ブリヂストンA工場で働いて、私が見たもの、私がしたこと、私に起きたことを発信します。

焚書の想い出

2019-07-27 | 日記

私の親族に、不思議なおじさんがいます。

おじさんは3兄弟の末っ子です。かれらの生き方は見事に3つに分かれています。

長男は、大企業の副社長になりその後はグループ会社の社長をしています。

次男は、その反対に、弱者を守るために尽力する人になりました。

三男は、なんというのか、引きこもり気味の厭世的な変わり者になりました。

 

私にとって、三男のおじさんは、昔から気になる存在です。

黒縁メガネをかけていて、色白で端正な顔で、ずっと難しそうな洋書の翻訳本を読んでいて

しゃべり方は、姜尚中のように静かに囁くようにしゃべります。

いつも静寂と一筋の冷んやりした空気を漂わせていて誰ともうちとけて話さない人でした。

ど田舎で生まれ育った私にとって、不思議な香りのする彼は、そこはかとなく魅かれる人でした。

近所にいたのは、ふんどし姿で「カーーー ぺッッ!」と道端に痰を吐くおじさんとかでしたから。

彼は私を誘ってなにかを手伝わせることがありました。私は嬉しくてついて行っていました。

 

忘れられないのが、焚書です。

たくさんの本を破って火に投げ入れて燃やす作業を手伝いました。

すごい量の文庫本をちぎって燃やしました。パチパチと揺れる炎を物思いげな目で見ながら投げ入れている彼に

「なんで燃やすと?」と訊くと、「あぁ うん……」とはぐらかして、答えてはもらっていないです。

 

要らない本は、廃品回収でリサイクルに出したり、古書店に売ったりすればいいのに、火で焼きました。

 

今おじさんは、親に残された家でひっそりと暮らしています。

去年、その家に突然、遊びに行きました。電話をしてアポをとるとかできなくて、いきなり行きました。

重曹のような香ばしい匂いが漂っていて、いるのがわかりましたが、ピンポンも押せずにいました。

子どもを使って、懐かしの庭に入って行かせて、「ホー、ホー、ホー」と梟の真似をしてもらって、

おじさんが気づくように仕向けました。するとおじさんが出てきました。

 

十何年ぶりの再会で、びっくりしていました。相変わらずの風貌で、顔つきも、静かで冷んやりした空気も

なにも変わっていませんでした。おじさんは、いろいろ私に質問をして話してくれました。

 

  家に帰って葉書を書きました。


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