Joe Strummer - Burning Lights (I Hired a Contract Killer)
「あかりが消えたら」愚=金延幸子(vo),松田幸一,瀬尾一三,中川イサト(1969年)
Everything But The Girl - On My Mind (Official Video 1983)
the pillows - Scarecrow (Live)
☆またまた昔書いたお話です。
これはかなり話盛っていますな。
事実半分、嘘八百(いやいや、それではまるっきり嘘ということになるのでは?(´・ω・`)・・・です。
幻影
コロの散歩はカミさんの役割である。
以前は次男が世話をしていたのだが、仙台に行ってからはカミさんがやるようになった。
本当は私がやってもいいのだが、私の場合とカミさんとはどうもコロの態度が違う。
カミさんが散歩に誘うと、飛びつかんばかりに喜びを全身で表すのだが、私の場合は面倒くさいなあと言う感じで小屋から出てくる。
そんなに私と散歩するのが嫌なのか、というわけでコロの散歩はカミさんの役割になったのだが、そうはいっても私がこの家のご主人様だということを示すためにたま~にコロの散歩に私が付き合うことがある。
先日もたま~のコロの散歩に付き合い、R駅まで行き、駅の階段近くのベンチに腰掛けたときのことである。
一人の老女が私の足元にちょこんと座っているコロの元に近寄ってきた。
「かわいいわね」
あぶない!!
コロの頭を撫でようとしたので、私は思わず叫んだ。
コロは外見こそ愛らしいがほんとはものすごく気性が激しい犬なのだ。
老女は一旦手を止め、それから私を見てにこやかに笑い、それから大丈夫だとばかりにまた手を伸ばしコロの頭を撫で始めた。
コロは気持ちよさげに目を細め、おまけに尻尾まで振っている。
「ね、大丈夫でしょ」
老女に噛みつきやしないかと、あたふたしていた私は唖然とした。
「で、でも・・・、こいついきなりガブってやる癖があるから気を付けて・・・」
私がそう言うと、あらそうなの?と彼女は言いながらも撫でる手を止めることはなかった。
彼女はコロの頭から背中まで一通り撫で終えると、よいしょと私の隣に座った。
「昔、柴犬を飼っていたの」
私は話しかけられ、老女をあらためて見た。
茶色のブラウスにベージュのスラックス。
若く見えるが、80に近い感じではある。
「ああ、それで扱いが馴れてるんですね」
「ううん、あたしは見てただけ。・・・主人が犬好きだから・・・」
「ご主人?」
「ああ、紹介が遅れた。隣にいるのが主人、さっきもおたくのワンちゃんがいるってこちらに私を連れてきたのよ」
私はそう言われてきつねに包まれたような気がした。勿論、老女の隣には誰もいない。
彼女は一人でここに来て、コロを撫で、私の隣に座ったのだ。
もしや・・・
「主人はね、無口なひとなの。あたしと二人のときはよくしゃべるんだけどね。ねえ、そう思わない?」
老女は隣にいるであろうご主人に目を向け、そして私の方に振り返ると同意を求めた。
それで思わず私がコクンと首を縦に振ると彼女の顔は、ぱあっと明るくなった。
「ね、ね。あなたにも見えるんでしょう?・・みんな意地悪なのよ。あたしが主人は隣にいるって言っても、息子も孫も誰も信じてくれはしない」
私は後悔した。なんだって首を縦に振ってしまったんだろう。
それから私は老女の話に付き合う羽目になった。
彼女の家族が自分の話を信じてくれないといったことや、意地悪を始終されているといったことなどを一回話が終わっても繰り返し繰り返し話してくる。
そして、いるはずのない”ご主人さま”に対して、何か話しかけてやってと強要される始末。
その間、凡そ一時間ばかり、彼女の家族が迎えに来るまでに私はほとほと疲れ果ててしまった。
「また会いましょう」
老女は家族と一緒に帰る間際そう言ってコロを撫でていった。
迎えに来た家族の話では一年ほど前にご主人を亡くされたとのこと。
それから少しずつ変調をきたし、最近幻覚や幻聴が激しくなったそうだ。
私はたばこに火をつけ、ほっと一息ついた。
携帯の灰皿に灰を落としながらコロを見つめると何やらコロは言いたいことがある様子。
お前には見えていたのか?
