏で神経を静かに鎮めたい時もあります。
そういう時には、私の知っている中で言うと、アルフレッド・ブレンデル、マレイ・ペライア、クラウディオ・アラウ、ウラデミール・アシュケナージ、ジャック・ルビエなどがいいと思います。確かな技術による安定した演奏です。
クラウディオ・アラウ翁の音は、アイボリーです。角が丸くてポロンポロンとやさしい音です。
翁の弾く叙情的な曲は、とてもいいと思います。高い技術の持ち主ですが、「まぁ落ち着きなさい」と、技術競争に
背を向ける独特の詩性を感じさせる弾き方です。かっこいいです…