からくの一人遊び

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Noel Gallagher's High Flying Birds - Don't Look Back In Anger: Absolute Radio Live

2022-03-12 | 小説
Noel Gallagher's High Flying Birds - Don't Look Back In Anger: Absolute Radio Live



夕焼けトンボ  加川 良



Lamb - As Satellites Go By - Live at Paradiso



ザ・コレクターズ / 悪の天使と正義の悪魔



Turn! Turn! Turn!     湯川潮音




(ちんちくりんNo,74)



 意外だったのは、裕子がかほるの姉だということを知って最初に頭を過ったのが、かほるの面影ではなく"子供を抱いたマリア像"だったことだ。あの、大学時代最後の夏に圭太、貢、かほるの僕を含めて四人で作成した雑誌「リジェネレイション」、かほるが何枚か描き、その中で僕が選んだ表紙画……。あれもきっと裕子をモデルにしたものだったのだな、と今更ながらに気づいた。あれが既視感の正体か。何故か懐かしく思った。
 だからといって、それだけというわけにはいかないのは当然で、かほるとの記憶が次第に呼び覚まされるにつれ、何ともいわれぬ複雑な思いにとらわれていった。ことに別れの場面、確かあのときかほるはこのようなことを言ったはずだ。―いつかまた会える日を期待して。そして裕子がかほるの姉、ということはかほるとの再会を果たせる可能性があるということに繋がる。会えるのか?でもかほるに会うという行為はそのまま裕子を裏切ることになるのではないか。でも。しかし。僕の心の中は渦巻いた。とともに、その前に一番肝心なことを確かめねばならないということは分かっており、それに対する惑いもあった。それは、かほると別れてから十数年、いつでも確認しようと思えば出来たことなのだが。
 そんな僕の様子を見ていた裕子は、まるで何もかも僕の心を見透かしたかのように微かな笑みを僕に向けた。

「天秤にかけた?私とかほるのこと」

「いやそんな……」

「かほるに会いたい?」

「えっ」

「でもそれは……無理。永遠に」

 ―やめてくれ―
 
 僕は咄嗟に叫んでいた。
 もうすでに、そこまでで裕子が次に何という言葉を繋げるのかは分かっていた。だけど、その言葉を裕子の口から告げられるのはやはり辛い。だめだよ、君も辛いだろう。
 
 ―や・め・ろ―

「かほるは――ったのよ」

 僕の願いは鋭利なナイフのごとき金属片で一気に切り裂かれた。

 ―かほるは天に召されました、とさ。


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