そうコロに尋ねると、私に向かって”ワン”と一回吠え、後は知らんとばかりにそっぽを向いてしまった。
ツレナイナア。
私はやはりまだコロのご主人として認められてないらしい。
「あかりが消えたら」愚=金延幸子(vo),松田幸一,瀬尾一三,中川イサト(1969年)
Everything But The Girl - On My Mind (Official Video 1983)
the pillows - Scarecrow (Live)
☆またまた昔書いたお話です。
これはかなり話盛っていますな。
事実半分、嘘八百(いやいや、それではまるっきり嘘ということになるのでは?(´・ω・`)・・・です。
幻影
コロの散歩はカミさんの役割である。
以前は次男が世話をしていたのだが、仙台に行ってからはカミさんがやるようになった。
本当は私がやってもいいのだが、私の場合とカミさんとはどうもコロの態度が違う。
カミさんが散歩に誘うと、飛びつかんばかりに喜びを全身で表すのだが、私の場合は面倒くさいなあと言う感じで小屋から出てくる。
そんなに私と散歩するのが嫌なのか、というわけでコロの散歩はカミさんの役割になったのだが、そうはいっても私がこの家のご主人様だということを示すためにたま~にコロの散歩に私が付き合うことがある。
先日もたま~のコロの散歩に付き合い、R駅まで行き、駅の階段近くのベンチに腰掛けたときのことである。
一人の老女が私の足元にちょこんと座っているコロの元に近寄ってきた。
「かわいいわね」
あぶない!!
コロの頭を撫でようとしたので、私は思わず叫んだ。
コロは外見こそ愛らしいがほんとはものすごく気性が激しい犬なのだ。
老女は一旦手を止め、それから私を見てにこやかに笑い、それから大丈夫だとばかりにまた手を伸ばしコロの頭を撫で始めた。
コロは気持ちよさげに目を細め、おまけに尻尾まで振っている。
「ね、大丈夫でしょ」
老女に噛みつきやしないかと、あたふたしていた私は唖然とした。
「で、でも・・・、こいついきなりガブってやる癖があるから気を付けて・・・」
私がそう言うと、あらそうなの?と彼女は言いながらも撫でる手を止めることはなかった。
彼女はコロの頭から背中まで一通り撫で終えると、よいしょと私の隣に座った。
「昔、柴犬を飼っていたの」
私は話しかけられ、老女をあらためて見た。
茶色のブラウスにベージュのスラックス。
若く見えるが、80に近い感じではある。
「ああ、それで扱いが馴れてるんですね」
「ううん、あたしは見てただけ。・・・主人が犬好きだから・・・」
「ご主人?」
「ああ、紹介が遅れた。隣にいるのが主人、さっきもおたくのワンちゃんがいるってこちらに私を連れてきたのよ」
私はそう言われてきつねに包まれたような気がした。勿論、老女の隣には誰もいない。
彼女は一人でここに来て、コロを撫で、私の隣に座ったのだ。
もしや・・・
「主人はね、無口なひとなの。あたしと二人のときはよくしゃべるんだけどね。ねえ、そう思わない?」
老女は隣にいるであろうご主人に目を向け、そして私の方に振り返ると同意を求めた。
それで思わず私がコクンと首を縦に振ると彼女の顔は、ぱあっと明るくなった。
「ね、ね。あなたにも見えるんでしょう?・・みんな意地悪なのよ。あたしが主人は隣にいるって言っても、息子も孫も誰も信じてくれはしない」
私は後悔した。なんだって首を縦に振ってしまったんだろう。
それから私は老女の話に付き合う羽目になった。
彼女の家族が自分の話を信じてくれないといったことや、意地悪を始終されているといったことなどを一回話が終わっても繰り返し繰り返し話してくる。
そして、いるはずのない”ご主人さま”に対して、何か話しかけてやってと強要される始末。
その間、凡そ一時間ばかり、彼女の家族が迎えに来るまでに私はほとほと疲れ果ててしまった。
「また会いましょう」
老女は家族と一緒に帰る間際そう言ってコロを撫でていった。
迎えに来た家族の話では一年ほど前にご主人を亡くされたとのこと。
それから少しずつ変調をきたし、最近幻覚や幻聴が激しくなったそうだ。
私はたばこに火をつけ、ほっと一息ついた。
携帯の灰皿に灰を落としながらコロを見つめると何やらコロは言いたいことがある様子。
お前には見えていたのか?
そうコロに尋ねると、私に向かって”ワン”と一回吠え、後は知らんとばかりにそっぽを向いてしまった。
ツレナイナア。
私はやはりまだコロのご主人として認められてないらしい。